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失言しました

 受け付けを済ませ、貰った用紙に必要事項を書き込みます。今回、私の担当をして下さる女性はマリカさんと名乗られました。アレと恋人発言をしてくれた方ではありますが、とても気遣いの出来る受付嬢さんです。


「それでは、用紙の方お預かりいたしますね」

「はい。お願いします」

「こちらに記載された内容で間違いがないか確認をさせて頂きますので、こちらの水晶に手をかざして下さい」


 そう言ってマリカさんが取り出した水晶は、サイエンス先生があの時持ってきた水晶の二分の一ほどの大きさの物でした。繁々とその水晶を見つめる私に、マリカさんはくすりと笑い「この水晶は、元は倍ほどの大きさだったんですよ」とこの大きさになった経緯を話してくれます。


「なるほど……。改良が進んで、今はこの大きさなんですね」

「えぇ、そうです。間違いないようですね。ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ」

「それでは次の検査に映りますので、裏の鍛錬場へ移動いたしましょう」


 立ち上がったマリカさんと共に、裏の鍛錬場へと向かう私の腰に当然のように腕を回したアレが機嫌良さそうに「リアは僕が守るよ」なんて訳の分からない事をいってのけました。

 そんなアレの足を、出来るだけ踵の部分で踏みつけ「そう言うのは、婚約者様にお願いします」と微笑んでみます。するとアレは、相当痛かったのか涙目になりながらも「リア意外と結婚する気はないからね」と前髪を払い、ドヤ顔を見せました。

 相手にするだけあふぉらしいと感じてしまった私は、そんなアレを放置して一人マリカさんを追いかけたのです。


 ギルドの裏にある鍛錬場は、ドーム状の屋根に板張り、体育館のような見た目をしています。そして、広さは柔道場よりも少し狭いように感じました。


「リア様、こちらへどうぞ。こちらの機械で、身体能力や魔力の有り無しを判定させていただきます」


 一足先に到着していたマリカさんが、鍛錬場の片隅に置いてあるうそ発見器のような椅子を指し示し座るように促します。

 いやいやいやいや、これ間違いなく人体実験とか拷問とかで出てくるあの椅子ですよね? 頭の上に鍋みたいなの被せて、四肢拘束するアレですよね? ちょ、そんなものに座るのは嫌なのですが……ていうか、誰だこんなもん開発したやつは! はっ、口調が乱れてしまったわ。気を付けなければ……。


 脳内でツッコミを入れながら、引き攣る顔をなんとか戻し恐る恐る魔道具と思われるうそ発見器に腰を下ろします。私が座るとマリカさんが、椅子の背の裏に置かれていたらしい帽子のような器具を頭にのせて下さいました。


「あの……本当にこれで、身体能力や魔力が判るのですか?」


 手首と足首に何かを巻き付けるマリカさんに遅る遅る聞いてみれば、爽やかな笑顔で「えぇ、少し痛みますが問題なくわかりますよ」と返ってきます。


 痛み!? 聞いていませんけど? て言うかもう、間違いなく拷問器具です。あぁ、なんで私はこんなものに座ってしまったんでしょうか。


「それでは、始めますね。五分程で終わりますので、それまで耐えて下さい」


 マリカさんの声を合図に、ガチャンと言う音が鳴り体中にピリピリとした電気が走ります。痛いと聞いてびびっていた拷問のですが、意外とこれが電気風呂のようで気持ちよく。あっという間に終了してしまいました。


「リア! 大丈夫かい?」

「お疲れ様でした」

「はい。ありがとうございます」


 眠気と戦う私にアレが走り寄り心配顔を見せます。それにチラリと視線をやっただけで答えることなく、大量の紙束を持ったマリカさんにお礼を言いました。


「事務などの仕事をご希望であれば、そちらの検査もありますがいかがされますか?」

「お願いします」


 受けれるテストは全て置くべきだと判断した私は、そのままマリカさんと二階へ上りテストを受けたのです。

 テスト内容は小学生レベルの算数と国語で、歴史などはありませんでした。非常に簡単なテストを済ませ、結果が出るのを待つため受付の奥の椅子に腰かけます。


「テストはどうだった?」

「まだ居たんですか? 問題ありませんでしたよ。というか、お坊ちゃま暇なんですか?」


 心配してくれているのは分かっていても、あまりにも絡まれるためついつい棘のある言い方をしてしまいます。少しだけ寂しそうな笑いを浮かべたアレに、申し訳なく思いながらもここで謝るわけにはいきません。


「…………そっか、良かった」

「はい」


 長い沈黙を破り、声を出したアレに頷いて答えた私は余りの気まずさに余計なことを口走ってしまう。


「そう言えば、一度聞いてみたかったのですが、お坊ちゃまはどうして私に好意を抱いたんですか?」


 ずっと聞きたかったことだからなのか、何故その事を選択したのか私にはわかりません。けれど、言い終えて見上げたアレの顔を見た瞬間、己の失策に頭を抱えたくなったのです。


 ガバっと立ち上がったアレが、私の前に膝をつき両手を取ると口早に「リアは私に興味を持ってくれているんだね! 良かった! 私はとてもうれしいよ」と言いました。


 興味があるかないかで言えば、確かにどういう思考をしているのかに興味はあります。ですが、彼の事を知りたいかと聞かれればNOです。

 どう答えたものかと悩む暇すら与えずアレは「この後二人でお茶をしながらゆっくりと私の事を知って」と、飛び切りの笑顔で伝えて来ます。


 それに対し断りを入れようと口を開きかけたところで、マリカさんから名を呼ばれました。


「リア様。お待たせいたしました。結果が出ましたのでこちらのお席へどうぞ」

「あ、はい」


 マリカさんに答え、目の前で膝をついて両手を握るアレから手を抜き取り横を通り抜けた私は、マリカさんの目の前に座ると結果を聞いたのです。

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