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またまた日記ですか……。

「あの! サイエンス先生」


 魔道具を抱えて退出しようとしていたサイエンス先生に意を決して呼び止めます。そして「是非、リョウコ・カミヤマさんについての資料や話が聞きたい」とサイエンス先生にお願いしました。

 必死に頼んだおかげでしょう。サイエンス先生には何故か同士認定を頂き、快く承諾して頂きました。


 それから数日後、最高学年の学生たちへの授業を終えた私の元にサイエンス先生が一通の封書と大量の本やら紙やらを持って訪ねてこられたのです。


「それで、リョウコ・カミヤマについて詳しく話を聞きたい女性がいると手紙を送った所、ゲイル殿――あぁ、彼は第一人者なんだけど、そのゲイル殿が書いた論文と資料を一緒にこちらへ送ってくれた。リア先生が知りたいことは、おおむねこの資料などを読めばわかるかもしれない」


 机の上に置ききれない程並べられた資料集と紙の束を前に、溌剌とした笑顔でサイエンス先生は私にご説明されます。

 大変ありがたいことではあるのですが……多すぎませんか?


「こちらはいつまでの返却すればよろしいのでしょうか?」

「返却については、ゲイル殿が今度王都で開かれる研究発表に出席する際に引き取りに来るそうだよ」

「それは……いつなのですか?」

「あぁ、確か……三月後だったはずだ」


 三か月もあれば、まぁなんとか……いけるのでしょうか? 

 サイエンス先生の言葉を反芻しながら、部屋いっぱいに置かれた資料などに視線を回した私は、自分程度の能力で本当にいけるのか不安になってしまいます。

 それでも、見ないよりはマシ。知らないよりは、知る努力が必要だろうと気合いを入れます。



 態々運んでくださったサイエンス先生にお礼を言いつつ見送ります。

 放課後になり暇を持て余したらしいアレが、部屋に襲来して「リア、リア」としつこく私に話しかけ邪魔をしてきますが、全てを右から左へ流し数冊の資料を読み終えました。読み進めていた資料を閉じ、ふと身体に何か生暖かいものが当たっていると感じた私は横へ視線を流します。


 するといつの間にか横へ座っていたアレが、私の腰へと手を回し肩に頭を預け寝入っていたのです。流石にこの状態は許容できない状況です。

 起さないよう無言でゆっくりとアレに向き合う形をとります。そして、右手の親指と中指をくっつけ、丸い形を作り全力で額を弾きます。


 アレの額から小気味いいバチン! と言う音が鳴り、目覚めと同時にデコピンによる激痛にのたうち回ったアレは、何が起きたのか判らないまま涙目になっています。


「私を枕にしないでください」

「だって、リアは私の相手をしてくれないじゃないか」

「そう言うのは婚約者の方にお願いします」

「マリアーヌじゃ嫌だ。私はリアがいい」

「……ほら、もう帰って下さい。帰寮時間ですよ!」


 どんなに冷たくあしらっても食いついて来るアレに呆れながら、時計を見やった私は帰る様促します。唇を尖らせ渋々と言った表情をしたアレは「明日は休みだから……その、街に――」と言いかけ、口を閉ざしました。


 流石にデコピンは可哀想だったかな? とは思いつつも休日にまでアレと居る気になれないのでスルーするさせて頂きます。


「明日は、街へ用事がありますので、申し訳ありませんがご一緒することはできません。さぁ、寮へお戻りください」

「そう……明日は、街へか……。なら仕方ないね。じゃぁ、おやすみ、リア」


 ウィンクしながらおやすみと言うとアレは部屋を後にしました。


 ん? ミスったかな? と思ったのも束の間、それよりも大事なことがあると思いなおした私は、手に取った古い日記を一冊抱え、部屋へと戻ります。

 入浴や食事を済ませ、落ち着いた頃合いを見計らいベットに寝転がりながら読み進める事にしたのです。


 この日記はカミヤマさんの同僚が書いたもののようで――。


”リョウコが突然にいなくなった日”と言う書き出しから始まり、その日の詳細が書かれており、私はそのページにくぎ付けになったのです。


 カミヤマさんが居なくなった日の朝、太陽を拝んだ同僚の彼は今日も一日いい天気になるなと雲一つない快晴の空を見上げた。そして、研究を始め、約束の時間を過ぎてもカミヤマさんが起きてこないため彼女の部屋を訪れる。


 何度ノックしても返事をしないため、体調不良なのではないかと数名の同僚と一緒に鍵を壊し室内に入ったそうです。元々リョウコは研究に熱中すると周りが見えないタイプだったため室内は酷く荒れていた。

 脱ぎ捨てられた服やそこかしこに散らばった資料に驚きつつも、彼らはベットルームへと移動する。


 ポッコリ浮き上がったベットの上掛けにやっぱり寝ていたんじゃないかと同僚と笑い合い、上掛けをめくってみればそこには誰もいなかった。

 ただ、触れたシーツだけが暖かく、彼女が今までそこで寝ていたことを証明していた。


 そうして、皆が慌てて彼女を探し出す。室内を飛び出し、外を見まわった彼は途方にくれて空を見上げたそこには、快晴の空はなく。研究所を中心に渦巻いた雲があり、その雲には紫色の雷が走っていた。


 彼女は神に遣わされた使途なのではないか? と日記の最後のページに書かれていました。

 

 カミヤマさんは、忽然と消えてしまった。その理由はよくわかりません。ですが、この日記を読んだ私は一つの考えに至ります。


 彼女は何かをして、もしかしたら元の世界に帰ったのではないか? それは多分、魔法と関係があるのでしょう。だって、彼女は魔道具の研究者でしたから。もしかして、私にも魔法が使えるとか? いや、それは流石に……。


 魔法を試してみたい気もしますが、それにはまず魔力と言うものが自分にあるのかを知る必要があります。ですが、三十路に近い私が突然、魔力測定をしたいです。なんて恥ずかしくて言えません! 


 羞恥心から、枕に顔を埋めます。そして、サイエンス先生の「冒険者ギルド」と言う言葉を思い出したのです。


「そうだ。冒険者ギルドなら、登録するついでに魔力測定なんかもあるんじゃない? そうよ。きっとあるわ!」


 幸いにも明日は休日。元々、明日は街へ降りて食料を買いたす予定だったのだからと言い訳しつつ、明日冒険者ギルドに向かう事にしたのです。

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