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二人目の日本人!

 紅茶を入れ、マリアーヌ様とサイエンス先生? 教授?――先生で統一しておきましょうか、さっき私も先生と呼ばれましたし――にカップロ差し出し、彼の方の説明を待ちます。

 持ってこられた水晶は、よく見れば推奨内が白濁としており靄がかかったようになっていました。


「リア先生にはこれが何なのかの説明から始めましょう。そう、あれは今から五百年と少し前の事です。古代と言ってもそう古くはない遺跡――あぁ、この遺跡はアミュストレア遺跡と名付けられていまして、約八百年から千年程度前の遺跡なんです。しかもこのミュストレア遺跡にはかなり面白い魔道具が多彩に残されていましてね。その魔道具を作ったとされるのが、我らが敬愛してやまない()()()()()()()()と言う女性魔導学者なのです。彼女は、ある日突然、この世界に現れ魔力が使える事が判ると魔石を作り上げたり、それを用いた道具をですね――「サイセンス先生、落ち着いて下さいませ」――次から次へ!! んっ、失礼しました。つい熱が入ってしまったようだ」


 手短に説明されると思っていたらまさか、発掘した場所――遺跡からの説明になるとは……。驚きです! 饒舌に話すサイエンス先生をマリアーヌ様の声が止め、サイエンス先生は赤くなり謝罪されます。私としては別段構わなかったので「大丈夫ですよ」と伝えます。


 それよりもサイエンス先生の出された魔導学者の名前に、否応なく日本人である事を確信します。どちらかと言えば、魔道具の説明よりもそのカミヤマ・リョウコさんのお話を聞きたいほどです。

 ですが、今ここで聞くことは憚られる雰囲気なので後ほどお伺いしようと決めました。


「それでは簡潔に説明を、まずこの水晶は貴方の身分証を作るために使うものです。水晶に触れるとその人の指先の指紋などを読み取り、識別番号と言うものが割り振られます。時間にして数十秒程度なんですが、とても高性能な分析器なんですよ! そして、こういった金属タグをここに押し当てれば、貴方の名前、年齢、種族、性別などがわかります。この魔道具は基本的に、そうですね……冒険者ギルドや商人ギルド、王城勤務の者たちに対して使われますね。後、この学園の入学試験の際に、生徒たちの身分を保証するためにも使います」


 簡潔に、と言いながら中々に長いご説明をしていただきました。ドヤっと言い切ったサイエンス先生は生粋の学者肌なのでしょうね。

 丸眼鏡の奥にある瞳がキラキラと輝いたかと思えば「さぁ、どうぞ。こちらに手を置いて下さい」と非常に嬉しそうな声音で私を促しました。


 躊躇うことなく右手を水晶に置いた途端、水晶の上部中央から幾重にも波紋のように光の線が下へと走ります。そして、数秒後カタカタカタと何かを刻むような音が鳴ったかと思えば、サイエンス先生から「終わりましたよ」と言う言葉が聞こえたのです。


「こちらが、リア先生のカードです。どうぞご確認を」

「はい。ありがとうございます」


 渡された金属のカードを見た私は、ありえない事実を知る事になりました。


リア・コシガヤ

人間  女  1()9()


 日本語で表すならばこんな感じの並びになっています。それよりも年齢です!!  何故、十歳も若返っているのですか!


「リアさん? どうでした?」


 唖然としたまま金属カードを見つめる私にマリアージュ様が確認されます。何故、どうじて? と言う感情が頭をグルグルと回り思考が停止したままの私は、カードをそのままマリアーヌ様に見せます。


「まぁ! やはり、やはり若くなっていたのですね!」

「むっ? どういう事だ? マリアーヌ」

「ふむふむ。実に興味深い」

「ど、どういうことなのですか? 何故?」


 嬉しそうに両手を握ってくるマリアーヌ様。意味が分からないと説明を求めるアレ。サイエンス先生は、何か訳知り顔で頷いています。

 もしかして、マリアーヌ様しゃべっちゃいましたか? 


 疑いの目を向けながらマリアーヌ様を見れば、ニコっと微笑まれます。これは間違いなく話してますよね? そう確認を取ろうとした瞬間、授業開始前の一度目の予鈴がなってしまいました。


「ほら、シュリハルト様。参りますわよ。詳しいお話は後ほどお聞かせしますから、さぁ教室へ参りましょう!」

「ぬ、あ、あぁ。リア、また後で……」


 マリアーヌ様に促されアレが立ち上がり出ていきます。それを見送り、サイエンス先生に「この後少し、お時間はありますでしょうか?」と聞けば、頷いて下さいます。

 二度目の本例が鳴り生徒たちの授業が始まった頃合いで、私は先ほど聞いたカミヤマリョウコさんについてお話しを伺うべく口を開いたのです。


 カミヤマリョウコさんは、ある日突然にこの世界へやってきた黒髪黒目の細身の女性だったそうです。彼女に関する日記などは存在しておらず、彼女の書きなぐった日本語の研究資料と試作品だけが残されているのだとか。

 あくまでも憶測でしかありませんが、彼女は元技工士もしくは科学者だったのでしょう。彼女の発明した魔道具は、今もその作り方が受け継がれ、人々の暮らしを豊かにしているそうです。


「――彼女については不可思議な点もあるのですよ」

「それはどういったものなのでしょう?」

「これはあくまで当時彼女と一緒に研究に励んでいた人の日記に ”ある日突然リョウコは消えてしまった。” とそう書かれていたそうです」

「消えた? ですか?」

「そうです。その日は魔道具の研究を共にする予定だったそうです。いつまで経っても起きてこない彼女の部屋を訪れたその研究者は、もぬけの殻になった部屋を発見。その際触れたベットはまだ暖かく、彼女の姿だけが忽然と消えていたそうです」

「……そうですか……」


 サイエンス先生の話してくださった内容はとても興味深く、やはり彼女が日本人であることは間違いないと確信したのです。だって、掃除機やら洗濯機やらを作りたがるのはこの世界ではありえません。その上で、性能を知るカミヤマ性の日本人しかいませんからね……。

 

 最後にサイエンス先生が教えて下さった内容――失踪した理由については今でもまだ、改名されておらず。研究者の人たちによって調べられているそうですが依然として何もわからないようでした。


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