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信頼を取りものすのは難しいですよ?

 国王様を含めた話し合いが終わりに向かう。項垂れた馬鹿王子と男爵令嬢は国王様の命で、騎士に部屋から退室させられました。その際、自分の腕に縋りつく男爵家の令嬢を見る事も無く答えも返さなくなっていたので今度こそ、反省するといいと思います。そして、辺境伯家のご令嬢もすがすがしい笑顔で部屋を後にされました。

 残ったのは、私、マリアーヌ様、アレと公爵様、国王様と宰相様です。


「リア殿の言う通り、初めから話を聞いておればよかったのだな……」

「我々は、事態に怯えるばかりで、本人達の話を聞かなかった。それは誤りだったのですね」


 口々に反省の言葉を口にする大人たちへ、私は女子会を止め白けた瞳を向けた。

 言いたいことは多々あるけれどまずは、私の認識を改めて欲しい。この際だからハッキリ言ってもいいだろうか? この人たちは、私をきっと何でも困った事を解決する何でも屋だ思っているのだろう。だが、それは私にとってとても迷惑な事なのだ。


 それに、こうして反省の言葉を口にいるが、私から言わせれば同類なのである。今回私が切れた理由を思い出して欲しい。その前の事も……すべてが大人たちにより画策されているのだ。


「皆様方反省していらっしゃるようですが、私から言わせていただければ皆様方もこの二人と同じですよ? 自分たちで解決出来る事なのに、解決するつもりもないのか何でもかんでも平民である私を巻き込んでいますよね? 違いますか?」


 私の声にその場に居た全員が「それは……その……」などと言い淀みながら顔色を悪くして視線を逸らす。そこへ何故か出て来たのは、一番初めに頼まれた元凶であるアレだった。


「父上にも陛下にも、宰相閣下も今後、リアの事を利用するのはもうやめていただきたい! お三方のかげで、リアがこの国を出ていくと言ったのですよ! いい加減気付いて頂きたいです」


 自分は何も迷惑をかけていないと言わんばかりにソファーにふんぞり返るアレに、一番今まで迷惑をかけられたマリアーヌ様は明らかに顔を顰めた。

 大きく溜息を吐き出したマリアーヌ様が、ここぞとばかりに自分も迷惑をかけている一人だと自覚を促しました。


 ところが、なんとアレは自分がそうであると認めるどころか、自分が迷惑をかけたことなどない! の一点張りで、周囲の誰もが呆れて閉口するしかありませんでした。


 沈黙を破ったのは、国王様でした。


「リア殿、この度の事並びにこれまでの事、国を治める者として謝罪させていただく。また、今回の件を解決した報酬として、欲しいものがあればなんなりと用意させる故、どうか、この国を出ていくことを考え直していただけないだろうか?」


 褒章……ですって! しかも、なんでも? こ、これは……貰っておいた方がいいでしょうか? 否、罠の可能性もありますよね……でも、自分のお店を開くと言うのもありですね……そうなれば、お金も貯められるし……でも、メイドを辞めると言うとあの契約書が……あぁ、どうしましょう!


 謝罪の言葉を伝えた国王様に変わり、またも宰相様と公爵様が頭を下げられます。ですが、今の私は考える事に必死でお二人のお姿は映りませんでした。

 生きていくのにお金が必要なのです。だからこそ、褒章に眼が眩みます。その一方で、例の契約書の事が思い起こされます。ここで、公爵様辺りが契約の破棄を言い出してくだされば一番いいのですが……顔を見る限り無理そうですね。

 それに、褒章を貰うと言う事はこの国に残ると言う事……この方々を信じる事ができるでしょうか? 正直なところそこが一番の問題だと思います。


 顔を上げ、皆様方へ視線を向けた私は、今の自分の気持ちを素直にお話しさせていただくことにしました。


「そうですね……今すぐ決める事は出来そうにありませんが、国を出るかは一度一人になって考えたいので、宿に戻りたいと思います。腹が決まり次第、もう一度お話をさせて頂きたいと考えております」

「そうか……」

「私はどこまでも、君を追いかける。だから私の事など考えず、リアはリアの好きなように生きるといいよ」


 私の答えを聞き国王様と宰相様は、僅かに俯かれました。呟くような声で、返事を返して下さいましたのは公爵様です。その隣に座るアレは、どこまでも付いてくる気満々のようです。が、私の生活を脅かす存在なので不要です……。


 潤んだ瞳で、私を見上げたマリアーヌ様が祈るポーズで両手を合わせ「リアさん……どうか、この国に残ってくださらない?」と仰いますが、私にはその姿こそが詐欺に思えてなりませんでした。


「マリアーヌ様。そう言っていただけるのは有難いことだと思います。ですが、あなたも公爵様も、国王様さえも私の自由を奪い。嘘の言葉を並べ利用しようとなさいました。そんな貴方方を私は再び信じる事ができるか自信が今はありません」


 私の発言にマリアーヌ様は、縋るように片手を伸ばされます。そして、「それについては、謝罪するわ。だから、どうか……」と両手で私の手を握り、懇願されました。


「申し訳ありませんが、今更何を言われた所で、全てが嘘くさく見えてしまいます。ですので、考える時間を下さい。私が再びあなたがを信じられるかどうか……」


 マリアーヌ様に握りこまれた手を外し、今は何を言っても決められない事を主張しつつ私は一礼して退室しました。

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