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友人になりましょう。

 私の言い分含めその後も話し合いは続き、あぁ言えばこう言うの繰り返し、もういい加減うんざりします。今回の元凶の第二王子がこれでは正直、話にならないとしか言えないですよね。どれだけ甘やかされて来たのでしょうか?


「ですが、ヴィナは何もしていないと言っています。父上はヴィナをお疑いなのですか?!」

「……」


 第二王子が親し気にヴィナと呼ぶ相手は、ヴィフィルディーナ男爵令嬢の事です。二人に話を聞くと言っている国王様の言葉を聞いた馬鹿……失礼、第二王子が何故か男爵令嬢を庇い。そのやり取りが今の今まで続いていました。

 最終的に国王様がにらみを利かせ黙らせ終了な訳ですが……私がここに居る意味がわかりません。


「馬車まで時間も無いことですし……この場に、二人を呼び出せばいいのでは?」


 私の提案に、ギョッとした顔をする面々は私を凝視するように見つめてきます。そんな捨てられた犬のような視線を向けてもダメなものはだめですよ? 私の怒りはそんな簡単に静まるモノではありませんよ?


 情け無用と言わんばかりに視線を逸らした所で、その場の空気に耐えきれなくなったらしいサジュタリア教授が「直ぐにお連れします」と言い残し、扉を潜り外へ出ていきました。


「リア、どうしても国外に行くと言うのであれば、私も全てを捨てて共に行く!」

「「「「「……は?」」」」」

 

 思いつめた表情で今まで何かを考えていたらしいアレは、ついに時が来たと言わんばかりの表情で宣言しました。ドヤ顔を決め男ならやらないとななどと言い続けるアレに、私含め全員が呆然というべき顔でポカーンとアレを凝視します。

 どれぐらいの時間そうしていたのかはわかりませんが、静まり返る室内にノックの音が響き、慌てたように学長が入室の許可を出しました。


「失礼いたしますわ」と礼儀正しく淑女然としたカーテシーをするのは、こげ茶の髪をサイドで結い上げ、少しだけキツイ印象の翡翠の瞳を持つ女の子です。

 

「……あ、クリフ様ぁ~」と馬鹿王子を甘えた声で呼び、走り寄った女子生徒は薄茶色の髪に濃紺色の瞳を持っています。顔の造りは可愛いですし、体つきも男の人が好みそうなナイスバディ―ではありますが……走り寄った途端、彼の腕に自分の胸を押し当てるあたり……確実に、腹黒かもしれませんね……。


そして、二人を呼びに行ったサジュタリア教授は「戻りました……えっと、皆さんどうされたのですか?」と言うと、室内の空気を読み取り僅かに顔を引きつらせました。


「クリフ様ぁ~。お会いしたかったですぅ~」

「ヴィナ……」

「ヴィフィルディーナ様、国王陛下の御前ですよ。挨拶を忘れてはなりません!」


 媚びを売りまくる男爵令嬢に、馬鹿……あぁ、また失礼を、第二王子はメロメロと言った状態でその頭を撫で、名前を呼んでいます。そこへ、辺境伯家のご令嬢が少し厳しめの声を出し注意を促しました。

 すると、男爵令嬢は瞳をウルウルさせ「クリフ様ぁ~」と第二王子に助けを求めました。目の前でやり取りを見ていたはずの第二王子――もう、馬鹿で良いのではないかと思っていますが――は、男爵令嬢の肩を引き寄せ「シェイル!」と恫喝するような声を出し辺境伯家のご令嬢へ怒りを表したのです。


 ここで国王様や宰相様が、第二王子に間違っていると何故言わないのでしょうか? ついさっき、貴方は自分たちの育て方がまずかったと認めたではありませんか……。

 結局この人たちは変わらないのでしょうね。

 この人たちのために、私は職とお金を失うのかと思うと段々と腹が立ってきました。


「はぁ……ウザイ。なんだこの茶番……。辺境伯家のご令嬢様、貴方は美しいですし、頭も良いようですから、こんな男さっさと捨てて、他の殿方を探した方がいいですよ?」

「なっ! 貴様はまた!」

「あら、あなたにもそう見えるのですか?」

「えぇ、見えますとも。だって、ついさっき教育方針を間違えていたと謝罪したにも関らず、自分の息子が今まさに馬鹿な事をしていても止めないんですから、見限るに限ります」

「うふふ。貴方とはお友達になれそうですわ」

「えぇ、本当にそうですね」


 私の言葉に憤慨する第二王子を無視する形で、辺境伯家のご令嬢と会話をします。その会話の中で、彼女なりに見限っていた事を知った私は、更に彼女へこの国ではなく、他国へ嫁ぐべきだとお勧めします。すると彼女なりに考えていたようで、両親とキチンと話し合いをすると言いました。


「先ほどの態度を見る限り、話し合う必要すらありませんでしたね」

「これは、わたくしでも擁護できませんわ」

「リアの言う通りだ!」


 見なくても分かっていた事ですけど……茶番を見せられ余計に辺境伯家のご令嬢が間違ったことをしていないと分かる。そう私が伝えれば、マリアーヌ様が悍ましい者をでも見たかのように眉根を寄せ第二王子と男爵家令嬢を見たのです。

 そして、ここから先の会話は女子会のように進みます。


「わたくしなりに、長期休暇前までは両親を抑えてはいたのですけれど……。実は長期休暇中、両親が王都に行った際、そこで殿下とヴィフィルディーナ様が腕を組んで口づけするお姿をお見掛けしたそうなのです。それで、両親が知ってしまいまして……ここまであからさまな行動を取られると流石のわたくしでも、もう庇いきれませんでしたの」

「自業自得と言う事ですね」

「それはまた……人目のある所で……馬鹿ですわね」

「まー、王家に対する信頼は完全に消えたのでしょう。祖父が相当に怒り狂っておりますから、そのうち登城するかと思いますわ」


 ご家族が、怒らない方がおかしい話ですしね……。納得しつつ三人で頷き合った私達は、もう話すことはないと言う状態で国王様方に視線を向けました。

 国王様、宰相様、公爵様、そして学長と全員が、眉を吊り上げ第二王子とその隣に座る男爵令嬢を見ています。「ヒース」と地底から響くような声を静かに上げられた国王様の声音に、流石の第二王子もビクっと肩を揺らし姿勢を正します。


「お前とはお前の母である夫人含め、しっかりと話し合わねばならないようだな。その結果如何では、お前の王子としての籍を抹消する事になると心せよ。それから、男爵令嬢だったか? お前にも両親含め話し合い、結果に関わらず、家ぐるみでの処分が下ると覚悟しておけ」


 国王様の判断に、声を上げようとして項垂れる王子。男爵令嬢は必死に王子に縋りつき「どうしてですか!」と訴え続けていた。


足を運んで頂きありがとうございます。

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