失態です!
「うっ……頭いたい……」そう言いながら、二日酔いの不快感を感じながらベットから上半身を起こしました。
室元は違うベットのスプリングの柔らかさ、そして布団の上質な手触りに寝ぼけた頭が一気に覚醒します。
そして、私がまず確認したものは、自身の身体でした。
無事に服を着ていた事に安心すると同時に、ベットを抜けだし見覚えある寝室の扉を開けました。
そこには……地震でも起こったのではないか? そう思える惨状が広がっていたのです。
「お、おはよう。り、リア。よよよよ、良く眠れたかな?」
「おはようございます……えっと、これは……?」
引き攣った顔で、どもりながら声をかけて来たアレに何故こんなに部屋が荒れているのか? そう聞けば、アレは視線を逸らし「少し、はしゃいでしまったんだ」そう言いました。
視線を逸らすアレを見つめ、その真意を確かめようとする私にアレは顔を背け「片づけは後でいいから、支度をしておいで……」と、促します。
その言葉を受け、ハッと自分の今の状況を思い出しました。
「すみません。失礼します」そう言って、慌てて部屋を後に自室に戻り支度をし直しました。その後、紅茶の用意を済ませ再びアレの部屋を訪れ、アレのお風呂の用意をすませました。
「お待たせしました。紅茶になさいますか? それとも……お風呂に?」
「あ、えっと……まずは、お風呂にしようかな!」
まるで、どこかの新婚さんのような会話で紅茶かお風呂かを聞けば、お風呂に入ると言うアレにバスローブを渡し浴室の扉を開けます。
いつもならば、ここで一緒に入るか? などと聞いてくるはずのアレが、今日は大人しく浴室に入って行く事に違和感を覚えつつ、扉を閉めました。
アレを浴室に送り出したところで、さっそく荒れた室内の片づけを始めます。
「誰がこんなことを……ソファーが裏返っているじゃないですか……まったく! 片付ける方の身にもなって欲しいものですね!」などと一人愚痴を零しながら、手を動かし室内を片付けました。
アレが浴室から出て来る頃。部屋の片づけをあらかた終えたていた私は、紅茶を入れる為のお湯を入れ直しに行きました。
さっきみたアレの様子がおかしいことに不信感を感じた私は、お湯を沸かしながら、昨日の夜の事を思い出そうと努力します。
そして鮮明に浮かぶ、自身がおかした数々の失態――!!
一度目の乾杯を済ませ、ワインを口に含んだ私はワインの度数の高さにその時点で酔いがあたまに回り。
アレに対して「気持ち悪い」だの「キザ過ぎてドン引きだ!」だの言いたい放題言ってしまったようです。
その上、酔っぱらった私を寝室に連れ込もうとしたアレに「触るな。天誅!」と叫びながらの ”回し蹴り” をかましてしまったようです。
その蹴りで吹き飛んだアレはソファーに直撃……そのせいで、ソファーがひっく返ってしまった。と言う状態だったようです。
部屋が荒れていた理由は、全て自分のせいだったことを思い出した私は、湧いたお湯をポットに移し入れそれを抱えてアレの部屋へ戻りました。
部屋に戻りまずした事は、お風呂上がりのアレに紅茶を入れる事。そして、昨日の事を謝罪します。
「申し訳ありませんでした」
紅茶を一口飲んだアレが、その態勢で固まり「お、思い出したのか……?」そうボソっと言いました。
えぇ、全部思い出しましたとも……アルコールを飲ませ私に手を出そうと計画していたのに、失敗した……と言う貴方の呟きも全部……。
「はい。全てではありませんが、思い出しました。暴力をふるった事まずは、謝罪いたします」
「あ、あぁ……そ、その事は、き、気にしなくていい。ま、まりあーぬで慣れているから……う、打たれ強いんだ。私は……」
「ありがとうございます」
気にしなくていいと言うアレの言葉に、下げていた頭を上げて済んだ事にします。アレが画策していた事は敢てここでは口に出さないで置きます。
弱みを握っておけば、いざという時に役に立つはずですから……。
「そうでした。あの本全て読み終わりました」
「中身がよ、よめた?」
「はい。読めましたけど……?」
気まずい空気を変えるべく本を読み終わった事を伝えた途端、アレの表情がとても真剣な物に変わりました。
何かを考えるように顎に手をあて暫し考え込んでいたアレが、顔を上げ立ち上がると私に手を差し出し「少し付き合ってくれ!」といいました。
手を握りたくないと考えた私は、それに頷き了承を示せば「父上の部屋に行く」そう伝えたアレは、私の手を強引に握り歩き始めました。
本が読めただけでどうしたこんなことになったのか? そう思いながら、アレと共に、公爵様のお部屋を訪ねました。
公爵様の執務室は、年季の入った焦げ茶色をした本棚に沢山の本が並び置かれ、落ち着いた印象を受ける部屋です。
そこには、座り心地のよさそうなソファーと角が丸くなったテーブル。
どこかの社長室のような大きな執務机に、座り心地の良さそうな椅子が置かれていました。
突然私の手を握り執務室を訪れた息子を召した公爵様が、顔をあげると同時に怪訝な表情を浮かべます。
「シュリハルト、どうしたんだ?」
「父上に、内密なお話があります。出来れば人払いをお願いしたい」
「ふむ。分かった」
アレの声を聞いた公爵様が、その表情を真剣な物に変えると周囲に居た従者に目配せを送り退室を促しました。
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