はぁ~やっぱり嫌いです。
プロローグ的な何か(´・ω・`)
今日も日の出前からアレの為に仕事の支度をはじめます。
と言っても、寝間着である麻布で出来たワンピースのようなものから、クラシックメイド服に着替えて、髪を結い上げ布で包むだけですが……。
「はぁ~。また今日もあれのセクハラに耐えなければ……本当にウザイ」
当家の主人は本当に素敵な方なのですが……如何せん息子であるアレは、我侭な上俺様で……本当に見ていてイライラします。
この屋敷に勤めるようになり、早三ヵ月表情筋とセクハラを上手くかわすコツだけは鍛えられましたとも。
本気で辞めたいと何度もお願いしたにも拘らず、アレのせいで辞める事さえできないとは……腸がにえくり返る思いです。
「さあ、今日も気合を入れて参りましょうか」
独り言を呟き、台所へと向います。
その際、プリーツは乱さないよう細心の注意を払い、メイドと言えど淑女らしい行動を心がけるのが大切です。
台所に着きましたらば、お湯をわかしアレのための寝起きの紅茶を用意して差し上げます。
本当は、毒でも入れたいところなのですが……殺人は、縛り首ですから我慢します。
カートに、アレが好む茶葉を幾つか用意して、磨き上げられたカップを手袋を嵌め持ち上げたならば、丁寧に伏せたあと、ティースプーンを布に包みその横へ置きます。
最後に、全体的に布をかけカートを押しつつアレの部屋へと移動します。
部屋の前で一度深呼吸をして、ノックを鳴らし返事がないことを確認した後、室内へと無言で入り寝室へ移動します。その際、一度テーブル側にカートを置き、先に入れられているはずのバフタブの温度を確認して落ち度が無いかを確認。
その後カートを押し、寝室へと入ります。
ベットサイドへカートを置き、次は着替えを用意します。
本日のアレは婚約者であるマリアーヌ様とのお出かけが予定にあったはずですから、それなりに見えるものをご用意……何着たって一緒でしょうに? とは内心で思っていても口には出しませんとも。
さて、服の用意も終わったところで、いよいよアレを起すのですが、ここで不用意に近づくのは初心者のすること。この3ヵ月色々と被害を受けましたから、学習いたしますとも。
「シュリハルト様。朝でございます。どうぞお目覚め下さい」
優しい声音を意識して、窓にかかったカーテンを開けながらまずは声をかけます。
やはりこの程度では、ピクリともしませんね……チッ。
「シュリハルト様。お目覚めを……」
今度は、二歩だけ近づき口元に紙を丸めたラッパを当て起します。
「んっ~っ。もう少し……」
やはりこれでもダメですね……では、最後です。まずはアレの足元へ移動します。そして一気にその布団をゆっくりひっぺがしていくのです。そして、下半身のある位置だけは視界からはずしておきます。
何故かこの世界の男性は、全裸で寝ると言うのが常識なようで……汚物を見てしまう結果になるからです。
すきでもない男のアレを見るなど最悪ですからね……。
最新の注意を払い、布をゆっくりと腰の辺りまで下げ窓をすべて全開にします。この時期であれば寒さで目覚めるはずですからね。病気になるかもなどと、気にしてはいけません。
あくまで自己責任と言うものです。
「ぶぁっくしょん! 寒っ!」
「おはようございます。シュリハルト様」
丁寧に頭を下げ起きたアレの汚物を見なくて済むよう視線を下げます。モソモソとベットから立ち上がるアレの足が、私の視界へと入ります……スネ毛が気持ち悪いです。さっさとお風呂へ行きなさいと言ってやりたい所ですが、何も言わず視線を自身の太ももで組んだ手へ移動します。
「おはよう。リア。今日も君の髪は美しいね」
「お褒めに預かり恐縮です。お湯のご準備ができておりますので、どうぞ浴室へ」
反吐が出そうな言葉を朝からよくはけるものですね……全身に寒気が走りますよ、まったく。
浴室へと移動する気が無いのか、アレは汚物を晒したままベットの側にあるソファーへと腰を降ろすと、ふぅ~と息を吐き出し「リアの入れた美味しい紅茶が飲みたいな」と、言い出しました。
見ないよう細心の注意を払い、カートの上に乗せた紅茶の茶葉からどれがいいか訪ねると、いつものものを指定され、斜め後を向く形で茶葉を入れたポットへお湯を注ぎいれ数分待ちます。
「リア~。私は君がとても好みなんだ……一度でいいから私の――「シュリハルト様。そう言ったご冗談は私以外にお願いできますでしょうか?」」
またいつものように、愛人のお誘いを頂きますが丁重に興味が無いとお伝えしておきます。ニコニコ微笑を浮かべた顔を向け、下を見ないよう注意を払い出来上がった紅茶を差し出せば、不服そうな顔をする金髪碧眼のお顔がチラりと視界に入りました。
「リア! 私は本気だ! 君と出会ったあの日以来。他の女性じゃ満足できないんだ!」
突然全裸で立ち上がり、抱きつこうとするアレを祖父直伝の横っ飛びでかわし、微笑みながら紅茶が冷めますよと前置きして、警告して差し上げます。
「シュリハルト様。ご冗談はお辞め下さいませ。私は平民です……公爵家嫡男の貴方様と釣り合いがとれるとは到底思えませんわ。オホホホ」
「それでも!」
「あら、もうこんな時間ですわ。そろそろお支度なさいませんとマリアーヌ様がまた、お怒りになられるのではありませんか?」
「……っ、わかった」
肩を落としアレが漸く浴室へと向うと朝の戦争は終わります。
非常に疲れますし身の危険も感じますが、これが、私とアレの出会って以来毎朝欠かさず行う日課なのです。
続きは気が向いたらと言うか、かきたくなったらかきます。