あの女はオレの物
彼女が、オレ以外の男と談笑している。
……尻軽女め!
何故、理解出来ない!
お前は、オレの物だと!
以前、男は彼女に愛の告白をした。
しかし、それは断られた。
男は激しい怒りを覚えた。
このオレが告白してやったのに、断るとは何様だと。
だから、男は彼女を力尽くでものにした。
これで、あの女も理解しただろう。
オレの方が偉いのだ。お前はオレの物なのだ。
男はそう思って、満足感に浸っていた。
「どちら様ですか?」
数日後。
街でばったり彼女に会い声をかけると、男は忘れられていた。
そんな事がある訳が無い!
忘れた振りをして、オレを馬鹿にしている!
激しい怒りに駆られた男は、その場で彼女の首を絞めて殺した。
周りの人間達に抑え込まれても、彼女の首にかけた力を緩めなかった。
留置場に入れられた男だったが、満足していた。
彼女を殺した事で、彼女が完璧に自分の物になったと思ったからだ。
それに、彼女は男の側に居た。
男はそれを幻覚だとは思わなかった。
彼女の霊はずっと側に居た。
取り調べの時も、拘置所に移されても。
決して、男を見る事は無かったが。
刑務所に移ったある日の事。
壁を抜けて見知らぬ男の霊が現れた。
その霊は彼女に話しかけ、馬が合ったのか笑顔になった彼女と談笑した。
何を話しているのかは、サッパリと聞こえない。
「離れろ!」
声を掛けても、まるで、聞こえていないかのように二人は会話を続けた。
「おい! 止めろって言ってんだろう!?」
引き離そうとしても、その手は二人の体をすり抜ける。
「何を騒いでいる!」
「ふざけんな! ああああ!」
駆け付けた刑務官にも気付かず二人を引き離そうと奮闘するも、彼女も相手も、まるで、間に居る男が見えないかのように笑い合っている。
「無視するんじゃね~!!」
何を怒鳴ろうが、二人の仲を引き裂けない。
殴る事も、殺す事も出来ない。
「大人しくしろ!」
「何でだ!? オレの物だろう!? 何でっ!」
刑務官達に抑え込まれ、それでも男は、思い通りに出来ない彼女に怒りを向ける。
光が差し、彼女と相手の男を包んだ。
二人は手を繋ぎ、幸せそうにあの世へと去って行った。
残された男は、現実に目を背けた。
あれは、夢だ。幻だ。
本物の彼女は、オレの物のままなのだと。