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58.混血種の娘(1)

――まだ私がレン、そしてあの娘達と出会う前の話


私は物心付いた頃から、自分の容姿が他の者と少しだけ違う事に気付いていた。普段はそんなこと気にせず生活していたけど、鏡の前で母に髪を整えてもらっている時になるとどうしてもその違いが目に入った。

街には母の様にエルフを象徴する立派な長耳を持っている者もいれば、容易に髪で隠れるような平たい耳を持つ者もいた。しかし、私はそのどちらともつかない容姿であった。

まだ幼かった私はどうして見た目の違う人間がいるのかも分からなければ、種族という概念すら持ち合わせていなかった。でも他人と少し違う容姿について、それに関して特別な感情を抱くことは無かった。


あの時の私は綺麗で、優しくて、頭の良い母が大好きだった。正直それは今でも変わらない。自分の中にある家族像には母親しかおらず、父親という人はいなかった。でもそんな事は気にも留めていなかった。優しくて自慢の母がいるだけで、十分に幸せだったから……


でも、いつまでも自分の世界は母親と二人だけという訳にもいかなかった。外へ学びに出なければいけない歳になった私は、地元の初等科に通い始めた。そこから少しずつ私を取り巻く状況は変化していく。今までの閉ざされた世界から、他の同年代の子と触れ合い、外の世界を嫌でも知っていくのだから……

今になって考えると母も悩んだ末に、子を外の世界へと送り出したのだろう。いずれにしても生きていくためには、嫌だろうが何だろうが外の世界を知らなくてはいけない。母親としての決断は決して間違っていなかった。


初等科に入った頃は、周りの子達も学が無くて私の容姿など気にせず、直ぐ友達になってくれた。ところが周りも学びを通して様々な事を知っていくうちに、私の外見的特徴に目が行くようになったの。ある日、一人の女の子からこう言われた。その子はエルフ族の子だったかな――


「どうしてあなたの耳は伸び切っていないの?」


私自身もそれが何故なのか分からず、その日帰宅すると真っ先に母へ尋ねた。


「ねぇお母さん。私も大きくなったら、お母さんみたいに立派な耳になる?」

「うーん。どうかな。それはちょっと難しいかもね」

「えぇ―― なんで?」


優しい言葉に納得できない私は、母を見上げながら更に聞いた。


「じゃあ耳が平たい人みたいになるの?」

「それも違うかな。でもイリスはお母さんに似て、すっごく美人さんなんだから。二つしかついてない耳の形が少し違うくらいで気にする必要は無いのよ」


当時の私は大好きな母に美人と言われたことに舞い上がり、後に続いた言葉の意味なんて理解していなかった。『少し形が違うだけ』そうほんの少し、でも決してその違いは小さくは無かった。

その後、母は私の事を気にしてか、髪型を変えてくれた。新しい髪型は凄く可愛くて、直ぐに気に入った。思い返せばあの髪型は、無理矢理にでも耳を隠すように計らっていたのね。

それ以降、自分の容姿の違いを忘れたかの如く、周りから視線を向けられることは無くなった。でも中等科へと入るとまた状況は変わったわ。


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