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49.落ちこぼれ達はお呼びでない

怪我の具合はどうだ?

男二人の会話はそんな話題から始まった。すっかり学年の顔となったジーク・ウルフェンドール。偉大な飛空士を親に持ち、サラブレッドの血統を継ぐもの。もちろん彼はネームブランドだけでなく、成績でも不動の学年トップに立つ。


対して学年で唯一、能力検査にて最低ランクのE評価を刻んだレンフォード。彼は成績も全く振るわない。

そんな実力的に正反対を往く両者はなぜか絡むことが多い。休講によって生まれた空き時間の今も言葉を交わしている。


「切り付けられた箇所は糸も抜いて、もう傷が開く事もないそうだ。傷は綺麗には消えないらしいけど、野郎の腹部なんて誰も見ない箇所だからな。それよりも女の子の顔に傷が付くようなことが事がなくてよかった」

「チームメイト想いなんだな、お前」


レンは怪我を負った横腹を摩りながら、チームメイトが無事だったことが何よりだと言ってみせた。

男なら傷の一つや二つ、武勇伝として話のネタになるかもしれないが、女の子の顔に傷が残ったとあらば大問題である。


「前々から思ってたんだけどさ、レンのチーム。男一人に女子三人なんて珍しい組み合わせだよな。普通男は男、女は女で固まるもんだけど」

「謂わば、寄せ集めで組んだ仮初のチームだったからな」

「その割に上手くやれてるじゃないのか」

「あぁ。それは否定しない」


リーダーを務めるイリスは仮という称号を外す気は無さそうであるが、各人上手く立ち回れるようになってきた。レンはもう暫くの間、彼女たちと行動を共にすることになるだろう。


「ところで、俺の腹部に傷を残した張本人はあの後どうなったんだ?」

「あぁ、アイツか。実は法外薬物の常習犯だったらしくて当局に引き渡されたよ。飛空士科は愚か、学園自体から彼の在学していた一切の履歴が抹消されたって話だ」

「薬物常習犯って…… 時機に首切り台送りか」

「おいおい、中央都市には極刑なんて無いぞ。未だに首を跳ねてるのはごく一部の地域だけだ」


この国の最高刑は州によって異なっており、多くの地域では永久投獄が最も重い罰とされている。しかし、一部の州では未だに極刑が存在しており現役稼働している首切り台があるという。数ある犯罪の中でも、法外薬物への関与は即最高刑の判決へと繋がる。


「それにしてもお前、アイツに何したんだよ。当局に引き渡す前に病院へ連れて行ったが、二度と子孫を残せない程の重症を負ってたぞ」

「あぁそれをやったのはカティア、俺ところのレディーだよ」

「やばいなそいつ……」


思い出すだけでも胸糞が悪くなる。先の事件は置いておき、ジークは本題へと移った。


「トーナメント。第40回航空トーナメントが近く開かれる。レンお前たちはどうする?」


彼が持ち寄った話題はレンにとって聞き覚えの無いトーナメントの話であった。素直にジークの話に耳を貸す。

航空トーナメントとは各地の飛空士科学生、すなわち訓練生が集い開催される競技大会だという。今回で40回を迎える権威あるこの大会は国内のみならず、近隣の同盟国の訓練生も参加する。


この大会で、優秀な成績を残せれば、当然学生のうちから界隈に名が知れ渡る。名が売れれば将来のキャリアへの軌道も開かれ、飛空士として活躍する未来がより現実味を帯びるという。

結果を出した場合の恩恵は将来のキャリアだけでは無い。その他には学園から、成績優秀者の特典としてチーム予算の増額、個人成績への加味、在学中の大食堂無料化の権利などが与えられるという。


「一応聞くけどさ、ジークは当然出るよな?」

「学園の顔として出場は絶対だ、というような剣幕で学園長に迫られたよ。いずれにしても自分たちの力が他所でも通用するかは試してみたいしな」


さらにジークの話を聴いてみれば、他のチームにも大会開催の旨が通達されているという。しかし、レンにしてみればトーナメントの話題はこれが初耳であった。


「そうか、最初から見込みの無いチームには声を掛けないってことか……」


それは彼のチームは端から期待されていないという事の裏返しなのかも知れない。気分が良いものではないが素直に認めなければいけない。未だ自分たちは最底辺にいると。

レンは溜息と共に後頭部を掻きだした。彼はジークの前だと弱い自分を見せることが多々あり、ジークもまた直ぐにそれを悟る。


「気にすんなって。成績関係なく出場権利は誰にでもあるし、出るだけなら金もかからない。それに競技は一対一の勝ち抜きトーナメント形式だ。対戦相手にトラブルが起きれば、勝ち上がれる可能性もある」

「はははは…… このあいだみたいに運が味方してくれればなぁ」

「運は実力。運を味方に付けられただけでも、前回の試験は大したもんだと思うけどな」


ジークの言葉はいつだって彼を肯定してくれる。いつか、一度でいいから一緒に飛んでみたいものだ。レンはジークから大会の詳細が記された資料を土産として受け取り、チームメイトの元へと戻っていった。


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