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33/66

33.やがて訪れる場所にて

翌朝、それもかなり早い時間。

まだ陽が昇りきっておらず、濃い霧に包まれた早朝の街。

今日はレンにとって里帰りの日で、朝から長いこと列車に揺られることになろう。しかし、いくら朝早い時間に発車する列車に乗るとはいえ、夜明け間もないこの時間帯に宿舎を後にするのは早すぎる。加えて、彼が訪れた先は駅とは反対方向にある小高い丘であった。

彼が今まさに登っているこの丘陵は都の少し外れに位置し、国営の墓地が立ち並んでいる。ただでさえ不気味で薄暗い早朝の墓場に今日は視界を覆う霧まで加勢している。

多くの者が好んで近づかないであろうスポットに、レンの姿があった。丘の頂上まで登ったところに設けられていた、霊園の中でも、ひと際広い区画に足を踏み入れた彼。立ち入った区画は広いわりに佇んでいる墓標はたった一つ。


「ここか……」


墓標の前で中腰になり親族の名が刻まれている事を確認すると、朝霧に濡れた芝生上へと腰を下ろす。それから暫く彼は濃い霧の中で無言のまま俯きながら三角座りで固まり続けた。


「一人で逢いに来たのは初めてだったな」


ようやく顔を上げ、心の内を漏らす。誰も聞いていないこの場で、それはあたかも自分に対して言い聞かせるように。


「少しは現実を受け入れる事ができるようになったのかな俺…… いや、受け入れたら学園に入って空を目指す意味も無くなるよな。受け入れきれないから、まだしがみ付いてるんだよ」


レンはどこか悲し気な表情を浮かべ言葉を紡ぐ。やがて風が吹き始め、霧が晴れ始めると徐々に丘の下の景色が澄んでくる。長居は無用のようだ。

彼は少し湿った尻を上げると、この場で最後の言葉を発する。今度は自分に対してではなく、墓標の前に立ち眠る者へと伝えるかのように。


「親父。俺、少しは近づけたよ……」


手元の時計を確認し、頃合いだと知ると墓標へと背を向け歩み出す。朝露で濡れ滑りやすい石畳に注意しながら丘を下っていくと、街の者たちは朝支度を始めていた。一日の始まりを目に、彼は今日が長い一日になりそうなことを予感させる。

――いつまでも神妙な面持ちでなんかいられない。あいつらに気を遣わせるからな。ここからは俺たちの時間だ。切り替えていこう……

レンは手の平で頬を二度弾くと、歩速を上げ中央都市のターミナル駅へと急いだ。


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