12.リーダー改め隊長
何の前触れも無く突然レンとイリスの元にやって来た少女。
彼女の名をカティアという。
レンと変わらない身長に男を引き付けるような胸部の豊かさ。そんな立派な上半身を支える締りの良い脚は黒タイツに被われている。良い意味で目立つ彼女は、他の生徒に紛れたとしても一発で見分けが付きそうなものである。
そんな彼女の加入によりチームは三人大成となった。あと一人を招き入れれば試験への参加資格が手に入るところまできた。
「ところで、ここのチームは誰が隊長なんっすか?」
「隊長? あぁリーダーの事か。そういえば全く意識してこなかったな。人数が揃って無かったし――」
「なら今決めるっす」
「今すぐに?」
「そうっす。あっ、ウチは辞退するんでお二方どうぞ」
人数は揃っていないが、リーダーを決めよう。そして言い出しっぺは早々に棄権を宣言。彼女はイリスが持ち寄った砂糖菓子を噛み砕きながら、リーダーの座を狙う二人の行方を見守る。
思い掛けない流れに困惑するレンとイリスではあるが、確かにチームを束ねる命令系統は必要である。円滑に活動をする為に、というのは勿論である。加え、試験を受ける際にはチームを代表する者が手筈を整えなければならない。
「いいわよ、私がやるわ」
「おっ即決っすね。レンの意見は聞かなくていいんすか?」
話し合いを始めるまでも無く、イリスが名乗りを上げた。そして立ち上がり腰に手を当てながらレンに言い放つ。
「私でいいわよね?」
「異議は無いが、随分と即決だな。こういう役柄好きなのか?」
「好きでは無いけど、あなただって正直やりたくないでしょ? 仮のチームなんだから、別にそれくらい私がやるわ」
無事リーダーの決定を見届けたカティアは笑みを浮かべながら、砂糖菓子を一つまた一つと頬張る。
彼女が更にもう一つ摘まもうとしたところで、イリスが無言で容器を没収する。
「んじゃ、イリスが隊長って事でいいっすね。これからは隊長って呼ばせてもらうっす」
「何度も言うけど仮のチームで仮の立場だからね。それと、さっきから隊長、隊長って何? リーダーと何か違うの?」
「いやリーダーと同義っすけど、なんか『隊長』って呼び名の方がワクワクしませんか?」
「別にしないけど」
イリスは全く共感を示さないようだが、レンの男心は隊長という言葉に反応を示す。彼はそれとなく頷きながら、会話を見届ける。
「そうっすか、残念。でもウチは隊長って呼ばせてもらうんで。リーダーって単語を聞くと前チームのあの人を思い出して、楽しくないっすからね」
「いいわ、好きにして」
「あとそのお菓子もう一つだけ食べていいっすか?」
「いいわ…… ダメよ! これ私が買ってきたやつなんだから!」
「ぶー。ちゃっかりレンも食べてるけど、彼はいいんっすか?」
カティアが夢中になる砂糖菓子、それは如何程の美味しさなのだろうか。カティアが砂糖菓子を共有化したのに乗じて、レンも口へと甘味を運ぶ。イリスが慌てて容器を奪い取り抱きかかえると、我が子を護ろうとする動物の様に二人を威嚇する。
「二人とも食べるの禁止!」
「「ぶー」」




