10.チームメイト募集中
「魔力は極めて優れたエネルギーであり、従来の蒸気機関を置き換えるに十分なポテンシャルを秘めていました。しかし、今日でも蒸気機関が産業の中心であり続ける理由。それは魔力の蓄積が困難だからです。貯めておく、というアプローチが全く不可能な訳ではありません。過去に何度もそのような試みはありました。しかし、容積当たりの魔力蓄積量は微々たるもの。仮に客車を牽引する機関車を魔力で動かそうとした場合、重量にして石炭の一万倍の魔力蓄積物が必要になるといいます。これでは、とても現実的ではありません――」
昼下がりの講義室にて講師の話が続く。学生たるもの座学が重要なのは百も承知だが、どうにも好かない。
チームを組んで暫く。イリスとは実技はもちろん、講義の場も共にすることが増えてきた。いかんせん優秀な者が隣にいるだけで理解の助けにもなるからだ。座学に関して、学年内で彼女の右に出る者は多くない。頼れるチームメイトだ。
自分が講義を聞いていなくとも彼女がなんとかやってくれる。
講義後に要点だけ聞き出せば……
そう思い込むと自然と緊張感が失われ、安心感からか睡魔に襲われることが多々ある。我ながら良くない傾向だと認識している、気を付けよう。
「魔力の蓄積が現実的でない。では代替策として国は、どのような方針を掲げているか。そこ、答えなさい」
講師が大雑把にレンの方へと指差し、考えを問う。咄嗟の指名に、どう答えようかとレンが悩んでいると、すぐ隣にいたイリスが起立し、口を開き始めた。
「一つは魔力を動力としない、新しい動力機関の開発を行う事。二つ目こちらが本命、魔力源である浮遊島を人類の支配下に置く事。殆どが謎とされる浮遊島の調査、解明が飛空士の最大の目的であり、国も多額の資金を投じている。以上」
模範解答を極めて短い言葉で返され、つまらなそうな笑みを浮かべつつも講師は首を縦に振る。
なおも講義は続く。この頃、講義の内容がまるで頭に入ってこない。足切り試験の実施日が迫っているというのに、チームは二人。機体を飛ばせるだけの人数に達していない。そのことばかりが気がかりで、座学に身が入らない。
そんな状態なので、隣で講義を受けているイリスには助けられている。とは言え一見いつも通り直向きに講義を受ける彼女とて、チーム人員が揃わない事に対して焦りを感じていた。
我々は絶賛チームメイト募集中である。




