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001

 特に用事もなく、部屋着にしているジャージを着て寝ている時だった。


「ん?ここ、どこだ?」


 突然、俺は何も無い真っ暗な空間に漂っていた。


 夢の中だろうか?にしては感覚がリアルだ。なんとなく肌寒さを感じる。


 俺が困惑していると、目の前にふよふよと光の玉が飛んできた。


「やっと起きたか。若いのに無駄に寝おって。まったく、けしからん」


 光の玉が突然話したと思ったら説教を始めやがった。


 俺がだらだらとするのが誰の迷惑になるってんだ。余計なお世話だ。そもそも、夢の中でまで説教される筋合いはない。無視安定だな。


「おい!無視か?少し叱っただけで……これだから若いもんは……」


 俺が無視していると今度は嘆きだした。


 忙しい奴だなー。つーか、「若者はこれだから……」とか言う奴よくいるけどさ、もうちょっと一人一人をよく見ろよな。俺はダメかもしれんけど若者だろうがしっかりした奴はいるからな!そういうレッテルを勝手に張り付けて非難することが若者全体の意欲を損なうんだよ!


「ふん!いいもんね、無視してるならこっちだって勝手にやらせてもらうから」


 そうだそうだ。勝手にできるなら最初から一人でやれよな。人の意見を聞いた挙げ句、やっぱりそうじゃないなとか、マジでやめろよ!


「さーて、どの世界にしちゃおっかなー」


 無視を決め込んでいるというのにずっと独り言を呟いていてなんか腹が立ってきた。俺は今寝てるんだからどっか向こうでやってくれないかな……。


「さーて、あらかた決まったわい。おい!お前!これから異世界に行ってもらうからな!」


 ん?なんか凄く大事なことを今さら言い始めた気がするぞ?


「ちょっと待てや。異世界って何?」


「これからお前は勇者となるんじゃ」


「勇者となるんじゃ、じゃねーよ!どういうことか説明しろや!」


「知るか!お前がずっと無視してたから勝手に決めさせてもらったわ」


 これには流石に落ち着いていられない。慌てて光の玉に詰め寄った。


「おい!ふざけんな!夢なんだろ!な?」


「ふん、次に目を覚ませばわかるわ」


 こ、このやろう……。そんな大事なこと勝手に進める?


 俺はとにかく光の玉に向かって文句を言い続けた。


「ええい!うるさいわ!とーっとと眠れぇーー!!」


 光の玉が叫ぶと同時に俺の頭に衝撃が走った。


「つ、杖、だと…?」


 揺らぐ視界の中で宙に浮く杖が確認できた。


 ど、どうなるんだ?俺……。


 そして、そのまま俺は気絶した。




「目覚めよ、勇者!」


 例えるならRPGなんかにでてくる魔王の間、そんな場所に俺はいた。


 目の前には魔王の間に相応しい、魔王のような威圧感のある、頭から二本の角が生えた大男がいた。


 ……やばいな。


 どうやら先程の出来事は夢ではなかったようだ。


「目覚めたか!勇者よ!」


 俺のこと、だよな?


「あ……はい」


「なんだ、随分と気の抜けた返事ではないか。これからこの世界を救わねばいかんというのに」


 いや、定番だけど、いきなり世界救えとか言われても……。


「帰っていいっすか?」


「か、帰るだと!?」


 目の前の大男が凄い勢いで驚いた。


 ……そりゃ、折角勇者が来たのにいきなり帰るとか言えば驚くよな。


 でもさ、こっちだって都合があるんだよ?明日だって普通に学校あるし。


「くそ!勇者だというのになんと気の抜けた奴だ!ええい!もういいわ!こんな奴、牢屋に放り込んでおけ!」


「え?ちょ、ま……」


 大男が叫ぶと、どこからともなく騎士がやって来て俺を拘束した。


「な……!!」


 驚くことに、その騎士には首が無かった。


 ど、どういうことだ?


 まるで魔王のような大男に、首の無い騎士。俺は一体、どういう世界に来ちまったんだーー!?




 予告通り俺は牢屋に入れられた。


 臭いし、汚ない。こんなところ来たくなかった……。今度あの光の玉見つけたらどうにかして苦痛を味わわせてやる!


 それにしても……どうしようか?


「……はぁ」


 俺は一人、暗い牢屋の中でため息をついた。


「……あなた、もしかして勇者!?」


 誰かが俺に話しかけてきた。


 慌てて声の方向を見る。


 どうやら俺一人ではなかったようだ。俺が閉じ込められた牢屋にはもう一人いた。


 しかも、ヤバい……。何がヤバいって超が付くほど可愛い。


 薄暗い中でもわかる。


 真っ白な長い髪に、若干の子どもっぽさを残している強気な赤い目。


 うん、適齢期にはまだ早いかもしれないが今すぐ求婚したいくらいである。決してロリコンではない!断じてない!!


 まあ、どうせ断られるし状況が状況だ。高ぶる気持ちを抑えて冷静に質問をする。


「あんたは?」


「私は……ハクよ」


 少し考えて少女は答えた。


「そうか、俺は蒼也(そうや)だ。……多分勇者なんだと思う」


「ソーヤね。多分って……随分と曖昧ね」


 自信が無いからな。


「それで、ここはどこだ?さっき見た大男とか、ここまで俺を運んできた騎士とか、どう見ても人間じゃなかったんだが」


「ここは元は人間の国だったところよ。今は、ソーヤがさっき見たって言った大男が支配してるけど。で、その大男も騎士も魔族よ」


「人間はどうなったんだ?」


「いないわ。確か、人間は300年前に滅ぼされららしいわ」


 ……嘘だろ!?人間がいないって、じゃあ俺は何のためにこの世界に来たんだよ?


「……帰りたい、帰りたい」


 元の世界に帰りたい。俺は必死に祈った。


「落ち着いて!とにかく、このままじゃソーヤも私も殺されるだけよ。逃げないと!」


 ……それもそうだ。


「わ、わかった」


 元の世界に戻ろうにもまずは殺されないようにしなければならない。俺はハクに賛同した。


「それじゃ、作戦を考えましょ。ソーヤって勇者だけど何ができるの?」


 ……何もできません!

初投稿です。


ここまで読んで下さりありがとうございます。

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