こんなのも悪くは無い
かなり遅くなりました。 これからはちゃんと頑張ります。
「ああ、やっと来たのか。 それで、そっちの人が、ええと」
中津は利明の方を困ったような様子で見た。
きっと名前が分からないんだろう。
「あ、ぼ、僕の名前は森島利明っていいます。 お金はそんなに持っていません。 よろしくお願いします」
利明は緊張していたのだろう。
じゃないと高校生の自己紹介でそんな言葉は出てこないだろう。
いや、大人でもそうか。
中津だけじゃなくてみんなビックリしてるし、俺も驚いた。
「そ、そうか⋯⋯俺は中津正彦。 よろしくな」
「僕は正木康行。 よろしくね」
「はい」
「次は私でいいかな? 私は須磨彩香。 よろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
これでみんな自己紹介も終わった。 利明は中津のとき以外は平気そうだった。 きっもトラウマなんだろう。
俺はそう考えたあと、みんなと一緒にご飯を食べ始めた。
弁当を開けると、利明が覗いてきた。
利明の表情はやっぱりと言いそうな表情だ。
なんでそんな顔するんだろうか?
聞こうと思ったが、いつものことだからやめた。
「はぁ、よく彼女の前でそんな弁当食べれますね」
「別に綾乃は関係ないだろ」
俺の発言がおかしいのか、利明はきょとんとした顔をした。
「関係ないんですか?」
「関係ない⋯⋯よな?」
俺は中津の方を向いて聞いた。
すると、中津は険しい表情だ。
「あるに決まってんだろ。 今から星野さんにこんな自分で申し訳ありませんと謝れ」
「なんでそうなるんだよ⋯⋯」
俺は訳が分からずため息を吐いた。
すると、綾乃がこちらを見ていた。 いや、性格には弁当だろう。
須磨彩香も俺の弁当を見て固まっていた。
それから綾乃は引き攣った表情で、
「そ、その弁当誰が作ったの?」
「これは美沙紀が作ったやつだよ」
「美沙紀って妹の?」
「おう! 美沙紀の料理は絶品だぞ」
「そ、そう⋯⋯」
やはり兄なら妹の自慢をしたいものだろう。
だが、何故か中津と正木、利明がため息を吐いて、呆れてているように見えた。
解せない。
恋人同士では妹や弟の自慢をしないものなのだろうか?
まぁ、考えても仕方のないことだ。
俺はこれを考えないことにした。
「そ、そいえば森島と克也はどうやって知り合ったんだ?」
「あ、それはですね。 克也さんは僕が恐喝されているところを見ていたんです。 それで知り合いまして」
「恐喝されているところを見ていた? 克也⋯⋯お前、助けに入ったんじゃなかったのか?」
中津はそう言って驚いた表情で俺を見た。
責めるような様子はなく、心底驚いたような様子だ。
「ああいや、助けには入ったぞ? ただ間に合わなかっただけだ」
「間に合わなかっただけって⋯⋯お前またグズグズしてたんだろ」
さすがにそう言われると反論したくなる。
「屋上から見えて、着くまで少し時間がかかったんだよ」
「ああ、そういうことか。 てか、屋上から移動したら面倒だろ。 叫べば良かったんじゃねえの?」
「おい、誰が屋上から叫ぶんだよ⋯⋯。 俺にはそんな勇気ないぞ」
「嘘だな。 お前はそれが出来る」
「いや、出来るけどしねぇよ! するのはお前くらいだろ」
俺がそう叫ぶと、中津はやれやれといった感じの仕草をした。
それを見て、少し腹が立つが、いつものことだからスルーする。
「俺もしねえよ? 俺はお前みたいに勇気はねえよ」
「嘘つけ! お前普通に喧嘩してそうな雰囲気あるぞ? ほら、誰も怒らないから本当のことを言ってみ?」
「いや、だから言ってるじゃねえか。 それと、俺は喧嘩なんてしてねえ。 そんなことしたら学校やべぇだろ」
そういえば中津は見た目不良っぽいが、実は真面目で毎日ちゃんと授業を受けている。
「それもそうだな」
「そうだそうだ。 ⋯⋯それに、俺からしたら克也の方が怖いと思うけどな」
「は? なにあからさまな嘘ついてんだよ。 俺は喧嘩してねえし、しねえよ。 なあ、正木?」
俺は喧嘩が好きじゃないし、そんなことはしない。
なのに正木はすぐには否定せず、悩んでいる。
「⋯⋯僕も克也の方が怖いな。 克也は仲のいい人のためならなんでもしそうだし」
「いや、正木。 こいつは仲のいい人だけじゃなく、誰かのためならなんでもしそうだぞ」
「はあ? そんなわけねえだろ。 お前らが困ってても助けねえぞ?」
「いや、そうやってなんだかんだいいながらも、実は助けるんだよな? 分かってる分かってる。 だから、恥ずかしがんなって」
うざい。 殴りたくなるが、ここは理性で我慢だ。
「ああ、確かに土下座して克也様、助けてください、なんて言うなら助けてしまうかもしれないな」
「はん、誰がお前なんかに土下座するか。 お前に土下座するくらいなら、死んでやるって言ってお前に迫って助けてもらうわ」
「おいぃ! それはやめろ。 それはたちが悪すぎるわ! こっちの気持ちも考えやがれ!」
「ふん、なら無駄な抵抗はやめてさっさと諦めるんだな」
「それはそれでなんか違うだろ? なあ正木?」
「そうだよ正彦。 克也はただ僕達に抵抗するふりしてかまって欲しいだけなんだから、そこは大人として付き合ってあげなきゃ」
「そ⋯⋯そうだったのか! それはすまねぇ。 これからはどんどん抵抗していいからな」
なんなんだこいつら。
俺がかまってちゃんで子供みたいじゃないか。
それに、中津と正木は優しげな目で俺を見てくる。 いや、中津と正木だけじゃない。 利明と綾乃と彩香も同じような目で見てくるじゃないか。
くそう利明。
お前なら分かってくれると思っていたのに⋯⋯。
「いらねえよ! ⋯⋯はぁ」
言い返そうかと思ったが、なんだかそんな気分でもなくなった。
どうして二人は俺のことを勘違いしているのだろうか⋯⋯。
「そいえば、克也くんは綾乃のどんなところが好きなの?」
彩香がそう聞いてきた。
表情は少しにやけている。
ほかの面々も気になるようで、みんなこちらを向いている。
はぁ、また同じ質問か。
どうしようか。
ここは真剣に答えるべきなんだろう。
でも、彩香は悪戯っ子のような表情をしていて、綾乃の表情も心做しか焦っているように感じる。
少し違和感を感じるが、気にしてもわからない。
「好きなところ⋯⋯か。 好きなところはやっぱり凄いところ⋯⋯かな。 ほら、なんか憧れるじゃんか。 それに、笑顔も好きだな」
少し恥ずかしいが、恋人役として言わないといけないだろう。
今回は嘘を言っていない。
好きなところ=良いところでもいいだろう。
周りもしらけた感じがしないから今回は疑われずに済むんじゃないだろうか。
でも、男子三人は微妙な表情をしている。
彩香はへぇ、と少し感心したようだ。
綾乃は⋯⋯なんか少し顔を赤くしている。
確かに自分の良いところを話されると、少し恥ずかしい。
きっと、それのせいだろう。
「そうなんだ⋯⋯。 綾乃モテるのにずっと誰とも付き合わないから一生彼氏なんて出来ないんじゃないかと心配だったんだ」
彩香は安心したようにそう言った。
どうやら本気で心配していたらしい。
確かに綾乃は彼氏が出来そうで出来なさそうだった。
きっと周りは安心しているのだろう。
少し罪悪感を感じた。
「妹さんは反対しないんですか?」
利明が疑問に思ったのか聞いてきた。
どうして⋯⋯かはきっと弁当のせいだろう。
みんな弁当を見たら妹のことを聞いてくる。
確かにハートとか入っているが、そんなんで勘違いされては困る。
「なんで反対するんだよ。 それに妹にとっても兄に彼女が出来るのはいい事だろ。 将来家族になるかもしれないんだから」
「はあ? 何言ってんだ。 お前は一生彼女を作らない方が妹にとっては嬉しいだろうが! 」
「おい! 俺は嫌だぞ! 俺は一生童貞なんて嫌だ!」
「何言ってんだ! お前は簡単に童貞卒業出来るだろ!」
「はぁ? 何言ってんだ。 そんなの無理だわ! 誰が付き合ってすぐにやるんだよ!」
「ばか、そっちじゃねえ! 康行もなんか言ってやれ」
康行は中津の言葉に少し悩んだ。
きっといきなり話を振られて困っているんだろう。
「うーん、でも妹さんのことを考えたら彼女を作ったのは正解かもしれないし」
どうやら、あんまり困ってはいなかったらしい。
それにまた訳の分からないことを言い出した。
もっとわかりやすく言って欲しい。
「⋯⋯言われてみればそうだな。 でも、諦めるようには見えないんだよなぁ」
中津はまたよく分からないことを言う。
やはり、中津と正木は通じているようだ。
他の人も興味深そうに聞いていることから、きっと俺以外のみんなは分かるんだろう。
そうすると、俺は馬鹿なんだろうか? もし今ここでみんなにそう言われたら、今日は早退して明日も休む自信がある。
でも、そうすると美沙紀も学校を休むことになる。
俺のことはいい。 だから学校に言ってくれ、と言っても、美沙紀は看病すると言って聞かない。
俺も美沙紀が体調崩したら学校を休むから強くは言えないが、少し申し訳ない。
それを考えると、いい妹を持ったものだと改めて思う。
他の人達に少し同情するが、俺はとりあえず自慢しまくる。
俺の友人達に同情すると後悔することになるため、俺の心は傷つかないが。
「大変なんですね⋯⋯。 でも、少し可愛そうです。 こんな鈍感な兄を持ってしまって⋯⋯」
利明は哀れんだ様子で俺を見た。
本当に同情する価値はないだろう。
そして、訳も分からず同情されるのはなかなか腹が立ってくるものである。
「おい! 何好き勝手言ってんだ。 確かにお前らの話は俺には理解できない。 でも、頭が悪いのを遠回しに貶すのはやめろよな」
「それは無理だな。 もしお前の鈍感なところが治ったら⋯⋯いや、お前はそういう運命だったんだ。 諦めろ」
「おい! 今治ったら許そうとしてただろ! それに、運命なんて言われて引き下がれるかよ」
「お前は運命に逆らうのか⋯⋯。 ならばやってみろ!」
「お前はなんでいきなり格好つけだした! どっかで聞いたような台詞だぞ!」
「まあまあ、そう怒るなって。 ちゃんとかまってやってるんだから」
「お前まだそれ引きずってんのかよ⋯⋯そして俺はかまってちゃんじゃねえ」
「じゃあ反抗期か?」
「俺はお前のなんだ!?」
「親友に決まってんだろ」
「お前にとっての親友ってなんだよ!」
「そんなの友達よりも仲のいい人だろ」
「くぅ、嘘をつくんじゃない!」
「だから、本当のことを言ってるだろ? じゃあ、お前にとっての親友ってなんだよ?」
「そ、それは友達以上の⋯⋯」
「同じじゃねえか」
「い、いや⋯⋯くそう」
言い返せない。
やはり、からかわれるよりもからかう方が好きだ。
次は絶対からかう方にまわってやる。
俺がそう決意していると、周りはそんな俺達の様子を見て笑っていた。
少し悔しいが、こんなのも悪くは無いと思ってしまう。
俺達の昼休みはそんな感じで終わった。
会話を書くの難しいです。 ストーリーとか考えていると、なかなか話が書き出せないです。 申し訳ありません。 言い訳ですけど、小説全然書いていないんです。 慣れるまで許していただきたいです、