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恋人役することになりました  作者: イワヒサ
3/15

噂はしてもされるな

なかなか話が思いつかないです⋯⋯。

「お兄ちゃん⋯⋯そんな嘘ちっとも笑えないよ?」


美沙紀は無表情の顔で俺を睨んだ。

え? なんでそんな怖い顔してるの? 普通兄に恋人出来たら祝うところだよね?


「ほ、本当だぞ? と言っても⋯⋯恋人役だけどな」


俺は美沙紀の様子を伺うように恐る恐ると言った。

美沙紀が怖くてすぐに言ってしまった。


「どういう⋯⋯こと?」


妹は困惑した様子だ。

まぁ、それも当然だろう。

恋人役なんてわけが分からないに決まってる。


「実は今日星野綾乃に告白したんだ」

「え? え? どうして⋯⋯? 訳が分からない。 なんで⋯⋯どうして告白したの!? もしかして綾乃さんのこと好きだったの!?」


美沙紀は困惑した様子から一変して鬼気迫る勢いで叫んだ。

どうしてそんなに怒っているんだろうか? やっぱり兄妹だと、告白するときも言わなければいけないのだろうか?


「どうしたんだよ? それとお兄ちゃんは別に綾乃のことが好きな訳じゃないぞ?」


美沙紀は困惑といった表情で俺を見た。


「どうゆうこと?」

「お兄ちゃんはテストで負けてな。 罰ゲームで綾乃に告白することになっちゃったんだ」


俺がそう言うと、美沙紀は不機嫌そうな様子になった。


「そしたら成功しちゃって恋人役? それならただの恋人じゃん」

「それが違うんだよ。 俺が罰ゲームで告ったのがバレて告白は出来ず終了。 そしたら、毎日告白されて面倒だから恋人役やれって言われてな」


俺は疲れたようにため息を吐きながら言った。

すると、美沙紀は目を丸くした。


「そうなんだ。 でも、断れば良かったんじゃないの?」


俺はやれやれと手を振って、「実はそうしたんだけど、恋人役にならなかったらLimeでみんなに罰ゲームで告白されたと言うわよ⋯⋯とか言われてな」そう言ってため息を吐いた。

美沙紀はなんとも言えない表情をしている。


「もう、何やってるの」

「本当にごめん。 それで、明日から家を早く出ないと行けないんだ。 だから弁当は俺が自分で作るよ?」


そう言うと、美沙紀に睨まれた。

そんなに家事がしたいのかよ!

俺は心の中でそう叫ぶと、何故俺達が家事をしているのだろうかと、ふと思う。

両親は共働きだ。 そのため、ご飯などは作り置きしていた。

だが、美沙紀は家事を手伝うと、すぐに全部自分でやると言い出した。

両親も当時はどうしたものかと困っていたが、美沙紀は予想以上に優秀だった。

親に何事か呟くと、両親はすぐにそれに頷いては美沙紀に任せていた。

そのとき、なんて言ったの?と美沙紀と両親に聞いてもはぐらかされるばかりで分からなかった。

そのまま家事は美沙紀が全て担当することになったのだ⋯⋯。


「お兄ちゃんは家事をしなくてもいい⋯⋯だけどその代わり、これから毎日マッサージして?」

「マッサージ⋯⋯? まぁ、やったことないけど⋯⋯いいぜ。 お兄ちゃんもそれくらいすぐに上達してやるよ」

「本当⋯⋯?」

「おう」

「これから毎日だよ?」

「任せておけ!」


俺がそうやる気満々に答えると、妹はガッツポーズをした。

それから一瞬だが、黒い笑顔を浮かべたように見えたが、気の所為だろう。

俺と美沙紀はそれからご飯を再開した。



俺はご飯を食べたあと、風呂に入ってから自分の部屋で今日買った本を読んでいた。

すると、コンコンとノックする音が聞こえた。

返事をする前にドアは開いて中に美沙紀が入ってきた。


「どうしたんだ?」

「お兄ちゃん、マッサージしてもらいに来た」

「あーそいえばそうだったな」

「もぅ」


美沙紀はなんのためらいもなくベットに寝転がると、うつ伏せになった。

俺はうつ伏せになった美沙紀の腰の上辺りに膝立ちになった。

それからマッサージをすることにした。

これでも、何回か親にマッサージをさせられたことがあり、やり方は少しは分かる。

だが、本当に少しなため、やり方を調べといた方が良いだろう。

そう思いながらやっていると、美沙紀から悩ましい声が聞こえてくる。


「んっ⋯⋯はァ、ゔ⋯⋯あっ、ん」


そんな声に少し理性をやられながらもマッサージをして続けた。

マッサージを終えると、美沙紀は少し頬が赤くして嬉しそうな笑顔で俺を見た。

その笑顔にやったかいが有ったと思った。

だが、それと同時に、何故か俺は頬をかいて視線を別の方向に向けた。


「お兄ちゃん、ありがと。 とっても気持ちよかったよ。 それじゃあまた明日ね」


「おう、おやすみ」


美沙紀は部屋から出ていった。

俺はそれに対して少し寂しく感じた。

それからまた本を読んでから寝た。



「⋯⋯ちゃん、起きて。 今日から早く家を出るんでしょ?」


俺はそんな美沙紀の声で目が覚めた。

美沙紀の声はいつもよりも優しげ感じがした。

俺は目をこすって起きると、いつもよりも目がしょぼしょぼしていた。

そして、なんだか悲しい気分になる。

久しぶりに夢を見た。

だけど、それがどんな夢だったか思い出せない。

それは大切な夢だった気がする。

でも、思い出せない。

俺はスッキリしないが、思い出せないものは仕方ないと割り切ることにして美沙紀を見た。


「お兄ちゃんどうかしたの?」


美沙紀はさっきとは違い、いつも通りだ。


「いや、なんか久しぶりに夢を見たんだ」


すると、一瞬美沙紀が辛そうな表情をした気がするが、すぐに元の表情に戻ったため、気にしないことにした。


「どんな夢だったの?」

「いや、それが思い出せなくてな」

「そうなんだ。 別に思い出さなくてもいいんだじゃない? それに今日は早く家を出るんでしょ?」

「そうだった。 起こしてくれてありがとな」

「別にいつものことだからいいよ」

「いや、それでもな。 いつかは自分で起きれるようになるからな!」


俺は意気込んでそう言った。

そう、俺はめちゃくちゃ朝に弱いのだ。


「お兄ちゃんには無理だよ。それに⋯⋯これからもずっと私が起こすから」


美沙紀が後半言ったことが聞こえなかった。

だが、そのとき黒い笑顔を浮かべていたように見えたが、気の所為だろう。


「美沙紀⋯⋯? ごめん、後半聞こえなかった。」

「ううん、別になんでもない。 それじゃあご飯食べよ。 早く着替えて降りてきてね」


美沙紀はそう言って下に行った。

そのときにハンカチを持っていたのが少し気になったが、すぐに頭の片隅においやられた。

俺はそれから着替えると、降りて行って、いつも通り美沙紀とご飯を食べた。 俺と美沙紀にとってのいつも通りの食事だ。

両親はまだ起きていないようだ。

朝は遅くてもいいようだ。

俺は綾乃の家に向かった。



時間はちょうど良いくらいだろう。

だが、綾乃は見た感じ居ないようだった。

俺は綾乃の家のインターホンを鳴らすことにした。

鳴らしてみると、「はーい、どちらさまですか?」と少し遅れて聞こえた。

俺はそれに自分の名前を言うと、「あら、克也くんだったの。 ちゃんと時間通りにこれて偉いわね」と聞こえて、そっちは偉そうだな!と叫びそうになったが、我慢した。

少しすると、綾乃が出てきた。

やはり美人でこの世は不公平だと思ってしまう。


「さぁ、行きましょ。克也くん」


綾乃は悪戯な笑を浮かべてそう言った。

俺は朝から憂鬱な気分になりながら学校に向かった。

その道中に驚いた顔の人と殺意の篭った目と、親の仇を見るような目で見られまくって気が気ではなかったが、無事に学校に辿り着いた。

俺は本当に刺されるんじゃいか?と思い気が気ではなかった。

教室に入っても、針のむしろで、俺は机に突っ伏した。

教室の中からは自分と綾乃についての会話ばかりだ。

綾乃の方からは「嘘ーっ!」とか、「きゃー」と聞こえてくる。

もう嫌だ。 不登校になろうか? とても怖いんだけど。 男子はなんでそんなに殺意を剥き出しなんだろうか? 俺が刺されたら君たちも疑われるよ?とか言ったらやめてくれるだろうか。

俺のそんな様子を見て、中津と正木はとっても気分が良さそうだ。

他人の不幸は蜜の味と言うし仕方ないのだろうが、それを本人の前で喜ぶのは間違いだろう。


「くそ、俺の気も知らないで⋯⋯」

「良いじゃねえか付き合えたんだし⋯⋯それで美沙紀ちゃんはどんな様子だった?」


中津はワクワクといった様子で聞いてきた。

それに対して、少し引っかかったが、気にしないことにする。


「美沙紀は別に⋯⋯なんかちょっと怖かったけど、納得してくれたよ」


俺の言葉が納得いかないのか訝しんで俺を見ている。


「克也⋯⋯実は言ってないんじゃない?」

「そうか! なるほど、そう言うことか。 それなら納得だ」

「おい! 勝手に納得してんじゃねえ! 俺はちゃんと言ったぞ? まぁ、罰ゲームで告ったとは言ったけど」


俺がそう言うと、二人は「なるほど」と言ったあとに、青ざめた表情をした。


「お、おいまさかだとは思うが⋯⋯その罰ゲーム俺たちとしたとは言ってないよな!?」


中津は焦った様子でそう聞いてきた。


「うーん、どうだったかな? 言ってないけど美沙紀なら分かってると思うけど」


すると、二人は頭を抱え出した。

それから二人はお互いの顔を見合わせた。


「正木、今から克也の妹のとこいくぞ!」

「うん、そうしないと僕達明日には死んでるかもしれないしね」

「おい! やめろ。 それに二人共どうしたんだよ?」


俺がそう言うと、二人は俺を睨んだ。


「お、おいなんだよ?」

「元はと言えば克也が告白成功したのがわりいんだよ。そこんとこ分かってんのか? この鈍感やろう!」

「そうだよ。 克也が妹さんのことを気づいてやればこんな事件にならずに済んだのに」

「はあ? 事件? そんなに俺と綾乃が付き合うのが事件なのかよ!?」


俺がそう叫ぶと、二人は諦めたような仕草をした。


「はぁ、だからダメなんだよ。 美沙紀ちゃんが可哀想に」

「そうだぞ! 反省するんだ」

「だからわけが分からねえよ! 美沙紀がどうしたんだよ?」

「そこは自分で気づかないと⋯⋯そのうち大変なことになるかもよ?」

「そうだ! ちゃんと理解してやれってんだよ」


二人はそう言ったあとに教室から出ていった。

美沙紀が何か困っているのだろうか? まったくわからない。 それを二人は理解しろと言っているんだろうか?

そうして俺はミスを犯した。

二人が謝りに行ったために、後日俺たちが変人だという噂が流れてしまったのは仕方がないことだろう。

俺はその噂を聞いてさらにショックを受けた。

何故か俺は謝りに行っていないのに何故かその噂が三人組になっていたからだ。

だから思う。

噂はしてもされるな、と。

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