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恋人役することになりました  作者: イワヒサ
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綾乃は良い奴だった。

「それじゃあLime交換しましょう」

「ああ、わかった」


綾乃はそう言ってスマホの画面を操作した。

その動作はごく自然で、手慣れている。

それにしても、女子とLimeすることあんまりなかったから緊張するな。

これはあんまりと言うだけで別になかったわけではない。

クラスに一人はいると思われる全員とLimeになりたがる人。

俺はその人と少しLimeした。

あとは妹だ。

一つ下に妹がいて、女子の括りに妹も入っているため、俺は女子がLimeにいないっていうことはない。


「早くしてくれる?」


どうやらお怒りのようだ。

まあ、それも仕方ないだろう。

スマホのLimeを交換しようと言ったのに相手が動き出さないんだから。


「っとと、すまん。 ちょっと考え事してた」

「そう、早くしてね? 私は只でさえ時間が無いんだから」


俺は急ぎめにスマホを出し、Limeを開いた。

これどうやるんだっけ?

俺がそう悩んでいると、綾乃にスマホを取られた。

そのまま、何やら操作してまた返された。

優しいところもあるんだな。

俺はそう思って綾乃を見た。


「ちょっと、そんな目で見ないでくれる? 私がそれをしたのはあなたが遅いからよ。 まあ、そのまま惚れてくれてもいいのよ?」


俺の中の綾乃の評価はかなり下がった。

俺は少しでも綾乃に同情した過去の俺を殴ってやりたくなった。


「はぁ、そうかよ。 精神的に疲れたしもう帰るわ。 それじゃあ」

「何言っているの? 彼女を家まで送り届けるのが普通でしょ?」

「はぁ? 一体どれだけバカップルの普通だよ。 そんなの面倒くさくて嫌だよ」

「もし私が痴漢されたらどうするの? そのまま学校に来なくなったら克也くん。 あなた大変なことになるのよ? 心配じゃないの?」

「そっちの心配かよ! 確かに周りの人達は俺に同情するだろうな!」

「いえ、そっちじゃなくて、まず、最近付き合い出したあなたを疑うんじゃない?」

「おい! そうなったらマジでシャレにならないぞ! マジでやめてくれ。 俺にも将来があるんだ」

「そう⋯⋯なら私を家まで送っていく事ね。 そしてあなたは周りの人達に帰りの道で刺されるといいわ」

「だからシャレにならないって言ってるだろ!? お前も俺が入院したら罪悪感感じるだろ?」

「そうね⋯⋯でも、葬式には出るわ。 だから安心して」

「なにも安心出来ねぇじゃねえか! そんなことになったら化けて出るからな? これは本気だぞ?」

「別に構わない。 どうせあなたが化けて出たところでしょぼい事しか出来ないでしょうし⋯⋯ぷふ」

「やめて⋯⋯本当にやめてくれ! 自分で想像して辛くなってくるだろ! はぁ、疲れたしもう帰ろうぜ? 家まで送っけばいいんだろ?」

「わかってくれたらいいのよ。 そしたら私に告白する人はいなくなるでしょうし」

「はぁ⋯⋯あいつらは今頃呑気にしてんだろうなぁ。 もう罰ゲームありの勝負はやりたくないな」

「ふふ、私は感謝しなきゃね。 それじゃあ行きましょ。 あ、それとこれから恋人役ちゃんとしてね?」

「ああ、分かってるよ」


俺はもう開き直ることにした。

それから俺と綾乃は帰ることにした。

下駄箱に着くと、例の二人がいた。

二人は俺を見てよく分からないと言った表情だ。

まあ、それも当然だろう。

俺も同じ立場ならば絶対同じ反応をする自信がある。


「やぁ、二人とも。 おかげで大変なことになってしまったよ」


二人は困惑した様子だ。

まあ、無理もない。

分からなくて当然だろう。


「は? もしかして告白上手くいったのか? いや、それはねぇか。 危ねぇ。 騙されるところだったぜ」


中津はしたり顔でそう言った。

少し見ていて痛々しい。


「いえ、克也くんの告白を受けましたよ?」

「え? は、はいぃ!? 受けた? どうして?」

「私が受けようと思ったからですよ?」


そう言って綾乃は顎に人差し指を立てて小首を傾げた。

綾乃の性格を知らない人から見たら自然にそうやっているように見えるが、俺から見たらわざとやっているのが分かる。

そして思う。

なんてあざといんだ!

その仕草一つ一つが完璧でかなり可愛く見える。


「嘘·····だろ!? こんな顔だけのシスコンに綾乃さんが·····あぁ、世界は不公平だぁ!」


中津はそう言って絶叫した。

正木も初めは驚いていたが、興味深そうに聞いている。

正木が何故そこまで取り乱さないかと言うと、こいつは二次元にしか興味がないからだ。

そんな正木を普通の人なら可哀想とか思うんだろうが、俺は少し羨ましい。

俺には熱中できることがないからだ。

近いものならゲームと読書だが、それはすることが他に無いからだ。

それに、ないものを欲しがるのはみんな同じだろう。


「あ、俺綾乃を送っていくことになったから一緒に帰れないわ。 待っててくれたのにすまんな」


俺は二人に謝った。

正直二人と帰れないのは少し寂しいが仕方ないだろう。

綾乃さんは俺たちとは帰る方向が違う。


「くそう! 俺よりお前が先にリア充になるのかよ。 妹になんて言われても知らねえからな」

「どうしてそこで妹が出てくるんだよ」


すると、中津と正木は呆れた様子で俺を見た。


「お前妹のこと好きだろ?」

「はぁ? 仲が悪い兄妹ばかりじゃないだろ?」

「別にそういう意味で言ったわけじゃねぇよ」

「克也は少しどころじゃなく仲が良すぎなんだよ」

「そうか? でもそう言ってもらえると嬉しいな」


すると二人はやれやれとして諦めたようだ。

綾乃はそんな会話を興味深そうに聞いていた。


「これじゃあ妹さんが可哀想だね」

「あぁ、本当にな」

「でも、あの妹さん諦めそうに見えないんだよね」

「あぁ、そのうち監禁とかしそうだな」

「それは⋯⋯うん、ありえるね」

「おい! 人の妹をそれ以上悪く言うな! それ以上言うなら兄として抗議するぞ!」

「それは⋯⋯本当にやめろ! お前のは抗議なんかじゃなく、ただの惚気話だ」


中津は本当に嫌そうにそう言った。


「何を言っているんだ。 兄が妹を褒めるのは当然だろう」

「その兄としてがよく分からないよ⋯⋯」


正木は疲れたようにそう言った。


「はぁ⋯⋯正木、そこのシスコンは放っておいて、俺達は帰ろうぜ。 このまま行けばどうせすぐに別れるだろ」

「それもそうだね。 じゃあ、また明日ね」

「おう。 また明日な」

「克也またなー。 明日会えるといいな」


中津と正木はそう言って帰って行った。


「それじゃ、俺達も帰ろうぜ」

「えぇ、そうね」


綾乃の俺を見る目は少し微妙そうな感じだった。



綾乃の家は俺の家から少し遠かった。

学校を出て、少し先までは一緒だったんだが、俺の家の方とは違う方向に曲がった。 それからついて行くと、駅の近くに家があった。

そこに着くまでに少しかかったが、そこまで遠いという感じはしなかった。

これは、綾乃と話していたのも関係しているかもしれないが。

人と話していると、時間は結構経っているものだ。


「ここまで送ってくれて感謝するわ。 まぁ、毎日行きと帰りに来てもらうけど」

「まぁ、もう気にしてないからいいや。 それに、綾乃と話すのは意外に楽しかったからな」


俺がそう言うと、綾乃は意外だったのか少し目を見開いて頬を赤らめた。


「そ、そう? んんっ、まぁ光栄に思うことね。 私とこれからも話すことが出来るんだから。」


綾乃は偉そうにそう言った。

その様子が少し照れ隠しに見えた。


「へへぇー、感謝します。 それじゃ、また明日·····と言うか、俺朝もここ来るのかよ!」

「えぇ、もちろんよ。 時間は7時50分よ。 遅れたら私も遅れるんだから注目されるわよ? だからちゃんと来てね? 来ないと学校行かないから」

「なんでだよ! 子供か? お前は子供のなのか?」

「私が子供に見えるのかしら? そんな克也くんは眼科に行くことをおすすめするわ」

「ねぇ、なんで!? なんで俺が悪いみたいなことになってるの?」

「そんなの自然の摂理に決まっているじゃない。 そんなことも分からないの? 」

「ねぇ、待って。 俺ってそんな可哀想なやつだったの!? 初めて知ったよ!」

「あら、良かったじゃない。 これでまた一歩子供から大人に近づいたわ」

「あれ? あれれれー? いつから俺は子供に退化したのかな? てか、まだ根に持ってたのかよ!?」

「私はこれでもやられたことはやり返さないと気が済まないのよ。 私を子供呼ばわりしたなら子供になって貰わなくちゃ気が済まないわ」

「ちょっと? もうそれわけがわからないよ! どっかの悪い魔法使い? 根に持ちすぎじゃないかな?」


俺がそう言うと、綾乃はクスクスと笑った。

その笑顔はとても魅力的で心を惹き付けられた。

普通の男子ならとっくに心を鷲掴みにされている事だろう。

だが、俺には可愛い可愛い妹がいるのだ。

それの耐性はある。


「今日は本当にありがとうね。 それじゃ私はそろそろ家に帰るわ」

「おう、またな」


俺はそう言うと、近くにある本屋に向かった。

ここの近くにはゲーセンや本屋、カラオケなどがあり、よく来る場所だ。

本屋に入ると、面白そうな本を探す。

家で読む本を決めると、立ち読みして別の本を読む。

どうせ家に帰ってもテストは終わったばかりだしすることと言えばゲームか読書くらいだ。

なら、ここでしばらく読んでいても良いだろう。

しばらく読んでいると、7時を回っていた。

俺は暗くなっているのを確認して少し足早に家に帰ることにした。

季節は夏だ。

と言っても、六月に入ったばかりのため、暗くなるのは早い。

俺は買った本を読むのを楽しみにしながら帰った。



「おかえり〜お兄ちゃん。 帰るの遅かったね? またカラオケ?」


リビングに入ると、妹の美沙紀がそう言った。

妹の美沙紀は俺の一つ下で美少女だ。

妹が美少女なのか聞けば十人に聞けば十人とも美少女と答えるだろう。

別に妹だからと贔屓している訳では無い。

単純にそれが事実だからだ。

それに加えて家事まで出来る。

両親は共働きで家に居ないため、俺と美沙紀で家事をしている。

と言っても、ほとんど妹がやるのだが·····。

俺がやると言っても、私がやる!と言い張るため、もう任せることにした。


「いや、本屋に寄ってたんだよ」

「そうなんだ。 あ、ご飯出来てるよ? 風呂も湧いてるけど、先にどっちにする?」

「先にご飯にするよ」

「うん、わかった。 それとお兄ちゃん。 ちゃんと手洗ってからね」

「おう、当たり前だろ?」


美沙紀はてきぱきと動いた。

手慣れた動作で俺からカバンを取って弁当箱を出した。

まるで夫婦のような光景だが、俺はそれを兄妹ならば普通だと思っており、おかしいことに気づかない。

これは半分美沙紀のせいでもあった。


俺は手を洗ってからリビングに行くとそのまま美沙紀が来るのを待った。

美沙紀は必ずと言っていいほど俺の時間に合わせてご飯を食べる。

だからありがたいのだが、遅くなると少し申し訳なく感じる。


「お待たせー。 お兄ちゃん、食べよっか」

「そうだな。 いただきます」

「うんうん、召し上がれー。 あ、お兄ちゃん、このスープ結構自信作なんだ。 はい、あーん」


そう言ってスープの入ったスプーンをなんの躊躇いもなく差し出した。

俺はそれに躊躇いなく、口を付けた。

この時点でおかしいだろう。

だが、そのことに俺は気づかない。

これの理由も美沙紀にあるだろう。

それは、美沙紀が小学四年生の時だ。


「お兄ちゃん。 はい、あーんして?」

「なんでだよ? それじゃ恋人みたいじゃんか」

「そんなことないよ、兄妹なら普通だよ?」

「そ、そんなことないだろ」

「本当だよ? 私の友達してるって言ってたもん」

「う、うそだあ」

「本当だよ? お兄ちゃんは美沙紀を信じてくれないの?」


美沙紀はそう言って潤んだ瞳で俺を見た。


「うう、でもお」

「もしかしてお兄ちゃん恥ずかしいの? 兄妹なのに? それとも·····お兄ちゃんは美沙紀が嫌い?」


そう言って泣きそうな顔で俺を見つめた。

それに対して、両親が俺の事をじっと見た。

それには無言の圧力があり、当時小学五年生の俺にも理解出来た。

そのため、俺は渋々口を差し出した。

すると、美沙紀の表情は一変してニコニコとなった。

その時からだろう。

美沙紀がよくそれをするようになったのは。


「はい、あーん。 ふふ、ありがとう。 お兄ちゃん」


その時に妹が悪戯な笑みを浮かべたように見えたのは気のせいだろう。

俺はもう何も考えないことにした。

それから少しづつ俺は美沙紀兄妹について教えられた。

その様子を両親がなんとも言えない顔で見ていたのは仕方のない事だろう。

それと、一度友達は兄妹でそんなことしてないみたいだよ?と言ったら、たまにはそんな家もあると言ってから、自分の事を棚に上げてよその家はよその家だよ!って叱られた。

意外にそれがしんどかったため、兄妹について妹にとやかく言うのはやめた。



「お兄ちゃん、どうかしたの?」


少し思い出に浸っていたため、食事が進んでいなかった。

俺はここでちょうど良いと思い、綾乃の事を言うことにした。


「そいえば俺、彼女出来たんだぜ!」


俺がそう言った瞬間に美沙紀はスプーンを落とした。

恋愛系慣れてなくてかなり大変でした!

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