王様ゲーム1
最近寒いですね。 体調は大丈夫ですか? 僕は風邪引きました⋯⋯。
休日。
それは、学生が生きる上で絶対に必要なものだ。
もしなくてもいい、なんて言えるやつはエイリアン、もしくは現代の人間ではないのどちらかだろう。
何を大袈裟な! なんて思うかもしれないが、人は一度知った幸福からは抜け出せないものだ。
5.6日間頑張って1日楽ができる。
あぁ、なんて出来たルールなんだろうか!
そんなことを考えながら、俺は今ベットの上で幸せを噛み締めていた。
というのも、二度寝したからだ。
二度寝は最高だ。
時間が勿体ない、なんて思うかもしれないが、普段学校があることによって寝れない時間まで寝るというのは最高なのだ。
これには美沙紀も理解してくれた。
美沙紀はよく出来た妹なので、俺を一度は起こすが、俺が嫌そうに起きようとすると、寝ててもいいよ、と言って一緒に眠ってくれるのだ。
きっと一緒に寝るのは俺に罪悪感を与えないためなんだろう。
毎週起こしに来る時に寝巻きで枕を持ってきているのもそうなんだろう。
俺が二度寝せずに起きようとすると、俺に二度寝させようとするのも優しさなんだろう。
俺は美沙紀が寝ているのを見て、なんだか後ろめたさを感じた。
こう、なんだかやってはいけないことをしている気がするのだ。
何を今更、なんて思うかもしれないが、感じてしまうものは仕方がない。
だけど、それを美沙紀に言うと、まさか妹をそんな目で見ていたの? と思われそうで無理だし、遠回しに言っても美沙紀が譲ってくれない。
仲のいい兄妹はこんなにも苦労しているのだろうか? もしかしたら、兄妹で仲が悪いのはこうゆうのも関係しているのかもしれない。
正木の貸してくれるラノベでは、ヒロインに彼氏が! と主人公が嫉妬するシーンで、実は兄妹でしたなんていうのもよく見かける。
やはり、美沙紀とは距離を開けた方がいいのかもしれない。
美沙紀にも彼氏ができるかもしれない。
俺がその邪魔になるかもしれないからだ。
だが、もし美沙紀に彼氏が出来たならば、俺はその彼氏に向かって、美沙紀と付き合いたければ成績を言え! と叫ぶことだろう。
そして、勇気を試すために中津と正木に絡んでもらおうではないか。
正木は怖くないかもしれないが、中津は別格だ。
普通に悪役としてドラマに出てきそうだ。
だが、やはり中津が突破されたときの保険に裏ボスを用意しておく必要があるだろう。
それは今後じっくり考えるとして⋯⋯。
俺は美沙紀の寝顔をじっくりと見る。
やはり美沙紀は可愛い。
なのになぜ未だに彼氏が出来ないんだろうか?
まぁ、綾乃も出来ていなかったし、もしかしたら好きな人がいないのかもしれない。
俺としてはそれで嬉しいのだが、兄としては複雑だ。
俺はゆっくりと頭を撫でる。
すると、美沙紀の口元がニヤけた。
かわいい。
くぅー、こんな可愛い妹を誰かにやるなんて無理だ。
そう、これはまるで、捨て犬を拾ったときのような感じだ。
家では飼えないから⋯⋯と思っていると、知人の誰かが飼うと言い出し、それを渋々渡す時のような心境ではないだろうか。
それが犬のためなのだが、それが納得できないあれ。
まぁそんなことはいいとして、俺は今、美沙紀が起きているんではないかと疑っていた。
なんと、俺が動いたことによって空いたスペースを、美沙紀が少しずつ詰めてきているのだ。
その移動は少しずつで気づきにくいが、気づいてしまえば不自然さに気づける。
だが、それがまた嬉しく感じる。
なんて可愛い妹なのだろうか!
俺はそんなことを思いながら抱きしめた。
これは、この家の習慣と言っていいだろう。
俺は昼食の時間までだらだらしているのだった⋯⋯。
ピンポーン
椅子に座ってテレビを見ていると、そんな音が聞こえた。
どうやら誰か来たようだ。
俺は玄関に行ってドアを開けると、そこには正木と中津が立っていた。
「よっ、遊びに来たぜ」
「はぁ、来るなら事前に言っておけよ」
「どうせ暇だったろ?」
「まあそうだけど」
「なら良いじゃねぇか。 で、お邪魔してもいいか?」
「家まで来て断る訳ないだろ」
「そうだな。 いや、それだけじゃなくて、美沙紀ちゃんとイチャイチャしてたんだろ? 邪魔してもいいのか?」
中津が訳の分からないことを言い出した。
家に来る度にそんなことを言うから、もうそれの意味を考えるのも面倒だ。
「別にイチャイチャしてねぇよ。 それは美沙紀に対しても失礼だろ」
「そうか? そんなこともないと思うがなぁ」
「はぁ、やっぱり兄妹で仲が良いのはおかしいのか。 これからは少し距離を開けることにするよ」
すると、中津は慌てだした。
「あぁいや、気にすることねぇよ。 だからお前はいつも通り⋯⋯ひぃ!」
中津がいきなり怯えだした。
情緒不安定なのだろうか?
そんなことを思っていると、中津が俺の後ろを見ていることに気づいた。
俺も後ろを向くと、そこには笑顔の美沙紀が立っていた。
「はぁ、人の妹を見て怯えるなんて失礼だぞ⋯⋯。 何をそんなに怯えているんだか⋯⋯」
「あ、いや、別に怯えてるわけじゃねぇよ。 そ、それよりも美沙紀ちゃんも交えてゲームなんてどうだ?」
「ゲーム? まぁいいが、美沙紀はゲーム弱いぞ?」
本人は気づいていないが、ゲームが弱いのは克也の方だったりもする。 美沙紀は克也のためにわざと弱いふりもしている。
「きっと克也の想像しているゲームじゃないよ。 僕達がやるのは王様ゲームだよ」
正木がそう言った。
どうやら二人は事前に決めていたようだ。
「お兄ちゃん! 私もやりたい!」
「お、おう。 なんで王様ゲームをやろうと思ったのかは知らねぇがやるか。 とりあえず家に上がってくれ」
俺は中津と正木を家に招き入れた。
その際、美沙紀が黒い笑顔を浮かべているように見えたが、気の所為だろう。
「ルールを説明するよ。 みんなは僕の手にある割り箸をそれぞれ一本ずつ取ってね。 それから後ろを向いて十秒間目をつぶってね。 そしたら王様が番号を指定して何かを命令する。 わかった?」
正木はそう言った。
かなり簡単なルールで、何を命令するかだけ考えておけばいいだろう。
俺が躊躇い無く頷くと、三人が黒い笑顔を浮かべていた気がするが気の所為⋯⋯だよな?
「それじゃあ、一本ずつ取ってね」
俺は言われた通り割り箸を取ると、後ろを向いて割り箸をよく見る。
下の方に番号が書いてあり、2番だった。
俺はそれを確認すると、目をつぶった。
それから十秒数えて振り返る。
割り箸の番号は、ちゃんと見えないようにだ。
「王様は俺だぜ!」
中津は自信満々にそう言った。
なんてことだ。
中津の命令なんて聞きたくない。
中津が王様の国になんて住みたくないし、命令されるくらいなら逃亡してやろう、とすら思えてくる。
だが、これはゲームだ。
従うしかないだろう。
「それじゃあ」
中津は俺の方をニヤリと笑って見てきた。
なんだか嫌な予感がする。
「二番のやつは、今までで一番恥ずかしい事を言え」
「あぁ? 俺じゃねぇか! 一番恥ずかしいこと?」
「おう。 なんでもいいぞ? 思い出せる範囲でいい」
「うーん、そうだなぁ。 あれは中学二年生くらいの事だったな」
俺はちらりと美沙紀を見る。
他の三人はワクワクといった様子だ。
そんなに期待されてもな⋯⋯。
俺は苦笑いを浮かべると、
「美沙紀と待ち合わせをしていて、美沙紀だと思ってハグしたら違う人だったんだよ」
俺はたはは、と笑いながらそう言った。
すると、場の空気は凍りついた。
本日もお読みいただきありがとうございました。
今回は少し長くなるかもしれなかったので、2回に分けさせていただきました。 と言っても、その理由が前半に長ったらしく書いてたせいなので、とても後悔しております。 消すのは勿体ないし、だからと言って長くなるのは⋯⋯ってことで、単純に僕の実力不足ですね。
次回もお読みいただければ嬉しいです。
今後も気軽にお読みいただければ幸いです。




