良いところもあるようだ
今回も短いです。
俺は教室でぼーっとしていると、綾乃はやってきた。
「お、やっと来たか。 それじゃ帰ろうぜ」
俺は教室から出ようとドアに向かったが、綾乃は動かなかった。
どうしたんだろうか?
俺は疑問に思って足を止めた。
「田巻克也くん」
「はぁ、どうしたんだよ。 そんな他人行儀な呼び方して。 なんだ? もしかして何か悪いことが⋯⋯?」
俺が聞くと。綾乃は首を振った。
その表情は真剣で、自然と気が引き締まった。
「いえ、あなたにとっていいことよ。 ⋯⋯恋人役はもういいわ」
「は? へ? またどうして?」
「だって私には必要なかったもの。 だってそうでしょう? 告白されるよりもあなたと四六時中一緒にいる方がよっぽど疲れるもの」
うっ、なんかとても酷いことを言われた。
俺と一緒にいるのはそんなに疲れるのだろうか? まぁ本人がそう感じてるなら仕方ないか。
「そ、そうか⋯⋯」
「くすっ、どうしたのよ? もしかして恋人役でも彼女になれたのがそんなに嬉しかったの? ごめんなさいね。 あなたとは付き合えないわ」
綾乃がいつも通りからかってきた。
しかし、それに突っかかろうとは思えなかった。
「別にそうじゃねぇよ。 ただ、もう綾乃とは話せなくなるのかと思ったらな」
すると、綾乃はキョトンとした様子で俺を見た。
「べ、別に話せ⋯⋯、そうね。 でもいいじゃない。 元に戻るだけ。 私たちは元々話すこともなかったんだし」
確かにそうだ。
でも、でもだ。 仲が良くなった人に、いきなり絶交するなんて言われても、理解はできても納得できない。
だけど、綾乃が俺にそういったのには理由があるんだろう。
ならば、それを断る訳にはいかない。
「⋯⋯そうだな」
それから沈黙が訪れる。
すると、綾乃は微笑みを浮かべて、
「本当に短い間だったけど楽しかった。 あなたには感謝しているのよ?」
「ああ、俺もなんだかんだ楽しかったよ。 滅多に味わえない体験も味わえたからな」
俺がそう言うと、綾乃は後ろを向いた。
「⋯⋯そう。 変わっているわね。 それじゃあさようなら。 ⋯⋯それと、本当にごめんなさい」
綾乃はそう言うと歩いていった。
そして、その声からは申し訳なさを感じた。
俺は綾乃が歩いていってからもその場を動けなかった。
綾乃が謝っているのを聞くのは初めてだ。
本人は俺に伝える気はなかったのかもしれない。
だけど、俺には聞こえた。
人の居ない学校はかなり静かだ。
だから、呟き程度の言葉も意外に聞こえてしまう。
これでよかったんだろうか? よくはないかもしれない。
綾乃とは学校で話さなくなるかもしれない。
でも、仕方がない。
綾乃が俺と話したくないなら話すことはないだろう。
「追わないんすか?」
すると、いきなり現れた、昨日のホモ疑惑男が聞いてきた。
「昨日のホモ疑惑男か⋯⋯。 どうして追うんだよ?」
「⋯⋯ちょっと待ちません? それ俺のことっすか?」
俺は躊躇い無く頷く。
「もちろん。 それ以外に誰がいるんだ? 親御さんも心配するから病院言った方がいいんじゃない?」
「ちょっと待ってくださいよ! 変な名前で呼ばれたら、聞き返すに決まってるじゃないっすか!」
「決まってはないんじゃね?」
「下手したらマジレスはもっとダメかもしれないっすよ?」
俺はホモ疑惑男を軽蔑した目で見ると、やれやれと手を振った。
「いちいち細けぇな。 だから振られたんじゃないのかよ?」
「今振られたとか関係ないじゃないですか! はぁ、雰囲気台無しじゃないっすか。 そんなことよりも、追わなくていいんですか?」
「だからどうしてだよ?」
「綾乃さんとかさあなたの会話は聞いたっす」
俺は無言で蔑んだ視線を向ける。
ホモ疑惑男は咳払いすると、
「綾乃さんも、こんなの望んでないと思うんす」
「⋯⋯どういうことだ?」
「実は⋯⋯」
ホモ疑惑男の説明をまとめると、こうだった。
昨日のことを俺に謝ろうと待っていると、綾乃がどこかに行くのが見えて、こっそりついて行くと、とびきり可愛い下級生がいた。(もちろんそのときに蔑んだ視線を向けた)
こっそりと様子を窺うと(またも向けた)、俺に昨日渡した、脅迫文の書かれた紙を下級生の女の子が綾乃に見せ、責めていたそうだ。
それを書いたのは自分だと言って、止めに入ろうとしたが、その女の子から命の危機を感じて動けなくなったそうだ。
それからまた綾乃のあとを付けて、廊下で盗み聞きしていたようだ。
まあ、何が言いたいかというと⋯⋯
「全部最低変態男のせいだな」
「あはは⋯⋯滅相もないっす」
「そうか。 それで、もう一つ気になるんだが」
「はい、なんっすか?」
「その喋り方はなんだ?」
そう、ずっと気になっていたのだ。
昨日はこんな喋り方じゃなかったはず。
「実は、昨日あなたの言葉を聞いて俺も反省したんす。 それで今日の朝目覚めたらこんな口調になっていて⋯⋯」
なんだか本能的な恐怖を感じる。
絶対に触れてはいけない何かをそこから感じてしまった。
「そ、そうか。 まぁいいや。 今から綾乃に会ってくる」
「そうしてくださいっす」
「⋯⋯でもいいのかよ?」
「何がっすか?」
「だってお前、綾乃のこと好きなんだろ?」
「それは好きっすけど⋯⋯」
最低変態男は苦笑いを浮かべて、
「今の俺じゃあ釣り合わないっすよ」
「そんなことはないと⋯⋯」
「そうっすよ。 でもいいんす。 昨日言ってくれたじゃないですか。 だからいいんす」
「そうか」
「はい。 だから行ってくれっす。 早くしないと家に着いちゃうっすよ?」
「おう。 ⋯⋯お前のその喋り方チャラ男そのものだな」
俺はそう言って、逃げるように走った。
「そんなのわかってるっすよー!!!」
後ろからは変態男の叫び声が聞こえる。
俺はそんな声を聞きながら思った。
あいつにもいい所あるじゃねぇか。
なんかキリが悪くて短くなっちゃいました。 シリアスなシーン書くの苦手でつい逃げてしまいます。 次からは逃げないよう頑張りたいです!




