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絵本の中へ  作者: ジパング大柴
第2章 3匹の子豚
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第4話 いじめを止めろ!

その日、夕日で紅色に染まる図書室で僕は見た。いじめの現場を…。


 僕は、でかいダンボール箱3個を持って図書室に向かい、廊下を歩いていた。ダンボール箱の中には絵本を大量に入れる予定だ。

 それはそうと最近、クラスメイトの人によく話しかけられる様になった(1日に数回程度だけれども)。話しかけられても大体「名前なんだっけ?」から会話が始まるが、全然嬉しい。これは僕にとっては大きな進歩だ。昔は名前を聞かれるどころか、ちゃんと学校に登校していたのに先生が名前を呼び忘れ、一ヶ月休んだ事になって成績に響きそうになった事もあった。

 だが、問題は返事の仕方だ。僕の場合会話にまだ慣れてないから、返事がしっちゃかめっちゃかになってしまうことがある。これは致命的だよな… そんな事を考えながら廊下を歩いていると、図書室に着いた。  

 図書室の中は紅色に染まっている。ここはちょうど夕焼けが窓から綺麗にさす場所だ。

 梅雨時になると、雨の後に、まるで仏の後光の様な夕焼けが見えることがある。高校内のカップルの間で人気のデートスポットだ(多分)。 中に入ろうと、スライド式のドアを開けると、奥の本棚で人影が大きく揺れた。  

 「誰か来やがった!」

 「今日はここまでにしてやるよ」

 自分の横を人影を通る。後ろを振り向いたが、その時にはもう顔が見えなくなっていた。

 「?」何をしていたんだろう?人に見られてはまずいのか?頭にハテナマークしか浮かばない。

 まあ、とりあえず絵本を集めるか…と思い前を向き、もう一歩足を出した時だった。

 前には割れたメガネをかけている“同級生”らしき人が泣いていた。


 よく姿を見ると、同級生らしき人というのは、隣のクラスの“倉間孝”だった。読みは “くらまこう”。特徴はモジモジしてる様子と、メガネをかけている所。彼は頭が良くて、テストの順位はいつも150位中10位内(僕の高校は田舎の割に結構生徒が多い) 。

 とりあえず彼の話を聞くために床に座った。

 「大丈夫?ハンカチいる?」

 孝くんは泣きながら頷き、ハンカチを受け取るとビュヴヴヴヴと鼻水まで出して涙を拭いた。

 (意外と容赦ないな…)

 僕は彼の鼻水のついたハンカチを受け取りバッグにしまう。涙が止まったらしく、僕もそれに合わせて質問する。

 「こんなこと聞くのは申し訳ないけど、何があったの?」 

 「・・・。」

 長い沈黙。気まずい。

 「おにぎり食べる?」

 僕は彼におにぎりを差し出す。彼は頷いて、おにぎりを手に取るとすぐさま食べた。

 今日、朝飯が多くて昼飯のおにぎりを一つ余してしまったから丁度よかった。彼はおにぎりを食べ終わると、か細い声で「ありがとう…ございます」と言って訳を話してくれた。

 「さっき、あなたの横を走っていった人達がいたでしょう?髪がボサボサしてる人が、香、髪が長い人は山人、 この人達に実は、いじめられていて。」

 「!?なんで・・・。」

 「僕、いつも10位内に入っていますけど昔から発表というか、自分の意見を人に言えなくて・・・多分彼らはそこを面白がっていじめてくるんだと思います。」

 酷い!そんなことを・・・。

 「許せない!じゃあ僕が喝をいれれば?」

 「ちょっと待ってください!」

 彼は続けて言う。

 「今日も弁当をトイレに流されたり、僕の書いた課題に落書きしたり、放課後はさっきみたいに図書室で蹴ってきたり、その度に彼らは言うんです。『なんか言い返せよ』って。やり返すのは気が向かないけど、僕もしっかりと気持ちを伝えたい。けどチャンスがなくて…」

 そっか。何か協力してあげたいなあ、そんなことを考えていると彼は立ち上がり

 「話、聞いてくれてありがとうございました・・・。」

 と一言言うと図書室を出て、帰ってしまった。 

 僕はやるせない気持ちを抱えたまま、絵本を本棚から集めて箱に入れ、部室に行くことにした。


 部室のドアを開くと、そこには部長“赤島開”がいた。

 「おっはよーう。」

 「今もう夕方なんですけど。」

 「おっ仕事済んだのか!ありがとう!」

 いつも通り、部長はニコニコしている。が、僕の顔を見てどうやら何かありそうと思ったらしく「随分時間がかかったが、何かあったのか?」と聞いてきた。僕は、さっきあったことを話した。

 「実は…」

 話の一部始終を話し終えると部長は真面目な顔をしながら「ふーん…で、君はなにがしたいの?」と聞いてきた。

 「助けてあげたいです」

と僕が言うと、

 「だよねー」

と部長はうなづいた。

 「俺も助けてあげたいけど、その孝くんは、自分で気持ちを伝えたいと言ってるわけだ。本人が自力で乗り越えようとしてる時に、あからさまに手を差し伸べちゃうのはアレだよねー。」

 部長は、うーんと唸りながら5分ほど腕を組んで悩んだ。僕も合わせて5分ほど待つ。すると部長の顔がひらめいた顔になり、今にもピッコーンと音が鳴り出しそうな顔で僕に言った。

 「名案を思いついた!」

 次の日の放課後、僕は図書室にある本を抱えながら向かった。今日は、部長が思いついた名案を披露する日だ。今回もこれまた大きい役を担う事になるので少し不安だ。

  図書室に着く。まだ夕焼けは見えない時間帯だ。そしてドアを開くと、ちょうどそこには“むなぐらを掴まれた孝くんといじめている二人”がいた。

 「昨日の…人!」

 驚いた顔で孝くんは言う。二人は僕に気づき、孝くんのむなぐらを掴むのを止めた。「昨日もここに来やがった奴だな…お前?」

 二人は自分の方に近づいてくる。計画通りだ。そして二人が僕に殴りかかろうとした瞬間、僕は絵本を開いた。

 「なんだァ、そりゃ?」

 「絵本!?」

 僕を含む四人は眩しい光に包まれ、気を失った。



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