第22話 種の弓と絵本白書
もう1時間は経ったかな・・・。僕と桐さんは、無我夢中で山原市を駆け回るジキルとハイドを追っていた。
凛子と鹿ノ子は、路地で待機してもらうことになった。
追いかけっこのルールは簡単。ジキルとハイドを絶対逃がさず、捕まえたら神器を返してくれる。そして、ジキルとハイドに追いつけるように僕は、能力を使って“きびだんご”を食べて体を強化。桐さんは、能力で鬼にとなって本気でジキルとハイドを追いかけた。
だけど一向に捕まえられない!ジキルとハイドは、逃げ方がとてもうまいのだ。
と思うと、前から思いっきり青いゴミ箱が飛びかかって来た。僕らは難なくゴミ箱をかわすけど、普段のままならかわせないだろう。
「やられっぱなしはまずい・・・」
並走する桐さんが呟く。
ジキルとハイドは通る道にある、様々な物を投げてくる。投げて来た物に反応している間に、ニュルッと方向を変えて惑わしてくる。
現在、商店街にある店舗の屋上を通過中。
まるで、ウサギのような足さばきで追いつこうとする僕らは距離を置かれるばかりだ。スタートラインをもう、5周くらいしている気がする。
そう思った瞬間、目の前からジキルとハイドが消えた。どういうことだ!?
まるで走馬灯でも流れるように、理解した状況が言葉として脳に流れる。
「うっかり路地の隙間に落ちたんだ!」
僕らにもやっとチャンスが来た!と思っていた。
僕は一気に駆けて、並走していた桐さんを追い越した。そして店の屋上の淵から身を乗り出して、路地の隙間を見た。
路地の隙間には、僕に標準を合わせて弓を引きながら、路地に落ちるジキルが見えた。
「知ってるか?“種の弓”には、黒曜石を貫くほどのパワーがあるんだぜ!」
ジキルの持つ弓から、矢が飛び出た。僕めがけて一直線に飛んでくる。
僕の頭は、完全な走馬灯が見えていた。
(影だって、やっと濃くなり始めたっていうのに・・・ああ、これまでありがとうねみんな!)
しかし、完全に手を合わせ拝んでいたと思っていた脳と裏腹に、目の前めがけて、手は振りかぶる体制に入っていた。意識が戻る。
「うあああっ!!」
僕は無意識に“狼の手”を呼び出して、貫かせることなく、矢の真ん中を掴むことができた。パワー、毛の抵抗、そして無意識下に立たされていなければ危なかっただろう。
落ちたはずのジキルが、浮遊するハイドにつかまりながら下から上がって来た。そして、僕を指差しながら悔しそうに言った。
「矢を掴むなんざ、随分勇気があるんだな!まあいい。矢だけ取れても、弓と白書は渡してないからな!」
ほろっと、ジキルから涙がこぼれた気がした。よほど悔しいのか?
「神器を返して欲しいなら、またどこかで俺たちを見つけるんだな」
そう言い残して、ジキルとハイドは空の奥に去っていった。
僕は、ヘニャリと屋上のコンクリートに腰をつけた。
そして僕は、背後に立ったままの桐さんに振り向き、呟いた。
「頑固オヤジの対処法って、知りません?」
後日、僕は時計ウサギに矢だけを返しにいった。
結局、矢だけなのか!と時計ウサギからこっぴどくお説教を受けてしまった。この頑固ウサギめ・・・
しかしお説教をし終えた後、疲れ果てた僕を見ながら時計ウサギは言った。
「結果が大なり小なり、ありがとう」
まあ、悪い者ではないんだな、と少し気持ちが和んだ。
そして、これからも絵本部は「ジキルとハイド捜索」を行わなければいけないらしい。
日が経つにつれ、仕事量が増える絵本部は、頭を抱えた。




