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『クラスメートA』を探せ!!  作者: 植尾 藍
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5.「眷属」って漢字が書けなかったよ。

 俺も学生である。学校での活動で一番熱心に取り組んでいるのがバスケットボールである。最近、「クラスメートA」の正体をどうやって突き止めてやろうかと考えるのが楽しい。


 あとは、図書室が『ガッコウの卵は誰のもの』の作者の最新作の貸出を開始するらしい。『クラスメートXの献身』というタイトルだ。少ない俺のお小遣いで、単行本を買ってしまおうかと迷うくらい惹かれるタイトルだった。きっと、最近SNSで『クラスメートX』ではなく、『クラスメートA』の正体を探しているからこのタイトルに惹かれるのだろう。


 あと、学校では消極的にとは言え、授業聞いているし、学生としてテストを受けなければならない時だってある。

 そして今日は、1限目の現国の時間に、いきなり漢字テストがあった。抜き打ちテストって奴だ。1限目に抜き打ちテストがあるとは、俺のクラスは運が悪い。


 今はSNSが発達した世の中だ。はっきり言って、抜き打ちテストの情報なんてあっという間に拡散する。学校側では自粛を要請しているが、抜き打ちテストがあったという情報なんてあっという間に学年に広がる。どんな問題が出たかもあっという間に学校内に広がるのだ。

 だが、朝一番の授業、1限目に抜き打ちテストがあると、学生にとって本当の抜き打ちテストになる。不意打ちという扱いかも知れない。


 ん? 俺は、漢字の書き取りがまったく出来なかったが、一つ閃いた。


 テストが終わった休み時間。他のクラスメート達は、抜き打ちテストの内容を楽しそうに話している。スマフォで変換して、「こんな漢字しらねぇし」なんて言って笑っている声が教室中に響いている。


いまだ! と俺は思う。国語の漢字のテストが終わった今がチャンスだ。俺はスマフォを取り出し、SNSに投稿をする。


『漢字テスト、難しかった』と俺は書き込んだ。


 そして俺は教室の後ろに行き、ぼんやりと窓を眺めている仕草をする。スマフォを触っているクラスメートが誰か確認するためだ。


 ピコンとスマフォが鳴った。返信が来た。


『「眷属」って漢字が書けなかった。今、変換して初めてしった~。でも一生書くことなさそうな漢字だよね』


 ちゃんと、先ほどの抜き打ちテストでどんな問題が出たかを知っている……。確かに、漢字テストで、「けんぞく」という漢字を書けという問題はあった。


 クラスメートAは、本当にこのクラスにいるのか?


 誰だ? 今スマフォを触っている奴は? って、みんなスマフォを操作しながら会話をしたりしている。


 教室の隅では、みんなスマフォを片手に持ちながら談笑している。


 机の周りに固まって、みんなで何かの動画を見ているやつらもいる。


 さっきまで抜き打ちテストだったせいか、スマフォを触っている割合が高い。


 ちくしょう。みんなスマフォを触りすぎだ。


 これじゃあ、『クラスメートA』がこのクラスにいても、特定することができない。


 教室中を歩き回って、スマフォの画面をそれとなく覗いてみるか? 


 ……いや、画面を覗いているのがばれたらヤバい。女子からは変態扱いされるかも知れない。


 いや……待て。焦るな。これは『クラスメートA』の罠かも知れない。これまでは、『今日は天気が良いね』とか、『練習お疲れ様』とか、そんな当たり障りのないコメントしかなかった。それなのに、今日はどうして『「眷属」って漢字が書けなかった。今、変換して初めてしった~。でも一生書くことなさそうな漢字だよね』なんてかなり踏み込んだ内容を送ってきたのだ?


 確認が必要だ。『クラスメートA』に踊らされるんじゃない。犯人を追うことが出来なかったら、おびき寄せるという方法もある。名探偵も、犯人が現場に戻って証拠を隠滅しようとするように仕向けたりするじゃないか。


 とにかく、確認が必要だ。


 俺は、部活の練習のあと、同じ部活の奴等と会話をする。


「お疲れ〜。そういえば、今日、漢字の抜き打ちがあったな」と俺は同学年の奴等にそれとなく話題を振ってみる。


「あぁ、俺のクラスもあった。難しい漢字ばっかり出題しやがって。現国の土屋は相当性格が悪いぜ」


「ってか、パソコンやスマフォがある時代に、漢字とか書けなくても別に良いし。意味わかんねーよな。要は、漢字を正しく変換できれば良いって話だよな」


「他のクラスでも土屋は抜き打ちやったのか。すぐに拡散するのに、土屋も無駄なことするよな〜」と俺は言う。


「俺のクラスはまだだな。明日か。どんな漢字が出た?」


「『黎明期』と『眷属』が難しかったな」


「あと、魚の『ぶり』と『すずき』だなぁ」


「俺なんか、『すずき』が分からなかったから、『鈴木』って自分の苗字を書いたぜ」と、鈴木が笑いながら言った。


「ショータ、この後どうするんだ? 今日も自主練か?」


「あぁ」


「そうか。じゃあな〜」


 他の部活の奴等が帰ったあと、俺は情報の統合をする。


 俺の学年は10クラスある。そして、SNSで調べたこと、そして、部活のメンバーから聞いた情報を統合する。

 今日抜き打ちテストがあったのは、B、C、E、F、Iクラス。そして、他のクラスではまだ、現国の抜き打ちテストは行われていない。


 抜き打ちテストは今日から始まった。


 そして、俺のクラス、Cクラスが今日の1限目が現国の時間だった。


 つまり、この学校、最初の抜き打ちテストにCクラスが遭遇したということだ。


 俺は、鞄からスマフォを取り出す。「クラスメートA」から『「眷属」って漢字が書けなかった。今、変換して初めてしった~。でも一生書くことなさそうな漢字だよね』というコメントがあった時間を再度確認をした。


 間違い無く、1限目が終わったあとの休み時間だ。


 事前の抜き打ちテストの情報の漏洩がない限り、あの時間に抜き打ちテストの内容を知っているのは、俺のクラスCクラスの生徒だけだ。


 あっ、いや。テストの出題者、つまり先生も知っている。


 新たな容疑者が浮上した。先生? 現国の土屋?


 いや、あいつは学校の連絡網も電話を使うほど機械音痴だった。たしか、ガラケーしか持っていないと聞いたことがある。それに、教師と生徒が個人的にSNSをやりとりすることは禁止されている。教師と生徒の個人間のトラブルを防ぐのが目的だ。噂では、この学校も、体育教師と女子生徒の間でSNSを使ったトラブルがあったらしい。


 教師が『クラスメートA』である可能性。これはないだろう。って、現国の土屋のような中年オヤジとSNSをしていたのなら、それは間違い無く俺の高校時代の黒歴史となるだろう。


 先生は容疑者から外す。


 そうなると、『クラスメートA』は宣言通り俺のクラスメートだったか。『クラスメートA』は、Cクラスの中にいる。俺を除いて、39人が容疑者だ。随分と絞られてきた……というにはまだ多いが……。


 だが、俺は確実に『クラスメートA』の正体に近づいている!

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