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『クラスメートA』を探せ!!  作者: 植尾 藍
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2.ショータ君、友達申請ありがとう~!

 スマートフォンの画面を眺めながら職員室へと向かう。


 『疲れてねぇーぜ! 余裕だぜ!』と俺は返信しようか迷っていた。久しぶりのコメントだからって舞い上がってはいけない。相手が匿名である以上、悪戯である可能性が高い。


 そもそも、クラスメートだったら名乗れば良い。というか、クラスメートのほとんどの人間がSNSをやっている。インフルエンザなどで学級閉鎖になった時などに使われる学校からの連絡用SNSのアカウントを持っているはずだ。


 わざわざ匿名で、俺のSNSにコメントする必要なんてない。クラスメートだし、全くの他人ということでもないしな。


 SNSは悪戯に利用されることだってある。悪質な悪戯になると、別人がクラスの可愛い子の名前を語ってSNSを送たりなんてことはあり得る。告白されるとか思って舞い上がってのこのこと校舎裏になんて行ったりしたら、クラス中の笑いものになるのだ。


 『遅くまで練習疲れ様!』という文字を見つめながら、俺は悪戯という線が濃厚なのじゃないかと考える。

 職員室に鍵を返しに行ったついでに、職員室の隣にある図書室の返却ポストに借りていた本を返した。クラスメートAのことを考えていて、危うく本を返すのを忘れるところだった。ちなみに俺は、サスペンスや推理小説を読むのが好きだ。


 今日返却する『ガッコウの卵は誰のもの』は、サスペンス小説としてなかなか面白かった。「ガッコウの卵」、つまり学校の卵ということで、学校設立に関わる汚職事件を描いたフィクションだ。国有地が不当に安い値段で学校に払い下げられたという事実が露見し、財務省、そして首相夫人の関与など、次々と事実が明るみに出ていく展開には引き込まれた。実際にあったらとんでもない話だが、首相を追い詰めていく熱意に燃えた議員の国会審問などは、臨場感があり、フィクションとして読むには名作だと思う。


『ガッコウの卵は誰のもの』、という小説のタイトルに答えがあるとすれば、学校は一部の政治家の私物化して良いものではないということだろう。


 俺は鞄から『ガッコウの卵は誰のもの』を取り出す。とっくに図書室は閉っているが、廊下に置いてある返却ポストに返すことができた。


 それにしても、『クラスメートA』は何者なのだろう? 悪戯ではない可能性だってある。むしろ、悪戯でないと信じたい俺がいる。

 『遅くまで練習疲れ様!』に対して俺は何か反応するべきだろうか。せっかくコメントをくれたのに既読スルーで良いのだろうか。


 あっ、俺のSNSのページを『クラスメートA』が登録してくれたようだ。


 SNSに、『あなたのフォロワー』が、『0』から『1』へと変化している。


 帰りに小腹が空いたので俺はハンバーガー屋でポテトを摘まみながら『クラスメートA』について調べることにした。

 俺のフォロワーのページから『クラスメートA』のページに移動する。


 『クラスメートA』のプロフィールは、ほとんど何も記載されていなかった。プロフィールには、『年齢』と『居住地』だけが表示されていた。俺と同じ歳なようだ。いや、クラスメートだったら当たり前か……。『居住地』は『東京都内』になっているが、俺の高校に都外から通っているなんて話は聞かないので、何の参考にもならない。


 『性別』もプロフィールでは非表示になっている。『性別』は知りたいところであったが、表示されていない。残念だ。できれば『クラスメートA』は女の子であって欲しかったなぁなんて思うが、まぁ、プロフィールの設定次第で、『男』にでも『女』にでも表示できるから、参考にはならないだろう。だけど、俺の気持ちとしては、女の子からの方が良い。部活の練習の後、『遅くまで練習疲れ様!』と言われたいじゃあないか。マネージャーと付き合ってる先輩は、練習後にタオルとか渡してもらっていて、羨ましい。タオルを練習後に渡してもらうというような高望みはしないが、SNSで試合の前とかに『頑張ってね!』なんてコメントを貰えたら最高じゃないか。


 『趣味』も非表示。


 はっきり言って、なんの情報もない。


 『クラスメートA』は、俺以外をフォローしていないらしい。学校の誰をフォローしているかで、『クラスメートA』の大体の交友関係を推察できると思ったが、そう上手くはいかないようだ。


 『友達』の欄にも誰の名前も登録されていない。俺のSNSですら友達は数人登録されているぞ? 


 実際に俺のクラスメートだったとしたら、突然、クラスに出現した透明人間かのようだ。最近、スマートフォンを買ってもらって、SNSデビューした奴か? だが、スマートフォンを買ったのだったら、学校の休み時間とかに「スマフォ買ったんだ」とか口頭で言ってくるはずだ。というか、本名で登録するか、誰か分かるようなあだ名などのニックネームで登録するはずだ。『クラスメートA』とか意味分からない名前で登録するはずがない。


 『クラスメートA』は、一体誰なんだ?

 

 ポテトを摘まみながら、俺は考える。スマートフォンの画面をずっと俺は見つめている。


「『クラスメートA』さんへ友達申請を送りますか? 『はい』/『いいえ』」


 とりあえず、友達申請をしてみようか。俺はずっと迷っていた。

 『友達』のリストはいつでも削除可能だ。とりあえず、『友達』になって見て、様子をみる。『遅くまで練習疲れ様!』に返信すると、SNS上に公開されることになる。友達申請の方が露出度は少ないし、リスクが低いように思う。

 

 「虎穴に入らずんば虎子を得ず」なんて言葉がある。『友達』のリストはすぐに削除可能だ。怪しい奴だったら削除すれば良い。


 「『クラスメートA』さんへ友達申請を送りますか?」に、俺は「はい」のボタンを押した。


 押した数秒後に、俺のスマフォが「ピコン」と鳴った。


「『クラスメートA』さんが、あなたの友達申請を承認しました」というSNS運営会社からの事務的なメール。


 承認、早っ!  


 「ピコン」とまた俺の携帯が鳴った。


 「ショータ君、友達申請ありがとう~!」というコメントが「クラスメートA」からやって来た。


 『こちらこそありがとう』と俺は返信をした。「お前は誰だ?」と送れば良かったが、俺から友達申請しておいて、「お前は誰だ?」と送るのは失礼だろう。


 失敗した。あちらから友達申請が来るのを待てばよかった。そしたら、友達申請が来たときに「クラスの誰だっけ?」と俺から聞くことが出来たはずだ。

 俺は少し舞い上がって焦っていたのかも知れない。だが、やり取りをしているうちに、きっと「クラスメートA」の正体は分かるだろう。


 それに、かなり高い確率で、「クラスメートA」は俺の事を知っている。


 俺の名前は「祥太郎」だ。SNSのハンドルネームは『ショータロウ』だ。だが、学校で仲の良い奴からは「ショータ」と呼び捨てで呼ばれている。他のクラスメートからも、「ショータ君」と呼ばれている。俺の本名は「山田 祥太郎」だ。『山田』はクラスに2人いるので、クラスで俺のことを苗字で呼ぶのは先生くらいだ。

 

 そして「クラスメートA」は、俺の事を『ショータ君』と呼んた。


 SNSのハンドルネームを見ただけで、俺の事を知らない人だったら、『ショータロウさん、友達申請ありがとう~!』とか、『ショータロウ君、友達申請ありがとう~!』となるのが普通だと思う。いきなり、『ショータロウ』を『ショータ』と省略して呼んだりすることは考えにくい。

 

 「クラスメートA」は、一体誰なのだろう。「クラスメートA」の空っぽのプロフィールを眺めながら、俺は家に帰った。

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