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相生様メモ   作者: 大野 大樹
人物紹介プラスα
6/20

博史君の愉快な毎日

 兄ちゃんをちょっと知っているだけの人は‥中等部の俺の後輩とかがそうだね。

「博史さんとお兄さんってあんまり似てない感じですよね。‥顔とかじゃなくて。お兄さんの方がクールっていうか、自分に対して淡泊そう‥」

って言う。

兄ちゃんは別に、自分に対して無関心なわけではないんだ。

お肌なんて「一体なんのスキンケアしてるの」って女子に聞かれる位、つるつるだ。兄ちゃんは「‥ひげが生えないからかな」なんて言ってるけど。

そういいながら、日焼け止めはきっちりして、日焼けなんてとんでもないし、髪の毛に寝癖付けたまま学校にいくなんてとんでもないし。

ちょっと日焼けしちゃってる、紅葉ちゃんより兄ちゃんの美の基準は高い。

まあ、俺たち家族はもともと肌がそんなに強くないから、ちょっとでも日焼けすると真っ赤になって、ヒリヒリ痛くてもう大騒ぎな結果になるから、兄ちゃんの対処法は別に兄ちゃんだけのものでもなく、俺だってそうだ。

でも、まあ日焼け止めだけであの色白美肌が保ててるわけでは、絶対にない。

あえて言うなら‥

兄ちゃん、ジャンクな食べ物なんて絶対食べないから?

朝の清さん特性のスムージー?

夜更かしとかしないから?

‥現在人で、うちの生活に合わせるのは難しいかもよ?

性格の話かな?

「もうちょっと、自分に楽しみを」って思っちゃうくらい、ストイックだから、四角四面な性格に見えちゃうのかな? 


兄ちゃんを、もう少し知っている人は‥これは、兄ちゃんの同級生の方たちだね

「割と負けず嫌い。なんだかんだ言いながらも相崎さんのテニス対決をこの前も受けてた」

 ‥うん。あれから、休みの日に家族でよくテニスに行くよ。

 遊びとかじゃなく、ガチのやつ。

 父さんも目がマジだ。負けず嫌いなのは一族だね。

 兄ちゃん、多分普通に父さんの息子だよ。俺の兄だし。

 でも、また負けたみたいだね。‥世の中そんなに甘くないよ。

 だけど、あの日桜さんの家から帰って来た兄ちゃんが突然

「博史、テニスをしよう」

 っていいだしたのは驚いた。

 で、俺そっくりの打ち方でボレーの応酬をしたんだ。

 ‥あれは、ちょっと気持ち悪かった。

 読んでるの?! ってか、読まれてるの?! って感じ。

 まあ、そんなに続かなかったけど。

 いつもの二三倍疲れた顔して兄ちゃんがヘタって終了。

 ‥何がしたかったんだ?


「笑顔が魔性」

 確かに、あれは、いただけないよね。

 武生さんが、露骨に嫌な顔するの分かる。

 身内が見たら、照れる。

 父さんやらおじい様は別に何も言わないけど。

 ‥おじい様たちも凄いし。

 果物屋さんで、普通に「ありがとう」って言って笑っただけで、ミカンとかリンゴおまけしてもらえるレベル。

 ‥あ、俺はお肉屋さんでコロッケ一つ買ったら、もひとつおまけしてくれる

「たんと食え! 」

 って育ちざかりって顔してるのかな?

 兄ちゃんは近所の奥様方にもアイドルで、庭で素振りしてたら、飴だの果物だの貰ってる。

 ‥田中さんだけじゃなくって、兄ちゃんはそういう顔なのかもしれない。

 なんだか、あげたくなる顔。

「よしよししたくなるな~」

 って言われる俺の従兄妹の悠希とはちょっと違う感じ。

 その後、切れた悠希が瞬殺する感じもちょっと違う感じ。

 ‥悠希は、親しみやすいんだな。

 兄ちゃんは、そんなこと言われたら、多分

「は? 」

 で、摂氏零度の視線だろう。‥そんな状況見たことないから、想像だけど。

 だけど、多分間違いは無い。‥やめてもらいたいし、やめた方がいい。


 この前、兄ちゃんと服を買いに行った。

 兄ちゃんは、想像通り、もう、オーソドックスな服ばかりを見てた。

 ぶれないなあ!

 派手なTシャツ選ぶ兄ちゃんとか想像できないもんね!

 でも、店員さん

「もう、何お召しになっても似合います! 」

 って目がハートなの。

 ‥見慣れてます。この光景。

「ご兄弟ですよね~。仲いいんですね~」

 ‥まあ、兄弟で服買いに来るって確かに言われたら変だな。

「兄があんまりに無頓着で無理やり連れて来たんですよ~」

 って愛想のいい顔するのは、下の子の仕事だな! 

 帰り道、何個かの紙袋を持って(断れずに買ってしまった。カードで一括。兄ちゃんは、そこらへんも高校生っぽくない)

「茶席で、着物着る機会が増えたから、着物の方がこの頃しっくりくる。道着も着物といえば着物だし‥」

 って、ぼそりと兄ちゃんが呟いたのは、きっともみくちゃにされて疲れたんだね。

 店員、何人いるの? って感じだったもんね。

 でも、それにしても服試着するだけでしょ?

 ‥体力なさすぎない?

 って、体力関係ないか。

「そういえば、この頃紅葉さん料理の稽古してるんだって」

 黙って歩くのもなんだから、話題を振ってみた。

「ああ、そういえばそんな話してたね」

 ふふ、と兄ちゃんが笑う。

 柔らかい笑顔に、兄ちゃんが二人の事を大事に思っていることが分かる。

 この表情は、俺も好きだ。

「恋する乙女って感じするね。可愛いね」

 って、そんなセリフをサラっという。

 ‥天然タラシめ。

「そうだね」

 まあ。可愛いのは否定しないけど。 

 紅葉さんは可愛い。

「兄ちゃんは無いの? 」

 ふと、聞いてみたくなった。

「ん? 」

「可愛いなあ、って思う子とか」

「無いことはないでしょう」

「あるの! 」

「例えば、何気なく「可愛いな」って思うこと、とかはあるね。だけど、それがずっと「一緒にいたい」になる感覚は、よくまだ分からない」

「あ~。確かに。今何してるかな~とかってのは、無いよね。俺もそれはそう‥」

「面白いもの、綺麗なもの見てて、一緒に見たいなって」

「ふむふむ」

「こういうことしたいなって」

「うんうん」

「そういうのが、まだ思ったことない」

「‥まあ、そうだね。俺もない」

 って言っていて気付いた。

 ‥俺も、恋やらそういうのに無縁なんじゃない??


 松原(クラスメイト・女子)にぼそり、と翌日呟いたら

「博史はそれでいいんだよ! 」

「そうそう! 」

「女の子に気が利く博史とかって、想像できんわ! 」

 って言われた。

 小林(クラスメイト・男子)まで巻き込んで‥。松原、俺のイメージってどんなだ?


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