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相生様メモ   作者: 大野 大樹
人物紹介プラスα
4/20

閑話 四朗と紅葉の家族

8-3の後に入れようと思いましたが、佳境に入る前に、これ以上話がだらだらするのも‥と、止めました。

こういう、「入れたかったけど」も、なんこか入れたいと思っています。

 夕方、紅葉の父親が帰宅してきた。

 あらかじめ、妻からメールで知らされた彼であったが、家に来客がいるというのは緊張する。

 そして、ちらっと玄関で靴を見る限り、若い男だ。

 清潔なスニーカー。

 そして、デカい。うちは女の子ばっかりだから、こんなデカい靴、普段は見ない。

 自分の靴以外の男物の靴が玄関に置いてあるダメージ、結構計り知れないな。

 ‥この前、武生君とは外で会ったし。

「よろしくお願いします」

 挨拶してきた顔は、やたらイケメンだ。

 年は、紅葉と同じ位だろうか。ど

 娘とは、どういう関係だろう。そもそも、紅葉の知り合いだろうか、千佳だろうか。

 紅葉だとしたら‥

 この前会った武生君とは違う子だ。

 どういうことだろう。

 武生君と会うのも、精神的にいっぱいいっぱいだったのに、今日は泊まる?

 ‥いったい彼は誰なんだ?

 会釈でダイニングを通り過ぎて、部屋に荷物を置きに行くと、妻が

「桜の息子さんなの。‥あの子が、稽古をつけるってやり過ぎちゃって、帰れないだろうから泊めてあげてって。ほら、あの家、夜は男性立ち入り禁止だから」

「ふうん? 桜さんが稽古って。‥そんなこともするんだね」

 ネクタイを外しながら父親が感心した様な声を出す。

 ‥だからってうちか? 我が家には年頃の‥結婚を控えた娘がいるんですけど! 変な噂立ったらどうしてくれる。

 ついつい、桜には厳しくなってしまうが、考えてみれば桜は妻の妹で、会ったことがないとはいえ彼は、娘たちにとっては従兄弟だ。

 ‥そう、ただの従兄妹だ。俺からしたら、甥だ。

 そう思ったら、大したことないということに気付いた。

 大したことないどころか‥。

 甥か!

 彼は、一人っ子だったので、甥や姪なんて周りにいない。

 ‥甥。

「ああ、君が四朗君。いつも紅葉がお世話になっています」

 父親は、急に「叔父さん風」をふかせたくなった。

 そんな彼を、千佳が冷めた目で見ているのには、勿論気付いてはいない。

「こちらこそ」

 緊張した面持ちで、四朗が挨拶をする為に姿勢をもっと正そうとする。

「ああ、いいいい。堅苦しい挨拶は。(なんて言ったって、伯父さんだしね! )初めましてだね。私は、紅葉の父親の徹です」

「初めまして、相生四朗です」

 千佳の表情が「初めてじゃ、ないな」と語っている。

 ‥千佳ちゃん‥

 密かに突っ込みを入れる四朗。

 ‥え? 千佳、その顔。四朗君と私が入れ替わってたって気付いてるの? 四朗君が言ったの?

 紅葉は気が動転している。

「それより、卒業だね。進路は決めてる? 」

 伯父さんっぽい話をしてみる。

「父さん?! 」

 紅葉が驚いて聞き返す。

 ‥急に、なんで進路?! 私も聞いたことないよ!

「ははは。ごめんね。でも、君。ホントに男前だね。モテるでしょ? 」

 徹は、機嫌よさげにビールを一口飲んだ。

「根暗はモテない」

 ぼそり、と千佳が呟く。

「千佳! 」

 紅葉が慌てて叫ぶ。

 ‥だから、何なの今日の千佳?! 何があったの四朗君と?!

「ははは」

 四朗は乾いた笑いを浮かべる。

 紅葉は、息を小さくひとつ吐くと

「四朗君はそういうことに疎いんだ。お家のお仕事も忙しいしね。学校以外は、習い事にお仕事にって大忙しなんだ」

 息を落ち着け、常と同じように落ち着いた口調で言った。

「お仕事? 」

 首を傾げたのは母親の蕗子だった。

 四朗は、

「親戚たちと家族で会社を経営しています」

 にっこり笑って言った。

「凄いね! 社長さんだね」

「うちの家は平ですよ」

「ははは」

 徹が楽しそうに笑い、

「父さん! 」

 蕗子が慌てて徹を窘める。

「家族会社も大変だよねえ」

 お? やっぱり父さんも母さんも四朗君のスマイルに耐性がある。

 そうか、一緒に暮らしたら耐性が出来るんだ。

 新発見。

 ‥千佳は相変わらず「けっ」って顔してるね。



「それで、四朗君は武生さんの幼馴染なのよね」

 と、蕗子が食後のお茶を入れながら何となく聞いた。

「全然タイプは違うけどね」

「さっきから、千佳はなんなのよう。もう」

「いいですよ。なんか、武生で慣れてますから」

 ‥寧ろ、しつこい武生みたいな感じ? 

 四朗が苦笑する。

「いつもは、いい子なんですよ」

 紅葉が困ったような顔で言った。

 ‥ホントに、千佳ったら。私、千佳が嫌われちゃったりしたら嫌だよ? 

 ちょっと泣きそうになっていると、

「知ってる」

 四朗が紅葉を安心させようとするように、穏やかに微笑みかけた。

「? 」

 ‥四朗君?

 そして、すぐ

「あ、紅葉さんの妹さんだから、いい子だろうなって」

「俺にも弟がいます。素直じゃないけど、いい奴で。ちょうど、それを思い出しました」

 って言って『誤魔化した』

 嘘、博史君は『普通に』いい奴だ。

 四朗君は、千佳と本当に会ったことがあるんですね。また、その時の話をしてくださいね。

 不思議と、『疑惑』みたいなもの‥二人の間に何かあった、とかは思わなかった。

 だから、今はいい。

「さ、四朗君。明日も稽古でしょ早く寝なきゃ」

 にこっと笑って、紅葉が四朗を促した。

 蕗子が慌てて立ち上がり

「お風呂の用意するわね」

 風呂場に向かおうとするのを、四朗が引き留めた。

「あ、シャワーを西遠寺の家で借りて来たから大丈夫です」

「さっき買ってきた服に着替えだけすれば‥」

 ああ、確かにさっき買ってきました。店員にガン見されながら。

 紅葉が、『さっきの服屋』を思い出し遠い目をする。

 ‥ホント、何しても四朗君目立ちすぎだよ。お会計の時、店員さんの意識飛ばしかけてたし。

「‥パジャマ。父さんの貸してあげたら。丈がつんつるてんになるかもしれないけど」

 口は悪いけど、千佳はやっぱり『いい奴』で、紅葉は顔が自然と綻んだ。

「‥短足で悪かったな‥」

 ‥父さんは不満げだけどね‥。

次で、本編最終になると思います!

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