3、セバス
目を覚ますと、俺はベッドの上にいた。
隣を見ると、先程助けた銀髪の少女が眠っている。身体をおこせば、背中に痛みが走った。
「……どう言うことだ?」
「お目覚めになられたようですね、魔王様」
聞き慣れた声に視線を飛ばせば、案の定、セバスがそこにいた。
周りを見渡せば、此処は魔王城の一室だった。つい動揺し、周りがみえていなかったようだ。
「魔王様が、なかなかお戻りになられないので、探しにいけば、銀髪の女の子を抱えて倒れてるじゃないですか。何があったのか、教えていただけますか?」
「えっとな……」
【セバス】
私はセバス。魔王様が生まれた時からお世話をさせて頂いている魔人です。
魔人とは、空気中に溢れるマナと呼ばれる力を利用し、精霊術を使うことの出来る一族ことです。姿は人間と変わりませんが、寿命が人間よりも長いです。私も姿は青年ですが、実年齢は100を超えています。
ですが、幾ら年を重ねても、赤字の魔王城なんて異例中の異例。つい動揺してしまいます。
実は、その魔王様には、お両親がいらっしゃいません。亡くなったという訳ではなく、元からいないのです。
魔王というのは、神から創り出される存在。現魔王のユリウス様も、例外ではありません。
11年前、ユリウス様は突然、魔王城の祭壇の前に現れました。神に創られる魔王といえど、最初は赤子の姿で、人間と同じように成長します。
創り出されてから11年が経ち、ユリウス様は立派に成長なさいました。
小さい頃から見守ってきた私としては、嬉しい限りです。
魔王城で働いている従者は私1人。
これからもずっと支えていければと思っております。
そんな魔王様は今朝、散歩に行くと言い外出なさいました。
なかなかお戻りになられない事に違和感を覚えて探しに行くと、案の定、魔王様は意識を失っています。
周囲には、アウレウスウルフとゴブリンの死体、ニヤニヤ笑っているもう1匹のゴブリン。そして、魔王様の腕の中では銀髪の女の子が眠っていました。
私はゴブリンを始末すると、魔王様と女の子を担ぎ上げました。
ふと、アウレウスウルフの死体が目に留まりました。もしかしたら、アウレウスウルフは食べられるかもしれません。一応持って帰る事にしましょう。
ゴブリンは……食べるのは精神的に無理ですね。
魔王城に帰って少しすると、魔王様が目を覚ましました。魔王様の説明によると、魔物に咥えられていたこの女の子を助けた後、ゴブリンに襲われたそうです。
とにかく、無事で良かったです。
さて、魔王様はこの子をどうするのでしょうか。どうするにしても、私は魔王様に従うだけ。
それに、また魔王様の成長が見られそうで、少し楽しみでもあります。