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破産寸前の魔王城  作者: 小日向ひより
3/5

2、ゴブリンに負ける魔王様

 肩まで伸びた銀色の髪。

 左目に眼帯をしているその少女は、可愛らしい顔立ちをしていた。

 だが、その格好は酷いものだった。

 アウレウスウルフにくわえられていたので、唾液でベトベトになっている上、身体中に切り傷やあざがあり、血が滲んでいて痛々しい。それに加えて、彼女は病的なまでに痩せ細っていた。服は使い古されボロボロで、穴があいているところもある。

「息は……まだあるな」

 意識は失っているものの、まだ手遅れではない。

 今回の様に、子供が魔物に襲われるのはよくあることだ。魔物に襲われ死んでしまう子供も少なくない。この子を見捨てたとしても、誰も文句を言わないだろう。というか、見捨てないと面倒なことになる。

 12ヶ月連続で赤字を叩き出す、破産寸前の魔王城。俺とセバスの生活費だけでもギリギリなのに、この子を養う余裕なんてあるわけない。将来を考えても、この子は見捨てるのが得策だろう。

「でもな……」

 きっと、この子をこのまま放っておくと、魔物に襲われて死ぬか、飢え死にするだろう。

「とりあえず、一旦連れて帰るか」

 どうやら俺は他人に甘いようだ。

 この子を放って帰る事が出来ない。

 目が覚めたら、親元に返せばいいだろう。

 ……城にこの子を連れ帰ったら、セバスはどんな反応をするだろう。人間を城に入れることを嫌がるだろうか。まぁ、その時の対処法は後で考えるとしよう。

 それよりも……

「何で人間の子供がこんな森の奥に」

 此処は魔国の領土。それも、森の奥に建つ魔王城の目前だ。人間の子供が来るような所ではない。

 魔物に連れ去られたのだとしても、魔物は魔国の領土にしか生息しないので、どちらにしろこの少女は自分から魔国に入って来たことになる。

「……目が覚めた時に聞けばいいか」

 俺は少女を抱え、帰路についた。


 その時だった。


「ッッ⁈」

 猛スピードで近づいてくる気配を察知し、振り返る。

「グアァァッッ」

 棍棒で襲いかかって来る人型の魔物。俺はその攻撃を横飛びで躱す。

 下品な声を上げる、二等身で緑色のそれは、かの有名なゴブリンだ。ゴブリンが相手なら、この子を抱えたままでも戦えるだろう。

 ゴブリンは棍棒を振り上げると、こちらに向かって突き進んで来る。かなり近づいたところで、俺は懐に潜り込み、腹を切り裂いた。

「グ、グギャアァァーーーッ」

 気持ちの悪い断末魔を上げ、倒れ込むゴブリン。

 自分と少女を見ると、ゴブリンの返り血がベッタリついていた。

「……セバスに怒られそうだな」

 まぁとにかく、ゴブリンを倒せてホッとした。

 ……安心したことで、気が緩んだのだろう。

 俺は、急接近してくる気配に気づけなかった。


 瞬間、背中に強い衝撃をうける。


「カハッッ」

 踏ん張ろうにも身体が言うことを聞かず、為すすべもなく地面に倒れ込む。

 朦朧とする意識の中、顔だけを動かし後ろを見る。

 そこにいたのは、 棍棒を振り上げ、ニタニタと笑う、もう一匹のゴブリンだった。

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