プロローグ
宜しくお願いします。
ドッカーーーンッ
静寂な深夜の森に爆音が轟いた。
「いくぞぉぉぉ!」
「今日こそ魔王をあぶり出せぇぇぇっっ!」
鎧に剣と、重装備をした男達は威勢良く叫んだ。彼らは武器を振り上げると、魔王城に向かって駆け出す。
彼らの後方には、武器を持たない者達が佇んでいた。その中には、年端もいかない子供や、女性も含まれている。ローブ姿の彼らは何かをブツブツと唱えていた。
「雷電よ……《ライトニング》っ」
叫ぶと同時、星と輝いていた夜空に変化が起こる。どこからともなく黒雲が現れ、空を覆い尽くすと雷鳴と同時に閃光が走った。
そんな中俺は、場にそぐわない軽装で、少し離れたところから彼らを観察していた。
「おい、お前。そこでなにしてんだ。魔法使いなら、攻撃に加勢しろ」
兵士のような格好をした人が、近づいて来る。
「俺、魔法使いじゃないから。お兄さん達って、今何してんの?」
「ん?魔王討伐だ。11年前、33代目魔王が誕生して、まだ討伐されてないんだ」
「何で討伐しなきゃならないんだ?」
「いいか坊ず、魔王は悪なんだ。沢山の人を殺し、世界を征服しようとたくらむ、天災なんだ」
「先代の魔王が悪者でも、新しい魔王は違うかもしれないじゃないか」
「煩い。魔王は殺さなきゃいけないんだ」
「…」
「早く家に帰れよ。これから魔王をあぶり出す予定で、危険だからな」
「……今現在、家が襲撃されてるから帰れない」
「はぁ?どういうことだ?まさか魔王城が家だとでも言うつもりか?嘘をつくにしても、もう少しマシなのを……」
「嘘じゃない。俺が魔王だ。お前たち人間が奮起になって倒そうとしている、33代目魔王」
「ふざけるんじゃないっ」
男は俺をなぐろうとし…
「ぐふっっ」
地に体を打ち付けた。
「暴力はあまり好きじゃないんだけどな」
俺は男を殴り返した手をはらう。
「お前が……本物の魔王……なのか?」
「そうだ。俺は魔王、ユリウス。人と敵対するつもりはない。お前を殺すつもりも無い」
「嘘だろ……魔王がこんな……チビだったなんて」
「うるせぇ殺すぞっ」
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兵士の男と別れ、俺は魔王城に戻って来ていた。
「お帰りなさいませ魔王様」
重いドアを開け部屋に入ると、執事が聞き慣れた声で挨拶をしてくれる。
「どうぞお飲みください」
「ありがとうセバス」
彼から受け取ったワイングラスの中身は水だった。いつものことだ。
「これ、井戸水か」
「いえ、今日は川の水を汲んでまいりました。ワインを買う余裕が無いのは、理解して頂いてますよね?」
「…ああ」
部屋を見回す。
中身が空っぽの食料庫、薪が無くなり消えかけている暖炉の火、使い古されボロボロになった俺やセバスの服。
簡単に言えば、魔王は超貧乏だった。