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破産寸前の魔王城  作者: 小日向ひより
1/5

プロローグ

宜しくお願いします。

 ドッカーーーンッ

 静寂な深夜の森に爆音が轟いた。

「いくぞぉぉぉ!」

「今日こそ魔王をあぶり出せぇぇぇっっ!」

 鎧に剣と、重装備をした男達は威勢良く叫んだ。彼らは武器を振り上げると、魔王城に向かって駆け出す。

 彼らの後方には、武器を持たない者達が佇んでいた。その中には、年端もいかない子供や、女性も含まれている。ローブ姿の彼らは何かをブツブツと唱えていた。

「雷電よ……《ライトニング》っ」

 叫ぶと同時、星と輝いていた夜空に変化が起こる。どこからともなく黒雲が現れ、空を覆い尽くすと雷鳴と同時に閃光が走った。

 そんな中俺は、場にそぐわない軽装で、少し離れたところから彼らを観察していた。

「おい、お前。そこでなにしてんだ。魔法使いなら、攻撃に加勢しろ」

 兵士のような格好をした人が、近づいて来る。

「俺、魔法使いじゃないから。お兄さん達って、今何してんの?」

「ん?魔王討伐だ。11年前、33代目魔王が誕生して、まだ討伐されてないんだ」

「何で討伐しなきゃならないんだ?」

「いいか坊ず、魔王は悪なんだ。沢山の人を殺し、世界を征服しようとたくらむ、天災なんだ」

「先代の魔王が悪者でも、新しい魔王は違うかもしれないじゃないか」

「煩い。魔王は殺さなきゃいけないんだ」

「…」

「早く家に帰れよ。これから魔王をあぶり出す予定で、危険だからな」

「……今現在、家が襲撃されてるから帰れない」

「はぁ?どういうことだ?まさか魔王城が家だとでも言うつもりか?嘘をつくにしても、もう少しマシなのを……」

「嘘じゃない。俺が魔王だ。お前たち人間が奮起になって倒そうとしている、33代目魔王」

「ふざけるんじゃないっ」

 男は俺をなぐろうとし…

「ぐふっっ」

 地に体を打ち付けた。

「暴力はあまり好きじゃないんだけどな」

 俺は男を殴り返した手をはらう。

「お前が……本物の魔王……なのか?」

「そうだ。俺は魔王、ユリウス。人と敵対するつもりはない。お前を殺すつもりも無い」

「嘘だろ……魔王がこんな……チビだったなんて」

「うるせぇ殺すぞっ」


ーーーーーーーーーー


兵士の男と別れ、俺は魔王城に戻って来ていた。

「お帰りなさいませ魔王様」

重いドアを開け部屋に入ると、執事が聞き慣れた声で挨拶をしてくれる。

「どうぞお飲みください」

「ありがとうセバス」

彼から受け取ったワイングラスの中身は水だった。いつものことだ。

「これ、井戸水か」

「いえ、今日は川の水を汲んでまいりました。ワインを買う余裕が無いのは、理解して頂いてますよね?」

「…ああ」

部屋を見回す。

中身が空っぽの食料庫、薪が無くなり消えかけている暖炉の火、使い古されボロボロになった俺やセバスの服。

簡単に言えば、魔王は超貧乏だった。

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