罪(ばつ)
「本当にここ、でるのかよ?」
「ああ、マジらしいぜ」
「でも見た感じ、普通じゃね?」
「先輩がここの窓に黒い影を見たって、言ってたんだよね」
「どうせ椎名先輩から聞いた話だろ? あの人、すぐ嘘つくじゃん」
「そうだけど。それだけじゃないぜ、ウチの姉ちゃんの知り合いがここの前で人が倒れてるの発見したとか言ってたらしいし」
「え~? 嘘くせぇ」
「マジだって」
「それで? スプレー缶、持って来た?」
「おう、このビニールの中にバッチリ入ってる。んで、なに書くよ?」
「ドクロとか?」
「べたじゃね?」
「そういう方が意外と怖いんだって」
「え~?」
「え~じゃねえよ。さて、何色あるかな~、っと」
「色々」
「くだらね。おっ、この色いいじゃん」
「蛍光の黄色? そんなんでドクロ?」
「逆にこういうのが良いんだって」
「そうかい、そうかい」
「だって。さてと、ここかな」
カチャカチャカチャ。
「なぁ、これ上手く出な……危」
ドン!
スプレーを持っていた男の体が吹っ飛び、壁にぶつかる。
車か何かに轢かれたように。
もうひとりが振り返り、男の方に駆け寄った。
「おい、どうした? おいってば!?」
(彼は事故を起こしたんですね)
飛ばされた男は息をしているようだが、意識はなく口から泡を噴き出していた。
「やばいよ! なんだよここ」
震えた声で叫ぶ、男は慌てて扉に向かった。
(駄目ですよ)
手が届きそうになる寸前でひとりでに締まり、まるで釘でも打ったかのようにビクともしなくなる。
「おい! なんで開かないんだよ!」
彼には後ろに降り立った「影」は見えなかった。
(さぁ、貴方の罪はどんな事なのでしょうねェ?)
教会の外に男の悲鳴が漏れ聞こえる事は無かった。
タイトルのルビは間違いではなく意図的な物です。
今回で、この超短編ホラー7「教会」シリーズは、無事完結です。
今まで見て頂けた方も、そうでない方も、ありがとうございました。
「超短編ホラー」自体が終わる訳ではないので、今後も読んで頂けると嬉しいです。
最期まで読んで頂きありがとうございました。
感想、評価、ブクマ等々お待ちしております。