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前ー2 ウミガメのスープ

「何だっけ」

「前にお前と竹田に出した問題だよ」

 佐久間はぼりぼりと頭をかいた。


 そういえばそんな問題あったな。彼は頭をかきながらそう思った。ちなみに竹田というのは他クラスの友人で、北山の方は中学生の頃から知っていた。


「あー、あの訳わからんクイズか。問題文忘れた、もう一回言って」

 北山は長い問題文を語り出した。


「“ある男が、とある海の見えるレストランで「ウミガメのスープ」を注文しました。しかし、彼はその「ウミガメのスープ」を一口飲んだところで食べるのを止め、シェフを呼びました。

 彼は聞きました。

『すみません。これは本当にウミガメのスープですか?』

 するとシェフはこう答えました。

『はい。ウミガメのスープに間違いございません。』

 男は勘定を済ませ、帰宅した後、自殺をしました。一体何故でしょう?”」


 この“ウミガメのスープ”というのは、出題された側がいろいろと質問をして答えを導き出す、いわば推理パズルのようなゲームだ。質問する時にはルールがあって、必ず出題者がyes/noで答えられる問いかけにしなくてはならない。


「それさ、どこまで質問したっけ?」

「まだ全然進んでなかっただろ? 男が飲んだのはウミガメのスープでしたか、イエス。シェフは嘘をついていましたか、ノー。男は以前にもそのレストランに来たことがありましたか、ノー」

「あーそうだった。竹田は答え分かったのか?」

「竹田とはまだLINEでやってる。けっこういいとこまで来てるけど」


 佐久間は時計をちらりと見た。授業開始まであと5分ちょっとある。

「えーと、じゃあ男が自殺したのはウミガメのスープが原因ですか」

「イエス」

「そのウミガメのスープはまずかったですか」

「おー、いい質問ですねえ。ノー!」

「いい質問だって言われてもなあ……。全然分かんねえ」

「だからいきなり答えを出さずにどんどん質問していくゲームなんだよ」

「じゃあその男に奥さんいた?」

「なぜそうなるんだ……」


 言いかけて北山は言葉を止めた。

「あれ? 今日の一時間目って何だっけ」

 北山の視線は佐久間の手元に注がれている。彼はちょうど教科書をリュックから出したところだった。

「古典」

「今日何曜日?」

「水曜だろ」

 それを聞いて北山は青ざめた。

「やっべ、ミスった! 教科書借りてくる!」


 おそらく別の曜日の時間割に合わせて教科書を持ってきたのだろう。北山は慌ただしく教室を出ていった。

「急げよー! 授業始まるぞ」

 彼は北山の後ろ姿に声をかけた。


 時計は授業開始2分前を指していた。北山が見えなくなると、ふと彼の顔から表情が消えた。

 


 俺にとっての北山はこのクラスで唯一の話し相手だが、北山にとっての俺はそうじゃない。あいつは俺とは違って顔が広いから、よそのクラスをちょっと覗けばすぐに友達が見つかる。きっと2分もしない内に帰ってくるだろう。



 皆様のレビュー、感想をお待ちしております。


Apr.21,2016   すずき やすはる

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