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機ぐるみの女の子が連れさらわれてしまった  作者: ジャン・幸田
今日も一日頑張りましょう!
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エスカレーター前の決闘?

 「ジャイアント・カメラ」東京中央店12階のエスカレーター前では険悪なムードが漂っていた。三体のガイノイドいやアルテミス・テクノロジーの機ぐるみを着たベテラン女性三人と、サイバーテックのエリカの機ぐるみに入った美咲が対峙していたからだ。


 相手はベテラン、こっちは大学生バイトと普段は法人営業をしているような、か弱い男では勝負は見えてしまったようだ。しかも美咲は美人で頭がよく成績優秀で人にも好かれる朗らかな性格だが、いまはその姿は機ぐるみに引っ込んでいる。


 か弱い男の野村は「すいません、そっちの方が後ではないでしょうか? このプリントでは午前11時半となっていますが・・・」と言ってはみたものの、相手は日々のノルマをこなすのに必死で「そんなの関係ない! 人数が多いほうが優先なのだ! 」と強引な理屈を押してきた。その剣幕に押され野村はシュンとなってしまった。勝負あったと思われた。


 すると後ろから美由紀がやってきた。事の事情を察したか、「なによ、同じフロワーなんでしょう! 一層のこと勝負しましょうよ! アンタたちの方がベテランなんだから、場所を取れなかったぐらいで成績が下がる心配でもしているわけ? そんなの判断するのはお客様でしょう! 」と食い下がった。


 相手は、なんで女子高生がここにいるのかと思い不審に思っていたが、仕方なく場所を分け合うことになった。エリカの中で美咲は、あのヒステリックな姉の薫と同様、美由紀もかなり強気な女だと思った。とてもじゃないが社長令嬢と思えないほどの態度だった。


 エスカレーターの前ではガイノイド(実は中身は女性)四体による売り込み合戦が行なわれた。ただし、この目的はブースに足を運んでもらうためのものなので、値下げ合戦は出来なかった。そもそもガイノイドは価格は下がったとはいえフルオプションつきの新車の軽乗用車なみの価格なので、テレビや録画装置のように「価格半額! 」などと景気のよいことは出来なかった。


 それにサイバーロイドは別に大きなショールームが関東各地にあるので、この「ジャイアント・カメラ」のブースは宣伝隊ぐらいの位置づけだった。だから売り上げが悪くても構わない社長の娘が担当しているぐらいだった。もっとも他のライバルメーカーも出店しているので、負けて言い訳ではなかった。


 それにしてもアルテミス・テクノロジーの機ぐるみの中身が、アラフォーの販売員であることは電器店内では知られていたが、来客者からすれば機ぐるみが商品と同じものと思うし、中身が人間が入っていてしかも年増なんてことは判らないしどうでもいいことだった。それに向こうはガイノイド三体でこっちは美咲一人だ。


 そのため、終始向こう側に押され気味で、この勝負はサイバーテック側の敗戦だった。「お姉ちゃん、やっぱりこっちも稼動可能なガイノイドを増やそうよ。よかったら私も入るわ」と美由紀はつめよったが、「美由紀、「どうしてもあんた機ぐるみに入りたいわけ? あれは高校を卒業しなければ駄目なのよ! それになんであんな窮屈なものに入りたいわけ? 」と薫は言い返していた。


 薫も機ぐるみの中に入ったことは何度もあるが、その殆どが父親の”人体実験”もどきの仕打ちにあっていた。そのため、正直もう二度と機ぐるみの中に入りたくなかった。それにしても、美由紀もだけどあの美咲って子も喜んで機ぐるみの中に入っていることが信じられなかった。もしさっきチラシを配るのが美由紀じゃなくて素顔の美咲だったらブースにお客さんが来てくれたのではないかと思っていた。時間はそのとき正午になろうとしていた。

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