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機ぐるみの女の子が連れさらわれてしまった  作者: ジャン・幸田
今日も一日頑張りましょう!
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売られてしまった喧嘩?

 開店時間の午前十時になり「ジャイアント・カメラ」には今日も大勢の買い物客が入ってきた。この電器店は二十階建ての高層ビルで「集積回路から電気自動車まで買えない品物はない」がモットーだった。それだけ多品種の商品があることから、海外からの観光客もやってきていた。


 薫は本来サイバーテック開発部の係長だが、夏の間だけこの電器店のブースの担当にヘルパーとして入っていた。これは社長である父親から「研究所にいたら感覚が鈍る。お客様がどのような商品を求めているかを自分の眼で確かめて来い」という指示があったためだ。


 このブースには外国人の買い物客が大勢きていたが、薫はオーストラリアと中国に語学留学した経験があったので英語と中国語が堪能で、ブースとしては大助かりだった。また美咲と聖美の二人の機械娘は稼動し、ガイノイドがどのように動くかを見せていた。


 この十二階ガイノイド売り場には、サイバーテック以外のメーカーのブースもあった。互いのブースの情報は教えてもらうことは少ないが、ほかのブースでも美咲や聖美のようにガイノイドの中に生身の女性がはいっているのは確かだった。


 「それにしても邪道だねえ、あれは。あの形で売るはず無いでしょ」と薫が隣のブースを見て呟いでいた。隣のUSサイバトロンは全員が首から下が外骨格で覆われ、顔は美人ばかりだった。そのため物珍しさで見学する買い物客が多かった。


 サイバーテックのブースといえば、大ヒット製品なので珍しくないエリカと華があるとはいえないローズマリーぐらいしか動くことは出来なかった。しかも今日は送られてきた廉価版のプリスを稼動しようとしたら怪しげな動きをするので電源を落としてしまったところだった。


 「さっき見せてもらった赤松さんのIDの写真の顔。綺麗だったわ、私のほうが嫉妬してしまうわ。うちの機械娘の中身はいいのにアレじゃ目立たないわ」と薫は残念で仕方なかった。ブースにいる人間のままの社員は薫と職場体験の美由紀以外には、本社営業部からきた男性社員の野村と「ジャイアント・カメラ」の契約社員の中年女性の田村で、とりたてて美男美女ではなかった。


 ただサイバーテックの強みといえば、ブースに来るのは本当に買いたいと思っている買い物客が多いということであった。ガイノイドには生身の人間と変わらない外観を持つタイプと、硬質な材質の外骨格に覆われたタイプがあった。


 前者の場合、あまりにも人間に近いので区別の為に腕に真鍮製のリングを巻くのが法律で決まられているぐらい、間違いやすいが人工皮膚の劣化が進みやすいので維持費に費用がかかる、また表面の人工皮膚の再現の技術に手間と費用がかかりすぎるので高価だった。後者の外骨格タイプは量産によるコスト削減ができるので、人間型の半分の価格であった。


 そのため、人間タイプのガイノイドを稼動する光景をみせるのは、イベントの時か購入確実と思われる相手にセールスをかける場合に限定されていた。そのため薫はジャンヌかサユリのどちらかを店頭で動かしかったが、上司の東京営業本部長に却下されていた。


 そのかわり、寄越したのがローズマリーとプリスだったようだ。それにしてもローズマリーは華がなかった。あのような無骨なデザインも嫌いではないが、他のブースに負けてしまう。そこで薫は「エリカさん! エスカレーターの前に野村さんと一緒に行ってうちの売込みをしてきてちょうだい! 」と指示を出した。


 エリカの中に閉じ込められている美咲は「今あたしはエリカだったわね。やっぱり商売だから頑張らないといけないわ」と思って「了解、マスター。エリカ売り込みに行きます」といった。それを見ていた美由紀は「あーあ、美咲先輩ガイノイドになりきっているなあ。うらやましい」と思っていたが、薫に「あんた、チラシにうちのブースの判子を付きなさい! 終わったらあんたもエスカレーター前に行ってそれを配ること! 」と急ぐようにせかされた。


 「本日はガイノイド売り場にようこそ! 本日はサイバーテックのガイノイド・エリカの特価セールをしています。本日ご契約の方には秘密のオプションのガイノイド製品が無料で付いてきます。また分割払いも金利手数料無料になります」などと野村はハッピ姿で語っていた。またエリカこと美咲はしなやかに動くボディを披露していた。


 だが、この時同じような一団がやってきた。アルテミス・テクノロジーの機械娘達だ。ただ向こうは三人ともガイノイド姿だが、中身はベテランの女性販売員だった。「あんたら、時間割ではエスカレーター前にいる時間じゃないわよ。」ここから退去しな! 」とすごんできた。美咲たちは喧嘩を売られてしまったわけだ。

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