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機ぐるみの女の子が連れさらわれてしまった  作者: ジャン・幸田
今日も一日頑張りましょう!
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無理矢理きせられた機ぐるみ

 しかたなく地下六階にある装着装置に向かった聖美であったが、不安半面少し嬉しかった。前から機ぐるみを着てみたかったからだ。人であって人ではない、機械であって機械ではない、という中途半端な存在になれるからだ。しかも機ぐるみを着てしまえば衣装を気にすることも化粧をすることも必要なくなるし、美人な今の自分を演じる必要もなくなるから、楽だと思ったのだ。


 地下にはサイバーテックから派遣されたガイノイド技士の野間がいた。本来は「ジャイアント・カメラ」で販売されたガイノイドやアンドロイドを点検するのが仕事だが、人間を機ぐるみの中に閉じ込める作業も請け負っている。


 「おやおや、あなたがローズマリーになるの? 少しおしいような気がするけど頑張ってちょうだい」と野間が言った。なんでもローズマリーというガイノイドは受注生産を歌っているが、実際は量産型で外見よりも機能重視なので女性らしさを感じないただ大きな機械だという。また、ほかの店では男性が入っているケースもあるという。


 その話を聞いて聖美は少しがっかりした。サイバーテックのブースにあるエリカを思い浮かべていたからだ。あの機体は胸もあり腰も引き締まったスレンダーなボディで、女の自分が見てもあんな体型に憧れてしまうほどであった。


 しかし、聖美が着用する機ぐるみの写真にあるローズマリーは大量生産された人形といっても過言ではない平凡な外観だった。頭部は全体的につるつるした感じで、顔面には二つの丸いレンズとセンサー光が発光している。ボディも申し訳ない程度の胸があることを除けば、大昔のブリキのおもちゃといってもいいぐらいの平坦なイメージを受けるものであった。


 だが聖美はここまで来て引き返すわけには行かなかった。店長には機ぐるみ手当てとして割り増し賃金を支給するし、サイバーテックが販売したガイノイドの数に応じて売り上げ手当てもやるといわれたからだ。清美はどうしてもほしいブランド品のバックがあったので頭金ぐらいにしたいと思っており、我慢することにした。


 聖美は野間に言われるままに、着ているものを全て脱いで、シャワーを浴びた上で備え付けのボディスーツに着替えた。ここで野間は聖美に機ぐるみ着用の様子を記録した動画を見せてくれた。それには図解入りでどのような作業を行なうかが詳しく解説されていた。


 画像の中のモデルは今聖美が着ているのと同じボディスーツ姿であったが、まず下腹部に管が挿入される様子であったが、モデルの女性の大事なところに機械が入っていく様子がはっきりと写っていたので、少し気持ち悪くなってしまった。その後も生身が機械に覆われていく様子が写っており、完全にガイノイドの姿になったところの場面で、聖美はいやになってしまった。


 この期に及んで聖美は機ぐるみに入るのがイヤになったが、野間はお見通しだったようで「お前さん、さっきの画像で機ぐるみの中に入るのがイヤになったのかね? でもね着れば感動するはずだよ。さっき怒られていたんだろ? 違う自分になれば違い事を発見できるはずだよ。それとうちの機ぐるみを着た女のことを機械娘というんだよ。つまりは人ではない機械のような女ということだ」と言い出した。


 聖美は何のことなのかよくわからなかったが、野間の態度は面倒くさいからさっさと着なさい。いやなら無理矢理着せるぞ! という雰囲気だった。そのため聖美は「無理矢理きせるのだろうな、この親父は」と諦めて装着装置に入った。 


 彼女はその中に入って後悔していた。さきほど工程を見せられたのでどの様になるかは判っているが、身体がどう反応するかが想像しずらかったからだ。そう思っているうちに野間が「さあ、お前さんを機械娘にしますよ」としゃべっているのがわかった。


 機械は稼動し始め、聖美の柔らかい肉体の上が固い機械娘の外骨格に覆われていった。それと並行して彼女の体内に機械の端子が挿入されていった。その感覚がいやでたまらなくなった聖美は「おじさん、やめてちょうだい! やっぱり機械の身体になんかされたくないよ! 機械を止めて! 」と泣き出したが、野間は「いい年した大人の女がなんという様なの! いつも機械娘にしている大学生なんか喜んでいるぞ。諦めて我慢しなさい」と怒鳴られた。


 その後も止まることなく聖美の体は機械娘の外骨格に覆われ、頭部の改造を経て装置から解放された時には、聖美の体はローズマリーのボディの中に閉じ込められていた。目の前にはモニターがあり外部の情報が入ってくるが、画面の下には今着せられている外骨格の稼働状況が表示されていた。そう、聖美は機械娘の中に閉じ込められたのだ。


 聖美は自分を覆う機械娘の外骨格を触ったが、その感触は先ほどまでの柔らかいものではなく硬質な素材で覆われた感触であり、その感触も掌を覆う素材の感覚器が脳に伝えられていた。その事を自覚した聖美は泣き出してしまった。


 「やれやれ手に負えないね。また店長の所にいってもらおうか」といって野間は連れて行った。その後店長に聖美が説教されたのはいうまでもない。


 

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