ピンク・ジラフって何者だ
近年、世界各国で目立った事件を起こす国際的窃盗団ピンク・ジラフの話題で持ちきりであった。名前の由来は不明だがこれは自称である。犯行現場に「ピンク・ジラフ参上」と日本語、中国語、英語、韓国語で書いた紙を必ず残しているからだ。しかもこの紙にピンクで書かれたキリンの絵がある。つまり「桃色のキリン」の意味である。
窃盗団を構成するのは多数のアンドロイドであるが、稀に人間がいる事も確認されている。犯行現場で身柄拘束に成功したのは下っ端のこれら団員であるが、未だに首謀者の特定すら成功していない。
ただ、目撃者の証言や逮捕された窃盗団員の供述から三人の女性であることが判明している。首領はピンクのチャイナ服、その下にピンクの袴になっている巫女装束、ピンクのチョゴリ、をそれぞれ着ている二人がいる。そのため中国人、日本人、韓国人の三ヶ国共同窃盗団といわれているが、真相は判らなかった。また、それぞれ李玉、大和ナデシコ、チャングムンという自称なのか他称なのかは判らないがそう呼ばれてもいる。
彼女ら窃盗団の特色としては、二十一世紀前半の科学力ではなしえないはずの技術を持っていることだった。そのため、その気になれば世界征服だって夢じゃないのではないだろうかという指摘もあったが、もっぱら美術品や最先端の工業品、貴金属などばかり奪っている。
今回、ジャイアント・カメラ東京中央店で発生した強奪事件では、高代記念美術館の展示品のほか、宝飾品、時計などといった金銭的価値が高い商品のほか、電気自動車の交換部品や特殊工具類、ブースと在庫ヤードにあった主にサイバーテック製のアンドロイドとガイノイド約三十体と交換部品が奪われた。その中に美咲が入ったままのパワードスーツも入っていた。
江藤社長らが薫を見たとき、左足は添え木で固定され、頭部の出血も布で縛って抑えられていたが、血まみれになっていた。聖美の話によればピンク・ジラフのアンドロイドが止血などの応急措置をしたのだという。
「お姉ちゃん、頭大丈夫なの?早く直るのよね」といって抱きついていた。江藤社長も薫が血で汚れた服を着ているのも構わずしっかりと抱き寄せていた。薫は「ありがとう、私の頭は機械じゃないからすぐには直らないと思うけど、大丈夫だよ。でも頭が割られたようにいたいけどね」といった。止血はしていても傷口を縫合する必要があるので、救急隊によってこれから救急車で運ばれる準備をしていた。
「それよりも美咲さんはどうなったの? ここにいないようだけど」と不安そうな表情を浮かべた。一同言葉を失っていた。奴らに連れさらわれたことをいうべきか迷っていた。その表情で薫は全てを察したようで、「美由紀、お前の先輩悪いことをしたと思う。あいつら人を殺さないという主張をしているので無事に帰れると思うけど、それより早くみつけないとい・・・」と話しかけて気を失った。
救急隊員は「大丈夫、失血のため気を失ったと思いますが、これから適切に治療すれば問題ありません大丈夫ですよ」といって傷だらけの薫を担架で運んでいった。
一同は十二階にあったサイバーテックのブースがあった場所に向かった。隣のアルテミス・テクノロジーのブースはほぼ無傷なのに、こちらの方は略奪の限りを尽くされていた。残っていたものといえば薫や美咲、美由紀の私物や書類やレジなどしかなかった。商品と呼べるものは全てなくなっていた。
ブース裏にあった箱を見ていると、美咲のカバンが残されていた。その中には美咲の学生証や教科書などが入っており美由紀が泣き出してしまった。「美咲先輩、早く無事に帰ってきてください。またみんなと泳ぎに行く約束だったじゃないですか」と床に臥せっていた。その光景を傍観するしかなかった一同であった。




