連れさらわれてしまった美咲
ジャイアント・カメラ東京中央店の周囲には大量の警察と消防の車両、そして報道機関の中継車などが集まり、その周囲を大勢の野次馬が押し寄せ取り囲んでいた。
「はい現場の中田です。警察によれば店内にまだ大勢の店員が取り残されているとの事です。ピンク・ジラフ一味は19階にある高代記念美術館で開催中の”ロシア皇帝至宝展”の展示物や美術館の収蔵品を奪い、ほかにも店内から高価な商品を多数奪った模様です。えっ-と、今入った未確認情報ですが地下一階にある従業員用ゲート付近で大規模な崩落が発生した模様で怪我人がいるとのことです、くりかえします・・」と現場に近づけないテレビ局のリポーターがしゃべっている横に江藤社長ら三人がいた。その後ろから三村技士も合流してきた。
「こんな時にピンク・ジラフなんてフザケタ連中がやってくるなんて。早く薫の元にいきたいというのに」と、ここに来た目的はもうどうでもよくなっていた。すると「社長、まさかと思いますがあの回収しようとしたエリカのパワードスーツも奪われた可能性があります」と三村技士がいった。
その話を聞いた美由紀は「どういうことなの、それは? あのエリカのパワードスーツって美咲先輩が着用しているのよ! それじゃ美咲先輩はあいつらに連れさらわれるというわけなの? 」と半ば泣き声になっていた。ただせさえ姉の薫のことが心配なのに美咲の事も気がかりで、思わず感情がこみ上げていた。
その時、トレーラーの荷台にピンク・ジラフ一味が降りてきた。遠くからもあの派手なピンクの袴を着た大和ナデシコを確認できた。その後ろのアンドロイドの肩に一体のガイノイドも見えた。ワインレッドカラーのエリカだった。その姿を見たとき美由紀は「あれガイノイドじゃないわ。美咲先輩が着ている機ぐるみよ! 連れさらわれてしまった! 」とその場に泣き崩れてしまった。
娘の言葉を聞いて、社長は回収しようとしていたパワードスーツが着用者ごとピンク・ジラフの手に落ちたことを知った。
ピンク・ジラフのトレーラーであるが、周囲は大勢の警官隊に包囲されていた。トレーラーのタイヤは全て空気を抜かれ、運転席も警官隊が占拠しており、荷台に隠れている一味は袋のねずみであり、身柄の確保は時間の問題だと思われた。
この時、現場にいた指揮官の前田警部は本部に突入の許可をするように迫っていた。すると本部から「中に入っている奪われた財宝だが、あれはロシア連邦政府のものだ。もし突入で傷つくと外交問題になる。適切な処理方法は今検討中だからしばらく待て」という指令があった。
前田警部は、目の前に世界的な窃盗団がいるのだから早く手錠をかけたいと地団駄を踏んでいたが、あせらなくても問題ないといって自分を抑えていた。だが、次の瞬間恐ろしい光景が起きてしまった。荷台から火焔があがったのだ。警官隊はまさか逃げ切れないといって観念して自爆しようとしているのだと思い大きく隊列を後退させた。
次の瞬間、トレーラーの荷台のみが空中へと浮上してしまったのだ! 唖然としている一同を尻目に突如現れた蝙蝠のような航空機がそれをキャッチして何処かに飛び去ってしまったのだ! ピンク・ジラフは逃げてしまったのだ。後には焼け焦げた車体と運転台が残されていた。
唖然としている江藤社長一同の耳にとんでもない言葉が飛び込んできた。「こちらに江藤薫さんのご家族はおられませんでしょうか? おられましたら近くの警察官に名乗り出てください」というのだ。薫の身に何があったというのかと、心は張り裂けそうになりながら急いで駆けつけた。
店内では略奪の間隠れていた店員が次から次へと脱出していたが、地下一階従業員用ゲートは天井が崩落した際の瓦礫とアンドロイドの残骸が転がっており通行止めだった。しかし江藤社長一行だけは通された。薫に会うために。
美由紀はまさか薫が亡くなったといわれるのじゃないかと思うと泣き出しそうになっていた。すると向こうにローズ・マリーの機ぐるみを着た聖美と近くで横たわる薫が警官と救助隊に取り囲まれているのが見えてきた。江藤社長と美由紀は駆け出していった。




