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傷ついた薫

 ジャイアント・カメラ地下一階にある従業員用ゲート前では、とにかく美咲が中にいるエリカをなんとしても捕まえようとするアンドロイド軍団と美咲の間で取っ組み合いが始まっていた。薫は外観こそ普通のエリカのはずなのに、どうしてアメリカ陸軍の制式女性用パワードスーツのカルメン・シータ級と勝るとも劣らない戦闘能力を発揮しているのか判らなかった。


 「たしかにあれはうちの製品だよね? 自衛隊に納入しているのは災害派遣用や工兵部隊用しかないはずだから、あんな戦闘能力はないはずなのに・・・まさか、あの計画でつくったのというの? 」と思い出したことがあった。「そうだ、まさか思考的演習として青写真だけ作られた、攻撃型パワードスーツ設計案のための資料をだれか使ったというわけ? だからパパも必死に探していたわけなの? 」と言う事に気付いた。


 そうしている間にも美咲が着ているエリカは恐るべき戦闘力を発揮し三人を捕まえようとするアンドロイドを次々と葬っていった。そのためアンドロイドの残骸の壁が築かれたほどだった。しかしそれでもなお脱出路を奪うまでには行かなかった。相手の数が多すぎたからだ。


 大和ナデシコは、あまりにも手こずるので諦めてこっちの方が脱出しないといけないかと考えていた。すると、あるトンデモない考えが起きた。「みんな、エリカでなくそこのローズマリーと女店員をつかまえてちょうだいしょ! 」といった。その直後、なんら戦闘能力の無い聖美とタダの人間でしかない薫は美咲がブロックするよりも早く捕まってしまった。


 「エリカちゃん、あなたの仲間は捕まえたしょ。大人しくこっちの言うことを聞いたら離してあげるしょ」とナデシコは勝ち誇ったように言った。それに対して薫は「あなただけでも逃げて頂戴、美咲さん! 私はどうなってもいいから逃げなさい! こいつらはあなただけが目的のようだから大丈夫なはずだ」と叫んだ。薫は、取りあえず美咲が逃げれば利用価値の無い私 -おそらくガイノイド技術者とはばれていないようだ- と聖美のローズ・マリーはすんなり解放してもらえるはずだ、と計算していた。


 「なんだ、あなたって美咲ちゃんていうのしょ。逃げても良いわよすぐに私のアンドロイド達が捕まえてあげるしょ」といってナデシコは挑発した。美咲は二人を見捨てるのは忍びないが、薫が言ったように逃げることにした。


 美咲は正面から突破しようとアンドロイドと戦闘を始めた。明らかに個々の性能では美咲の方が上だったが、相手のほうは多数であり一人で闘う美咲は次第に不利になっていった。特にパワードスーツの機能を良く知らずに闘っていたため、必要以上に体力が消耗してしまい、気力がなくなりそうになっていった。


 そうした矢先、大変な事態が起きた。あまりにも多数のアンドロイドの部品の破片を受けた天井に吊るされていたダクトの止め具が破損し、一緒に釣り天井とともに落下してしまった。その瓦礫が美咲と薫と聖美を抑えていたアンドロイドの上に落下した。


 瓦礫に巻き込まれなかったナデシコは配下のアンドロイド達に瓦礫を除去するように命じた。”パワードスーツ”を着ている美咲と機ぐるみを着ている聖美は多少埃っぽくなったが無事だった。しかし深刻だったのは薫だった。


 天井が崩れ落ちた時、薫はアンドロイドの一体に両手を捕まれていたが、瓦礫の下敷きになった。ある程度アンドロイドの身体によって瓦礫の直撃を免れたものの、頭部と左足に大きな破片を受け大量に出血していた。彼女は重傷だった。


 「薫さん、大丈夫。死なないで!」と美咲と聖美は駆け寄った。すると「わ、私はいいからあなた達逃げて。たぶん、大丈夫だと・・・」といって意識をなくした。彼女の頭からは大量に血が流れ、左足は在らぬ向きに関節が曲がっていた。


 このような状況では最早美咲は一人で逃げる気力は無かった。そのため、あれほど抵抗したのにピンク・ジラフのアンドロイドにあっさり捕まってしまった。ナデシコは多数のアンドロイドを破壊された上でようやく捕まえたことが不満だった。それにもまして自分達の戦闘の巻き添えで大怪我をさせてしまったことが悔しかった。


 「あなた薫さんというのしょ。可哀想なことをしたわ。でもあなたを死なせることはさせないわ」といって、アンドロイドの一体に薫の救命措置をするように命じて、美咲を連れてその場を去っていった。

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