あのガイノイドを探せ!
ピンク・ジラフの窃盗アンドロイドは全て量産型のような同じ姿であったが、メーカーは不明だった。そのため「彼女ら」が何処かで量産したものとされていた。現場で捕獲されたり残骸として残っていたアンドロイドの解析によれば、量産品もしくは該当する業者の無い製品で構成されており、アンドロイドの生産元からたどるのは難しかった。
ただ、唯一はっきりしているのは、アンドロイド軍団を指揮する「女性」があり、三人いるうち一人が必ず犯行現場にいた。その日のジャイアント・カメラ襲撃事件では、ピンクの袴になっている巫女装束を着た女、通称”大和ナデシコ”がいた。なお彼女の正体がわからないため、本当はガイノイドで遠隔操作をしているのではないかという噂があった。
現場のナデシコは昨日目星をつけていた、サイバーテックのブースにいた動いていたエリカがいないことに気付いていた。ナデシコは昨日、一般客にまぎれて偵察していたのだ。その格好は極普通のOL姿で誰も警戒されていなかった。ただいまどき存在しないような牛乳瓶の底のようなメガネをかけていたが。
ナデシコのメガネは高性能のセンサーになっており、機械内部の構造がわかるように設計されていた。十二階のガイノイド売り場で最初に見たアルテミナス・テクノロジーのブースであった。しかしここのガイノイドの性能は平凡で価格は安いだけが取り柄で、ピンク・ジラフのアンドロイドよりも著しく劣っていた。
次に見たサイバーテックのブースは、若く経験不足と判る女子店員と何故か職場体験に来た女子高生と、一生懸命修理しようとしているが中々動かなくなったガイノイドを直せない若い男性店員がいた。これでは売れそうではないかと思っていたところ、やっぱり在庫のガイノイドは最新鋭ばかりで盗む価値があった。
そう思っていると、稼動しているガイノイドが二体いた。ナデシコは一体を透視した。「最近サイバーテックが発表した”ローズ・マリー”ね、わざわざデモンストレーションする必要はないでしょ。あ、でもこの中って人間が入っている機ぐるみでしょ! どうも長身の女の子がはいっているわ。こんな工場か倉庫でも働かすようなガイノイドの機ぐるみに入れられるなんてかわいそうだでしょ」と心でつぶやいていた。
聖美が着ている機ぐるみの評価は薫も散々であったが、ナデシコもわざわざ盗むまでも無いと思ったようだ。ついでブースの裏から出てきたガイノイドをサーチした。これはサイバーテックのベストセラーのエリカの最新モデル727jワインレッドカラーだ。最新モデルなら盗んで人工知能などを解析すれば役に立ちそうだと思ったところ、トンデモないことがわかった。「いやだ、この子に搭載されている人工知能は軍事用だしょ。それに腕力だって軍事用パワードスーツの能力があるしょ! それに内部構造が可視できない構造になっているじゃないしょ! これは盗んで調べたいしょ! 」といって、「盗み」のリストに稼動するエリカを入れてしまった。
このガイノイドは美咲が着ていた機ぐるみであったが、自衛隊が発注したパワードスーツで外部からの探査光線を跳ね返して内部構造を隠匿する機能があった。そのためエリカの中に美咲の身体が入っていることがナデシコに判らなかったため、新型軍事用ガイノイドと勘違いされてしまった。
後に美咲も知ることになったが、このエリカこそ自衛隊の一部組織が秘密裏に開発した女性用パワードスーツで、しかも部隊指揮能力を備えた隊長クラスが着用する軍事用攻撃タイプだった。そのような物騒なスーツを美咲は普通の機ぐるみと思っていたのだ。
ナデシコはブースから逃げていく女子店員、薫を見て「あの女の後を追いなさいしょ! まあ彼女が逃げる先はサイバーテックの在庫品スペースのある地下二階しかないしょ! そこにいるガイノイドのエリカを盗みなさいしょ!」とアンドロイド軍団に指示を出した。




