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機械娘の目覚め

 二度寝していた美咲が次に目を覚ましたのは午前7時ちょっと前だった。いつもなら美咲を起こすのは母だったり飼いネコだったり、はたまた弟だったりすることもあるが、一人で目を覚ました。


 いつもなら寝汗をかいているので場合によっては朝シャンをすることもあるし、パジャマから着替えて大学の講義に行く準備をして、朝ごはんを食べてから都心にある大学に行くため電車を乗ることが「日課」であった。それは極ありふれた日常の光景であり、取り立てて特別なことなどおき得ないものだった。


 この日美咲の目覚めが違っていたのはやっぱり機械娘と呼ばれる存在になっていたからだ。彼女はガイノイドの機ぐるみの中にいたからだ。朝目を覚ました時、機ぐるみの生命維持装置のうち待機モードになっていたプログラムが作動し、「宿主」の美咲が身体を動かすのに合わせて稼動しようとするモードへと移行する。


 もし普段の美咲の起床を見ると、彼女の愛くるしく表情にうっとりする男性諸君もいるのかもしれないが、今の彼女はガイノイドそのものにしか見えなかった。サイバーテックの規定で三本線が入っているのはガイノイド販売促進用の機ぐるみというのが判るが、外部の人間でそれを知っているのはあまり多くない。実際、ガイノイドと機ぐるみが同じように行動すれば両者の区別をするのは至難の業であった。


 同じ頃、聖美も目を覚ました。彼女の場合昨日の未明に突如「機ぐるみ店員」になるよう店長に言われたので、美咲と違ってやりたくてやったわけではなかった。そのためいくら、予習はさせてくれたとしても戸惑うことばかりであった。唯一の救いといえば、彼女の機ぐるみ”ローズマリー”の人気が最悪でそれほど魅力的とは思えなかったからだ。


 元々”ローズマリー”は産業型ガイノイドといえる廉価版で、おそらく家庭用や愛玩用のガイノイドの購入する可能性がある富裕な客が買うものとはいえなかった。だいたい法人営業用の機ぐるみをジャイアント・カメラのブースに置くことはおかしな話だった。


 後で聖美が知った話であるが、本当はジャイアント・カメラを経営している持ち株会社のCEO(最高経営責任者)が女が入ったガイノイドを直に見てみたいという願望で、あえて美人で背の高い聖美を選んだということだった。


 そんなわけで聖美は女性らしい機ぐるみを着ている聖美に少し嫉妬していたが、今は同じ機械娘なので仲良くしようと思っていた。二人とも野間が愛媛から戻る明日の夕方には機ぐるみを脱いで帰れるはずだった。


 しかも明日は聖美の誕生日ということなので、三人でもいいから食事をしましょうねと薫にさそわれていた。その時、薫からガイノイドの話などもしましょうねと言っていたので楽しみだった。


 聖美の身体が入っているローズマリーは起きようとしたが、二段ベットの下に窮屈に押し込まれていたので、ゆっくり起き上がってみたものの天井に頭をぶつけてしまった。


 「美咲さんごめん、寝ていたのかな。起こして御免」といったところ「大丈夫、私も起きていたから大丈夫」と美咲は二段ベットの上からゆっくりと降りてきた。


 当然のことであるが、機ぐるみ姿なので着替えることも化粧をすることもないので、直立すれば「活動可能」になった。ただ、ふたりは全身が拘束されているような状態なので、身体に少しけだるさがあった。


 二人は布団を見ると、まだ薫が寝ていた。ただ社長令嬢というのが信じられないぐらい寝相が悪く、寝苦しかったのか下着姿で寝ていた。さすがに昨日着ていたサイバーテックの女性社員の制服はハンガーにかけていたが、いくら女しかいないとはいえ無警戒すぎると思った。


 そんな変な寝相をしていた薫の枕元にあるスマホが突然鳴り出した。

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