表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機ぐるみの女の子が連れさらわれてしまった  作者: ジャン・幸田
今日も一日頑張りましょう!
2/39

美咲先輩うらやましいわね

 特殊なインナースーツを着た美咲は野間に促されるまま装着装置に入った。それはまるでレントゲン装置のようなもので、外では野間が操作していた。これから美咲は機械娘に改造される手はずだ。機械娘とは本物のガイノイドと区別するための名称で、ガイノイドの外骨格に閉じ込められた女性の俗称だった。いわば機械に改造されたことを意味した。


 もっとも改造とはいっても、アニメや特撮番組にあるように、人間の体内を機械に置き換えてしまうのではなく、機械の部品で覆ってしまうことが目的である。いわば着ぐるみを機械に置き換えた機ぐるみの中に人間を閉じ込める作業である。そのひとつに排泄行為の処理があった。


 まず金属で出来たブルマ、正式にはメタルショーツにある二つの穴に外部から管が入れられた。この作業は機械が自動的に行なうものだが、いつもとはいえ美咲は嫌だった。まだ正樹にも身体を許していないのに機械に犯されてしまっている気がしたからだ。「美咲くん、今朝はご飯食べていないのよね。これから挿入するよ」といって、肛門と女の子の大切なところに管がずるずると入れられた。


 この管は美咲の排泄器官などから出されるものを外部にスムーズに送り出すもので、これで機械娘の間はトイレに行く時はこの管から出すことになる。この時美咲はなんともいえない感覚で「私の仲に何か入ってくる。これって裕子がいっていたロストヴァージンの際の痛みといっしょかな? 」と、億手で初体験がまだなのにそう考えていた。


 その作業が終わると頭から下にガイノイドの外骨格が装着されていった。美咲が入るガイノイドのタイプ・エリカは多機能ガイノイドで、家政婦や家庭教師、秘書、あげくはセクサノイドまでカバーできる人気機種だった。そのためサンプルとして稼動しないものも含め数多く必要だったが、動けるものを展示するためには数がたらなかった。そのためパートやフリーターだけでは間に合わず、夏季ボーナスセールの時には美咲のような学生バイトも機械娘にする必要があった。


 美咲は自分の身体に外骨格が装着されることを感じ、自分が機械にされているのだなあと実感していた。この外骨格には内部を快適にする機能のほか、外骨格を稼動させるための人工筋肉が装備されているので、重量50Kgと美咲の体重に匹敵する外骨格に覆われても、まるで水着を着てすごしているような感覚で、ガイノイドとして振舞えるようになっていた。


 こうして美咲の首から下はガイノイドそのものになった。先ほどまでの白く柔らかいつやのある肌に代わり、金属と炭素繊維で構成された外骨格に覆われた。ただそのフォルムは女性らしさをアピールしており、胸はドームを形成し、腰もくびれていた。そう生身の美咲よりも女性らしかった。


 そして仕上げとして美咲の頭部をガイノイドの顔に改造する番になった。野間は「美咲くんは、どっちかというとこのまま人間の姿で商品説明をするコンパニオンの方がお似合いと思うんじゃけんど、本当におしいなあ」と考えていた。


 まずスイムキャップのうえにヘッドギアを被せ、眼のうえにバイザーも被せた。すると美咲には外の野間の顔が映し出され、バイザーの画面に文字が流れていった。「美咲くん、わしの顔が見える? それと情報端末は正常ですか? 」という声が耳もとから聞こえてきた。「野間さん、大丈夫ですよ。これから私をエリカにしてね」と美咲は答えた。すると美咲の口にマウスピースのようなものがはめられ顎が固定された。これはガイノイドの頭部のなかに頭蓋骨を固定するための措置で、わずかに口が開いた状態で美咲の顔は固定された。これで美咲は声を失い食事も流動食しか取れなくなった。


 そのかわり、美咲の意思はガイノイドの人工知能が美咲の脳波を感知し人工音声で発声するようになっていた。そのため先ほどまでの美咲の声にかわりエリカに登録された声で「野間さん、問題ありません。最後の仕上げをしてください」といった。すると美咲の頭部にエリカのフェイスマスクとヘルメットが被せられ、完全に機械の体に閉じ込められた。「どうだい、美咲くん。エリカになった気分は? 今日から三日間機械娘として頑張ってね」といって、荷物を持って羽田空港に向かった。


 美咲は機械娘になり、製品と同じ姿になった。そのため客からみると商品と見間違う可能性が高かった。そのため頭部と胸に目印として赤が白のラインが三本入れられていた。美咲が装着したエリカはワインレッドボディだったので、白いラインが入っていた。美咲は目の前のモニターに指示されるとおり、十二階のガイノイド売り場にやってきた。そこには各メーカーから派遣された販売員と本物のガイノイドに混じり同じような機械娘がいた。


 美咲はサイバーテック社のブースにやってきたがそこには腕に「職場体験」と書いた腕章をつけた、半袖ブラウスに赤いリボン、プリーツスカートをはいた女子高生の美由紀がいた。「美咲先輩おはよう! 機械娘になった気分はいかが? 私も早く着たいなあ。わずか四日誕生にが違うだけで駄目なんだから」と美咲が装着したガイノイドの外骨格を触りだした。


 美由紀は美咲の高校の後輩だが、美咲は3月31日生まれなのに美由紀は4月3日生まれだった。そうわずか4日違いで学年が別になった。それだけではなく機械娘になれるのは高校卒業もしくはその年齢に達したもので、この夏美咲はぎりぎり機械娘になることが出来たのだ。


 この美由紀はどちらかといえば機械フェッチの素質があるようで、わざわざ父親が経営している会社のブースに職場体験プログラムの一環として無理矢理参加していたのだ。この機械娘を見たかったからだ。そのため美由紀は美咲の身体、いたエリカの外骨格をベタベタさわりまくっていた。


 「美咲先輩うらやましいわね。こうしてエリカの中に入れて。私もこの中に入りたいわ。そして機械娘として一日中生活したいわ。そして人間と女の子では出来ない事をいっぱいしたいわ」と、まるで子猫を触り労わるような感じで美咲を覆うエリカの外骨格をなでまわしていた。 


 その時、美由紀の頭が後ろからファイルで叩かれた。売り場責任者の女性スタッフだった。「美由紀! なに朝からエリカと百合百合しているのよ! 本当にはしたないわね。ママにいいつけてやろうか? ただせさえ妹がいて仕事がやりにくいのに、製品見本に手垢をつけてどうするのよ! あとで磨いてちょうだい! 」と怒りを露にしていた。この人は美由紀の姉の薫だった。


 薫は美咲の胸の三本線に気づいて「あら美咲さん。ごめんね、あなたうちの美由紀の先輩だったわね。遠くから見ると普通の製品見本のエリカと思ったのよ。しょうもない妹だけど仲良くしてあげてね。でも営業時間中はあなたは機械娘だからそのつもりで頑張ってください」といった。スタッフでさえ商品と見間違えるほどに美咲はガイノイドそのものになっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ