あのパワードスーツは見つからないのか
サイバーテック発送センターでは未明になっても、行方不明になった陸上自衛隊機動歩兵部隊の試作女性用戦闘強化服の行方を捜していた。最近三日間に世界各国に発送した機ぐるみの発送先をあたっていたが、多くは輸送途中であったので物流倉庫に事情を説明せず調べてもらっていた。今回のように高度の防衛機密を有する強化服すなわちパワードスーツは第三者の手に渡ったら大変な事態を招く可能性があったので、事情も知らずに探してもらうしかなかった。
「社長、国外にはまだ発送された機ぐるみは無いようです。全て空港の税関で通関中だったようですが、該当するものはなかったそうです」といった。江藤社長は担当者に「ところで、問題の強化服だが何故一般の機ぐるみと混同したのだ」と尋ねた。すると「理由はわかりませんが陸自は外観は一般で流通している機ぐるみもしくはガイノイドと同じにするとの指示だったそうです。そこで担当者が外骨格の外板をはめる際に家庭用ガイノイド”エリカ”のワインレッドボディを使ったそうです。その時誤ってラインにあったものを使ってしまったので、ボディにある機体認識番号が変更されていなかったようです。それで完成時に発送伝票を作成する際にその認識番号のままで入力したので、間違ったところにいったそうです」といった。
「それじゃ、エリカと外観は一緒という訳か? ところで疑いのある機ぐるみは何体あるのか? 」と江藤社長は尋ねた。担当者は「該当は十体です。担当者が番号を変更しなかったのですべて機体番号と送り先が一致しなくなっています。陸自に納入したものと国外に出ようとしたものは四体ですが確認出来ませんでした。後の六体ですが内密に調査しているので、なかなか見つからなかったですが三体に絞り込めました。一体はジャイアントカメラ東京中央店で、残りの二体は札幌と福井の代理店です」といった。
江藤社長はジャイアントカメラ東京中央店に娘二人が行っていることを思い出した。それで薫に電話しようとしたが、今は午前四時半だった。娘の寝起きの悪さは昔から良く知っているのでやめてしまった。担当者は「札幌に送られた機体ですが頭部と胸部に不具合があったという報告があります。内容ですが見たことの無い部品が付属しているとの事です。それで今特急便で送り返してもらっていますが、もうすぐ届きます。また福井の代理店に送られたものも京都支店が引き取りに行って東京に送ってもらっています。彼らには詳細は知らせていないので何も判らないので確認できませんが、しかたありません」といった。
この時、薫が本社に送ったメールの事が伝わっていなかったが、あまりにも少人数で事態を対処していたので他の部署が知ることは無かった。実際薫のメールを見た担当者は稼働状況に問題が無いので、今日の昼に技術者を派遣する予定にしていた。それに東京中央店に派遣されている野間は社内でも有数の技術者で違和感があったら報告しているはずだという思い込みがあった。
しかし、あの時野間は兄が亡くなって悲しさを押しこらえて仕事をしていたうえ、早く羽田空港に行って郷里に帰りたいと焦っていた。そのため普段とは精神状態が違っていたので、社長の期待に沿えるのは無理な話だといえた。
江藤社長も、戻ってくる二体の確認を優先し、もし違っていたら昼前に担当者と一緒にジャイアント・カメラ東京中央店に行くつもりだった。本当は娘と職場で目を合わせるのは嫌だったが、しかたないことだった。




