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機ぐるみの女の子が連れさらわれてしまった  作者: ジャン・幸田
今日も一日頑張りましょう!
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私に素顔をみせてちょうだい

 機ぐるみの上からとはいえ下腹部を見ず知らずの男に触られてしまった美咲はブース裏にある従業員詰め所の片隅にへたり込んでいた。いくら機械娘の姿でも中身はまだ18歳の少女だからしかたないことであった。


 美咲は少し涙ぐんでいた。しかしその顔はフェイスガードに覆われているので誰も見ることが出来ないはずだった。だが入ってきた薫はいきなり美咲の頭部を触ると、パッカとフェイスガードが外れてしまった。野間には機ぐるみを脱ぐ時以外はいかなる部分も部品を外せないと聞いていたので驚いてしまった。


 「やっぱりねえ、あんた泣いていたんだ。客商売ではあんな理不尽な奴もいるのだから、しかたないわよ。それにあいつは機械を触ったつもりでいたんだ、悪意はないから気にすることは無いよ。それに、あんたの綺麗な顔が涙で台無しだ」といって、美咲の目元を薫は自分のハンカチで拭っていた。


 「それにしてもあんたの素顔を見るのは初めてだけど、妹がいうとおり美人だね」といって褒めた。そういえば美咲は、この電器店に出勤すると地下室で機ぐるみ姿になってからブースに来たことしかなかったので、売り場責任者である薫に素顔で接したことが一度も無かった。そもそも薫がこの担当になったのは一週間前で、薫も幹部候補生としての研修目的なので、それほど長い期間このブースにいる予定ではなかった。


 「すいません江藤さん、みっともない態度をみせてしまいまして。私は大丈夫ですから」といったが、なぜ薫が簡単にエリカのフェイスガードを外せたのかが不思議だった。すると薫は「今の行動は内緒ね」といった。薫によるともしエリカの生命維持装置が故障した場合、緊急措置としてコメカミ付近にある穴にヘアピンのようなものを挿入すると顔の部分だけ露出するのだということだった。教えなかったのはむやみに外されると業務に支障をきたすからとの事だった。


 そういえば、美咲も薫の顔を自分の眼で直接見るのは初めてだった。エリカのモニターを通しては判りにくかったが、薫はやはり美由紀に少し似ていた。そう考えていると薫は「あんたって、まだうちに来たことが無かったよね? よかったら今度妹がいるときに遊びにきてもいいわよ。妹もあんたを姉妹のように慕っているようだから」といって、美咲の顔にエリカのフェイスガードを再び被せた。


 一方、サイバーテック本社直属の発送センターではとんでもない事態が発生した事が判明した。自衛隊に納入するはずの攻撃用パワードスーツのソフトと、それに対応したウェアが到着していないということだ。どうやらパワードスーツと通常の機ぐるみを入れた箱に手作業で発送伝票を貼る際に間違いが起きたようだ。


 「いまどき、二十世紀のような手作業なんか誰がしたのだ! まあ責任の所在については後日調査することにして、あのパワードスーツはどこにいったのだ! 」と江藤英樹社長は電話で担当者を叱責していた。


 パワードスーツと機ぐるみであるが、基本的には人間が装着して機械の様に振舞えるようにするものであるが、機能が大きく違っていた。前者は人間では出しえない能力を生身の人間に与えるものであるが、後者は機械の中に入っていても、洋服をきているかのように快適に過ごすだけの機能程度しかなかった。


 サイバーテックのショールームなどで使われる機ぐるみは、アンドロイドやガイノイドを生身の人間が演じられる程度の機能しか持ち合わせていないが、パワードスーツになると軍隊の機動歩兵と同等の戦闘能力を持っていた。


 「報告では、行方不明になっているのは陸上自衛隊機動歩兵部隊で実験予定だった試作女性用戦闘強化服です。実弾などは入っていないので射撃モードは使えませんが、白兵戦などは素人でも即座に出来るようになるというものです。もし万が一外部に流出していたら大変なことになります」と事の重大性を訴える管理者に対し「じゃあ、はやく回収したまえ、万が一テロリストに渡ってしまったら取り返しのつかない事態をまねくかもしれない」と社長はイライラした声を出していた。

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