第3話〜苦しいなんて言葉は知らない〜
今回はかなり長いです。
それなりに思い切って書きました。
次からはこの半分くらいに落ち着くと思いますが・・;;
今日も街は活気にあふれ、眩しい太陽が照らす。
リシュルは寝ぼけ眼で窓の外を見た。
「朝から元気だなみんな・・・・・
これも太陽ってやつのおかげか?」
さんさんと日を射す太陽を見て言った。
だが不思議と心地よかった。
これが当たり前のようにも感じられた。
日が昇り日が沈む・・・。
一番時を感じることのできることだ。
「朝」と「夜」
安定した「時」を感じ取れる。
「ふぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・そろそろ外に出るか・・・・・・・」
支度をし、宿を後にした。
外に出ると、より日光が感じられた。
「よし!!まずは・・・・・・・・・・」
店をまわって行った。
品定めのついでに、店主に聞き込みをした。
だがまったくと言っていいほど、太陽やそれに関することは分からなかった。
まあ500年前のことを言えと言われても答えることは難しい。
そうこうしているうちに、あとは武器屋だけになった。
「すいませーん」
中は広く、さまざまなものがあり、
安物から相当な業物まで、壁を埋め尽くすほどに売られていた。
「あ。お客様だ♪いらっしゃいませ♪」
「あの・・・・お聞きしたいことが・・・・・」
「この剣なんかどうですか?お似合いですけど?」
「いや・・・あの・・・・・・聞き・・・・」
「ん〜・・・・・じゃあこの突剣とか?」
なかなか話を聞かない。
声が小さいわけでもないし、相手の耳が悪いわけでもなさそうだ。
せっかちなのだろうか?
「いやそういうんじゃなくて・・・・・500年前のことを聞きたいんですけど・・・」
「?500年前?あぁ太陽の話?それなら早く言ってくれればいいのに〜」
無性にほっぺあたりをつねりたくなった。
「で?どんなこと?」
「君が知ってるの?そんな高齢には見えないけど・・・・」
「失礼ね〜〜。これでも16になったばかりです!」
ほっぺを膨らませ言った。
だが本当に知っているのか疑わしかった。
すると奥から、店主らしき人が出てきた。親だろうか?
「いらっしゃいませ。この子はこれでも歴史学者を目指してるんです。」
話を聞いていたらしい。
母親のようだ。
すると父親が鍛治をしているのだろうか・・。
「歴史学者・・・・か・・・じゃあ太陽のことはある程度知ってるのか・・」
「うん♪かなり時間をかけて調べたから。」
奥に入り、お茶を飲みながら話した。
少々砂糖が多い紅茶だ。
「名前は?俺はリシェルだ、よろしく。」
「私はルルーシャ=ブルー=アネット。しっかりルルーシャって呼んでね♪」
「じゃあルルーシャ・・・なぜ太陽が出るようになったんだ?」
本題に入った。
「なんでもこの世界の秩序が壊れたとかなんとか・・・・・」
「秩序・・・・?」
心当たりはあった。自分自身がよくわかっている。
「後はこれかな」
「これ・・・?石か?」
「そんなものじゃないよ。これは妖魔族が持っているいわば破魔石のようなもの」
「妖魔族!?」
彼は大声で言った。
「どうしたの?妖魔族が何?」
「・・・・・・・・俺を殺した・・・・・・・・」
口が滑った。
怒りがあふれ、自分がどういう者なのか考えずに。
「え?でも君はここにいるじゃない?」
「あ・・・・・ああ・・・・・・・ごめん・・・・」
「?」
我に返った。
それにしてもなぜ妖魔族が持っているという破魔石が、太陽と関係あるのだろうか。
「奴らを知ってるのか?」
「あたりまえじゃない。彼らも同じく500年前に現れた新種族だからね。
でも彼ら何か企んでると私は睨んでる。
このまえも・・・・・・・・・・・・・・・」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!
「な!?なんだ?いったい・・!?」
「妖魔族!?また来たのね!!」
激しい音が響く。
どうやら妖魔族が街を襲ったようだ。
「どういうことだ?またって・・・・?」
「彼ら妖魔族は周期的に街を襲うの。まるでゲームのように・・・・!
私が小さい頃・・・10年前に父が殺されたわ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
店主は父だと思っていたがもう死んでいたとは・・・・。
リシェルは店を飛び出した。
武器はない、慌てて出てきたので装備も十分ではなかった。
「妖魔族・・・・・・・・・・・くっ!!!」
あの時を思い出した。
背を刺し貫かれ死んだあの時のことを。
憎悪が湧き、一つの言葉が頭を駆け巡る。
「奴らを、妖魔族を殺せ!!復讐するのだ!!」
「うぅ・・・・・なんだ・・・頭が痛い・・・・・・・」
憎悪に満ちた声が頭の中で何度も叫ぶ。
「わかってる・・・・だが・・・この声は・・・・・誰だ・・・・」
「殺せ!!妖魔族を皆殺しにしろ!!」
「あ・・・・・・・あぁぁぁ・・・・この声・・・・・恐いぃ・・・・・・」
リシェルは頭を抱え込んで地面に伏せた。
この上ない恐怖がリシェルを襲った。
その間にも、街は妖魔族によって襲われている。
叫び声があちこちから聞こえる。
「あぁぁ・・・・・・助けて・・・・・・恐いよ・・・」
おびえた様子でうわごとのように言った。
妖魔族がリシェルに気づき、襲いかかった。
「助けてやるよぉ。永遠の痛みからなぁ。ヒャハハハハハハハ!!」
長い爪を一点に集中させ突き刺そうとする様に空中から襲いかかろうと構えた。
「君は君だよ!!目を覚まして!!」
「!?」
ルルーシャが叫んだ。
リシェルは、声が届いたのか、むくっと起き上がった。
「・・・・・そうか・・・・これは、俺の声・・・・なんだ・・・」
彼は声の主が自分だと分かったようだった。
妖魔族に対する異様なまでの執念が、自分自身を苦しめていた。
「復讐じゃないんだ・・・・・・・・・・・これは。」
「なに言ってやがる。しにてぇのか?」
すると妖魔族はリシェルに襲いかかる。
刺し貫こうとせず、長い爪で引き裂く。
リシェルはまるで抵抗しない。
「ハハハ!!!このまま死ね!!!」
「死ぬのはお前だ」
リシェルはぼそっと言った。
体からは血が流れている。
だがまったく痛みを感じていないかのように、まっすぐ立っている。
リシェルはスッと手を妖魔族のほうへ向けると、
「哀れな者に永遠の救済を・・・・・・咎人には冥界への船を・・・・・・・」
「な!?その・・・・その詠唱は・・・・・」
妖魔族はおびえたように言った。
「そして・・・・・・・神を冒涜する異端者には重き鉄槌を!!!」
「うわあぁぁぁぁぁ!!」
妖魔族は逃げ出した。
それを見たほかの妖魔族も、彼の詠唱に気づき必死に逃げだした。
「落ちろっ!!!亡者の碇!!!!!」
大きな碇が妖魔族めがけ落ちる。
押しつぶされた妖魔族は断末魔をあげ、碇の魔力により燃え尽きる。
「うあああぁあぁああぁああああぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!!!!!!!」
街を襲っていた妖魔族は1人残らず燃え尽きた。
街人はリシェルを見ている。
「復讐じゃないんだ・・・・これは・・・・・・俺の過去との決別なんだ・・」
そう言うとリシェルは倒れた。
その瞬間、すべての街人は大声で歓喜した。
「リシェルーー!!」
ルルーシャが叫びながら駆けよった。
「大丈夫・・・・・?すごい傷だよ・・・・・・」
「ああ、たぶん。力が抜けて立てないんだ・・・はは・・・」
リシェルはルルーシャに肩を借りると、部屋に運び込まれた。
街中はまだ騒いでいる。
リシェルを一目見ようと、武器屋に人が押し寄せている。
だが奥の部屋にいるため姿は見られない。
「傷の手当ては終わったよ・・・・・・・大丈夫?」
「ああ・・・・・だいぶ楽になったかも・・・」
「それよりさっきの・・・・あれ・・・・」
ルルーシャはさっきの呪文について聞いた。
「・・・・・話すよ全部・・・・。
俺は500年前、妖魔族に殺された。
だが俺は生きている。
そう・・・おれは均衡を逸脱した存在なんだ。」
「リシェルが・・・・」
「そして俺は自らを世界から切り離した・・・・
こんな姿になったのもそのせいかもしれないな・・。」
「500年も1人で・・・・・苦しくなかったの?」
ルルーシェは心配した様子で言った。
「苦しい・・・・か。
苦しいなんて言葉・・・・俺は知らないな。
俺はすべてを捨てたんだ・・・・」
「捨てるだけの人生なんてつまらないよ・・?でしょ?
これからは私がそばにいてあげるよ。
さびしくなくなるし・・・・ね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
リシェルの目から一筋の涙がこぼれた。
500年ぶりに人の温かさを感じた。
「泣かないでよ・・・・。悲しいことなんてないでしょ。こういうときは笑顔よ!!え・が・お!!」
「・・・・・そうだな。その通りだよ。そんなことも忘れてた・・・・・・・」
リシェルは涙をぬぐって500年ぶりの笑顔を見せた。
「ふふっ。そうそう、笑い方は忘れてなかったみたいね♪」
「馬鹿にしやがってこの・・」
意味のない思い出なんてない。
そう言われたときのことを思い出した。
あの時感じた思い・・・。
今もまた蘇ったようだった。
「ありがとう・・。君のおかげだ・・。ルルーシェ・・」
「え・・・?なに・・・・?」
「俺は俺なんだ・・・・・」
リシェルはそう言うとまた眠りについた。
永遠に眠るかのように深く・・・・・・・・・。
見てくださった方、ありがとうございます^^
そしてお疲れさまでしたww
第4話もよろしくです^^