宝石箱屋さん
「キミは、どんな石がぁ、好きかな?」
真っ黒なコートを着た、ボクのお父さんと同じくらいの歳だと思う、男の人がボクの手に乗った石を見つめてから、ボクの頭に手を乗せてキいてきた。
コートについてるフードを被ってて、おじさんの顔は見えなかった。
「少年や、ワタシを見て、そこらに落ちている石を連想をしてはくれないかな?」
おじさんは背が高くて、見上げているとボクは首が痛くなる。
それと、何かよくわからない言葉を言ってる。でも、何か頼んでるような言い方だから…………。
「キミは、石を集めているのかな……? 集めて何か面白いことはあるのかな? 良いことは起こるのかな? それで、良いことが起これば、性善説を語り、この世で稼ぎに機能させるのかな?」
石をぎゅっと握って胸に当てる。
「石というのには、様々な種類があるんだ、知っているかい? キミは、それを知っているかい?」
中途半端にしか意味は分かっていないけど、たぶん、おじさんの問いには『ううん』がもっともな言葉だと思って、そう言った。
「石っていうのは、宇宙というところから降ってきて、その途中に大気圏突入により削られ」
ボクの手の方に手を伸ばしてくる。
引っ張って、手の中にあったボクの石をとった。
何か、体の何かが抜き取られたような感じがした。
「この石っころのように小さくなるんだ。解るかい?」
手を伸ばして、おじさんから取り戻そうとしてみた、石を。
でも、とれなかった。
「キミは、この石にーーたったさっき拾ったばかりの石に執着心があって取ろうとしてるのかな?」
ーー「じゃあ、この中からちゃんと探して見ろよ」
ジッケンするみたいな言い方で、ボクは、ウザって、思った。
おじさんは両手のひらに皆そっくりの石を十個乗せていた。全部ボクから取った石に似ている。
手で探そうとしてみる。
「石、というのは時に人間の感情をてらして扱うことがあるときがある。そんなとき、意志と言い換えるのはまた面白味のあることだが、不満に思ったりする、ワタシは」
あっそ。どうでもいいよ、ボクには。理解できないよ、ボクには。
目がなんでかかすむ。
「キミは、どんな石がぁ、好きかな?」
んー、さっきキいたよ。
また目がかすんで、石の姿が見えにくくなったりする。
「キミは、なんで、石を拾ったんだい?」
知らないよ。
「さあ、選び給え。さあ、ワタシを信じ給え」
早く返してよ。
何であなたはボクから石をとったんだよ。
ボクは、おじさんが何を言おうと今回は手を止めずとりあえず石はとってやるというつもりで手を伸ばした。
「このタイミング、そのタイミング。キミは、皮肉っている」
「ハハ、必然は必然だ。偶然も必然だ。キミが取った石は、さっきワタシが取った石である。キミからね。全く同じ石で、キミはさっきと同じ、意志で、それがどんなことかは、解るかな?」
「石とは、人の心を表現するために使われるときが時にある」
「ワタシにしてみれば、人間の意志というのは、目に見えないことはあるが、一種の宝石だと思うよ。どういうことか、解るかい?」
つまり、キミの意志がそれであるというわけだよ。石、ね。
性急に話すよ、その石は、キミの石をテらしたもの、何だ。