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君に教えられたこと

作者: わすれな草

俺は渡辺(わたなべ) 雄治(ゆうじ)

部屋に閉じこもってネトゲばかりしている

中学三年生、通称ネトゲ廃人


現在学校は登校拒否しており

ほとんど外に出ることはない

別に、家庭の事情でとか

学校に行きたくない、イジメにあっている

とかではなく、単にめんどくさかっただけだ


親にはちゃんと学校に行けと言われるが

この前、反抗してしまい

それ以来は親と口を聞いていない


そこからは他人の様に扱われ

この家の一人として認めてもらっていない


朝ごはんは親が仕事に向かって出かけた後に食べるし

昼飯も同様だ。夕飯はさすがに親が帰ってから

自分で作って食べるのもアレなので

コンビニで弁当を買って腹を拵えている


「あぁーっ」

俺は眼鏡を外し、グーッと背伸びをした

そして再びディスプレイに目を通すと

PCのメールボックスに一件のメールが

入っていた事に気づく


差出人は書かれておらず

内容はこうだった

『私と勝負をしろ、負けたら君はちゃんと学校へ行く事を宣言しろ』

・・・・・・意味がわからない


そもそも誰なのか知らないし

差出人の名前もわからない

どこに住んでいて、何の勝負をするかも聞いていない


するともうもう一件のメールが来た

内容は『私の名前は・・・ルイとでも名乗っておこうか

場所は明日、区役所の隣のビルだ。必ず来るように。

勝負の内容は明日メールで知らせる』

ハァ?なんで俺いきなり知らない人に勝負求められてんの?

意味わかんねぇよ・・・


返信することはせず、明日に備えて

寝ることにした

まぁとりあえず明日だな

何をするかはまだわからないが、

学校に行くことだけは俺は嫌だ


そう思いつつも

勝つ事を願っていた


------------------------


朝、11時に目が覚める

PCの電源をつけ、メールボックスを確認する

ルイと言う奴からのメールがやはり来ていた


『二度言うが場所は区役所の隣のビルだ

勝負の内容はタイピングだ』

区役所の隣のビル・・・

そんな所あったか?


まぁ俺がほとんど外出しないから

知らないのもあるんだが・・・まぁいい

とはいっても区役所くらいはわかる


俺は朝ごはんを適当に済ませ

私服に着替える


ほとんど家に居た時は

ジャージだったので

私服に着替えるのは久々だ


二時になる

俺は指定場所とされていた

そのビルへと向かう


ビルの入り口にはルイと思われる人物が

立っていた


「遅かったじゃないか。私がルイだ」

そういって俺より背が低いルイは

俺の前髪に触れてきた


「君はずいぶん髪が長いな、相当髪の毛を

切っていないのだろう」

「うるせぇよ」

ルイが俺の前髪を触ると

とても良い香りがした


それにこのルイと言う少女

どこかで見たことあるような・・・


気のせいか?

とりあえず中に入ることになった

中にはスーツ姿の男性が4、5人いた


「さぁ、席に座って。準備はいいかい?」

「待て待て、まだ心の準備が・・・」

俺は深呼吸をして、調子を整える

これに負けたら俺は、学校に行かないといけなくなる


負けたくない・・・


「もういいかい?」

「ああ」

「ルールは簡単、私よりタイピングでポイントを多く取れば

いいんだ。ミスをすると打ち間違えた回数だけ服を脱がされるから

注意しろ」

「は!?なんだよそのルール」

「何、ちょっとした追加ルールだ」

そう言って微かにルイは微笑んだ


「もういいぞ」

すると奥から小柄な審判の女の子が出てきて

フラッグを振った

「れでぃー?ふぁいとっ!」

・・・突っ込みたくても突っ込めない・・・

集中してて突っ込むにも突っ込めねぇよ!


モードはHardだった

「君は普段PCをよく使うから

打つのは早いだろう」

「あぁ・・・まぁな」

ルイと俺は黙々とPC上に向かって

文字をひたすら打ち続ける


ルイは俺より文字を打つのが早く

俺はポイント1500に対し

ルイの得点をチラッと覗くと2100点くらいだった


やべぇ、ルイ早すぎる

このままじゃ負けてしまう・・・!


結果、俺は負けてしまった

「うぅ・・・歯がたたねぇよ・・・」

「君はちゃんと学校に行くように、いいね?」

「わかったよ、負けを認めるよ

仕方ねぇよな、負けは負けだ」

「素直でよろしい」

そう言ってルイは振り返る事はせずに

どこかへ立ち去って行った


スーツ男の一人が

「今日、学校に渡辺は明日から登校すると連絡をいれておく

そのつもりでちゃんと明日行くように」

「わ・・・わかったよ・・・ちゃんと行くからさ・・・」


俺も一旦家へ帰り

クローゼットに長い間入れてあった制服を

久々に出した


「うわ、埃だらけだな・・・」

久々に開けたクローゼットの中には

中学校の二年の時の集合写真の載ったアルバムもあった


二年の頃の写真なのに

何故か何年も前の写真に思えた


「みんなに・・・会いたいな・・・」

今まで学校にいた仲間に久々に会いたくなった


「明日は・・・ちゃんと行くか」

そう心に決心した


-------------------------


次の日

俺は制服に着替え

久々に親と対面した


「おはよう・・・」

下には妹と母親がいた

「あれ?お兄ちゃん・・・学校・・・行くの?」

「え?あ、うん・・・」

妹とも久しぶりに対面したが

それより優先すべきは親への謝罪だ

俺は今まで心に秘めていた思いを母親に

打ち明けた


「母さん、今までごめん。今日からちゃんと学校に行くよ」

「そう・・・よかった。私からもごめんね」

「母さんは何もしてないだろ?俺のセリフだよそれは」

母さんは微笑んで、久々に家族の笑顔を見た


俺が母さんの顔を殴った痕は

まだ消えてなかった

俺はその傷をつけてしまったことを

今は悔やんでいる

俺は母親にこんなことをしてしまったんだと

後悔している


この日は長い間食べていなかった

母さんの手料理の朝ごはんを食べた

とても久しぶりに家族に恵まれた気がする


朝食を食べ終えると

俺は玄関に向かい、靴を履いて

学校に向かう支度をした


「忘れ物はない?」

「大丈夫だよ」

「いってらっしゃーい」

妹も出迎えてくれた

「いってきます」


俺を出迎える朝日がとても眩しい思えた

やけに眩しい


登校中には俺を見て

ひそひそと陰で喋っている奴もいた


しばらく学校の誰とも会っていなかったせいだろう

学校の自分の教室に入ってもそうだった

俺の顔を久々に見た奴らも多いだろう


友達も声を掛けてくれた

「渡辺、おかえり」

「ああ、ただいま」


-------------------------










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