WEB拍手掌編集
春眠堂のWEB拍手お礼掌編をまとめて4つどうぞ。
No.1【長生きの秘訣】
朝(人間時間:夕方)
パルティータ、にんじんジュースを運ぶ。
ユニヴェール、飲まない。
昼(夜)
パルティータ、にんじんジュースを運ぶ。
ユニヴェール、飲まない。
夜(夜半過ぎ)
パルティータ、にんじんジュースを運ぶ。
ユニヴェール、飲まない。
夜食(明け方)
パルティータ、にんじんジュースを運ぶ。
デスクの上に4本にんじんジュースがたまる。
ユニヴェール、「片付けろ」とキレる。
パルティータ、「もったいない」と睨む。
ユニヴェール、4本まとめて飲む。
THE END
No.2【パルティータの自由研究】
■目的:経費(食費)削減
■仮説:死人は、生前食べたことのあるものについてのみ味の判別が可能である。
■実験結果
1日目 幽霊のおばちゃん作:カモの赤ワイン煮込み
吸血鬼+三使徒の反応 → 絶賛。
2日目 パルティータ作:カモの赤ワイン煮込み
吸血鬼+三使徒の反応 → 眉をしかめ、咳き込む。
3日目 幽霊のおばちゃん作:唐辛子ケーキ
吸血鬼+三使徒の反応 → スポンジが真っ赤なのは何を使ったせいか聞かれる。
ワインじゃないですか、と答える。
腑に落ちない様子。
しかし何事もなく完食。
4日目 パルティータ作:唐辛子ケーキ
吸血鬼+三使徒の反応 → 特になし
■考察
現段階での結果では、仮説は立証されたと言える。
生前食べたことのあるものに関しては、並外れた記憶と感性で味を理解するらしい。
しかしそれ以外に関しては、何を食べさせても同じようだ。
変な食材も教えなければ問題なし。
■今後の課題
今回使用した唐辛子は暗黒都市のロートシルト卿からもらった。
だが世間一般では新食材や珍妙な食材は価格が高い。
文句を言わさず食費を抑えるには、四人+下宿人が食べたことがなく、かつ安価な食材を探すことが急務である。
ということをレネック夫人に話したら、「雑草サラダ」を勧められた。
いいかもしれない。
THE END
No.3【正しいメイド】
「パルティータ」
「はい、何か?」
食堂のテーブルで紅茶を口にしていた吸血鬼は、ふと自分のメイドを呼んだ。
テーブルの上には暗黒都市から送られてきた情報紙。
「“メイド協会”というのができたそうだ。正しいメイドを育てるための講習会だの、検定だの、やるんだと」
「まぁ」
吸血鬼の真正面で銀盆を抱えているパルティータは、気のない返事。
「お前もう何年メイドをやっている? 講習会なんぞ参加者ではなくむしろ講師で、検定なんぞ一発で合格だろうな」
口元に揶揄の笑みを浮かべて訊けば、
「もちろんです」
特に胸をはるでもなく、脊椎反射の答えが返ってくる。
「…………」
ユニヴェールは半眼で彼女を一瞥すると、再び紙に目を落とした。
「ちなみに、正しいメイドのあり方はこうだそうだ」
(1)心の底から客らに尽くす「奉仕の精神」がある
(2)メイド服などきちんとした身なり、不快を与えない髪形をしている
(3)しっかりした尊敬語、丁寧語を話せ、注文の取り方などのマナーも身につけている
言い置いて顔を上げると、
「……2番目はばっちりです」
親指を上に向けて突き出してくるパルティータ。
どこで覚えたのか。
「他は?」
「メイドは奉仕ではなく仕事です。尊敬できない輩に尊敬語を使うほど、私の言葉は乱れていません」
「…………」
「それに──」
パルティータがやや眉を寄せ、不機嫌に顔をしかめてくる。
「それに?」
「その“正しいメイドのあり方”は間違っています。本来はこうです」
(1)華やかな上流家庭の裏側に渦巻く黒い真実を垣間見る
(2)悪巧みを暴く
(3)怪我をする
「…………」
ユニヴェールは無言で情報紙を畳んだ。
味のしない紅茶を喉奥に流し込み、ため息をつく。
「パルティータ、それはメイドではない。家政婦だ」
THE END
No.4【口は災いのもと】
第1話 「暗黒都市の番犬」 序盤「大丈夫だ。幸い私は良い医者を何人も知っている」後。
「それはそれは安心致しました」
パルティータが棒読みでにっこり笑い部屋を後にしようとすると、
「…………」
何故かユニヴェールも付いてきた。
「何ですか?」
眉をひそめて振り返ると、吸血鬼がしれっと肩をすくめてくる。
「お茶をもら──」
「本の整理は」
「……お茶飲んだ後で」
「ダメです」
「何故」
「お茶を飲んだ後、貴方のヤル気は完全になくなっています」
──というか、この男はすでに飽きている。
あれだけ“整理”だと言い張っておいて。
「どうするんですか、この有様広げた本」
パルティータはびしっと部屋の中を指差し、ユニヴェールがつられてそちらに視線をやった瞬間、
「おい!?」
彼の背中を押した。
そして扉を閉める。
おまけに外から鍵をかける。
「紳士は一度言ったことはやり遂げませんと。きちんと片付けたら呼び鈴でお呼びくださいませ。美味しいお茶をご用意致しますから」
放蕩貴族は自分を甘やかしすぎていけない。
「パルティータ、私はこんな扉くらい簡単に蹴破れるんだが」
「蹴破ったらご自分で直して下さいね」
「…………」
THE END