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もしも出会わなければ

作者: レモン
掲載日:2026/07/27

 もしも2人が出会わなければ、どんなに良かっただろう。こずえとサトシは、そう思っていた。なぜなら、どちらも、既婚者だったからだ。

 夏の暑い日に、2人は出会った。そこは、ビアガーデンだった。こずえは、職場の同僚と、きていた。サトシは、同じ年の仲間と、飲み会に、きていたのだ。

 こずえの同僚は、女性だけだった。サトシは、男5人できていた。男同士だけだとつまらないから、声をかけようということになって、サトシが、かり出された。サトシは、「こちらで一緒に、飲みませんか?」と、おもむろに誘った。

 こずえ達も、まんざらでもなさそうに、相談した。みんなが、オッケーだったのだ。それからは、ビールをたくさん頼み、話しに花が咲いていた。

 サトシは、こずえの隣に座った。何かの縁だったのだと思う。いろいろ、話していくうちに、2人で、飲みなおさないか、ということになった。飲みの勢いもあり、こずえは、承諾した。

 1次会は、終わり、みんなが、バラけて帰っていった。

 サトシは、二軒目に行くスナックを、事前に、予約していた。こずえも、サトシのあとに続いた。

 お互い、結婚していることは、結婚指輪を見て、悟った。でも、2人での、話は、とても楽しくて、時間を忘れて、話し込んでいた。

 時間が、午後11時くらいになった頃、こずえは、「そろそろ、帰ります。」と言って、席を立った。サトシは、とっさに、「また、会えないかな。」そう言った。「連絡先、交換しよう」続けて、サトシは、言った。こずえも、軽いノリで、「いいわよ。」そう言ってしまった。「連絡は、日中にしてね。」こずえは、言った。

 間もなくして、サトシは、こずえに、電話した。「明後日、会えないかな。」こずえは、言った。「明後日は、旦那が、出張で、泊まりだから、大丈夫だよ。」会う約束を、交わしてしまったのだ。

 お互い、家庭は、壊さない約束で、始まった恋だった。

 サトシは、結婚10年目、こずえは、7年目だった。お互いに、2人子供がいた。

 会う当日になり、2人は、また、あのスナックに行って飲み始めた。話していくうちに、サトシは、どんどん、こずえに惹かれていった。

こずえも、旦那とは、違い、優しいサトシに、好意を抱くようになっていた。

 一線は、越えてはならないと思いつつも、サトシは、そういう関係にも、なりたいと思う様になっていた。それほど、強く、こずえに、惹かれはじめていたのだ。今までに、出会ったことのないような女性だと思っていた。

 こずえも、もし、旦那も、子供もいなかったら、間違いなく、結婚していただろう、と、思う様になっていった。

 2人は、たびたび、会う様になっていった。

2人共、会えないと、ものすごく、寂しかった。こんな気持ちになるとは、予想していなかったのだ。ほんの、火遊びのつもりだったのは、こずえだった。

 家庭を壊すことは、出来ないが、2人の気持ちも、もう、止まることはなかった。口実を作っては、2人は、頻繁に、会う様になっていったのだ。

 ところが、サトシは、妻のあけみに、浮気を、知られてしまった。大ケンカとなり、あけみは、子供2人を連れて、実家に帰っていった。浮気相手と、別れなければ、離婚する、と言って。

 こずえもまた、旦那のたかひこが、うすうす、おかしい、と、疑いはじめていたのだ。

 こずえは、サトシの状況も、聞いた。こずえは、サトシに、「これで、終わりにしましょう。」そう言った。サトシの答えは、意外なものだった。「おれは、離婚してもいいと思っている。あとは、お前の気持ち1つだ。」そう言ったのだ。

 こずえは、家庭は、壊せない、と、思う一方で、サトシをあきらめられない、ところまできてしまっている、自分の気持ちに、気づかされた。サトシとは、別れたくない、そう思った。

 そうこうしているうちに、サトシの方は、離婚することになり、離婚届を、出してしまった。

 こずえは、迷いに迷った挙句、家庭を、守ることにしたのだ。サトシへの気持ちは、捨てきれなかったが、子供のことを考えると、ふみきれなかったのだ。

 サトシは、こずえの結論に、驚いた。自分を選んでくれる、と、思っていたのだ。自分が、離婚すれば、こずえと、一緒に、いれるようになると、思っていた。

 しかし、甘くはなかった。こずえは、やはり、家庭を、選んだ、と思っていた。

 サトシは、こずえに、「もう一度だけ、会って話がしたい。」と、連絡した。

 サトシは、こずえに会った途端、我慢しきれず、こずえを、抱きしめたのだ。しばらくのお互いの沈黙のあと、サトシは、言った。「こずえさんの考えを、尊重したい。」サトシは、続けた。「でも、この先、もしも、何かがあって、別れるような事があるなら、俺はいつでも待ってるから。それだけは、覚えておいて。」それだけを、言うのが、精一杯だったのだ。サトシは、涙をこらえていた。

 こずえは、自分が、家庭を選んだことに対して、自責の念にかられていた。サトシの優しさに、困惑していた。こずえは、言った。「もし、2人があの場所で、出会わなければ、こんな結末は、なかったのね。」後悔は、していなくても、2人の出会いは、間違いだったことに気づいたのだ。

 家族を、不幸にして、2人の幸せは、なかったのだと。

 

 


 

 


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