QRコード:A
ある日、世界中のスマホに、何の変哲もないQRコードが映った――。
その画面を見た人々が順に、顔から生気が消え、力無く崩折れていく。
叫び声どころか、呻き声すら無い。
ただ静かに、淡々と、助けを呼ぶこともなく人々は倒れていった。
学校でも同じ現象が起きていた。
教室では、スマホの画面を見た生徒たちが、机に突っ伏したり、床に転げ落ちたりして意識を失う。
倒れた同級生を助けようと、ある生徒がポケットからスマホを取り出した。
画面を点けた瞬間、その生徒もまた、静かに崩れ落ちた。
会社や作業現場でも似たようなものだった。
人々の生命活動が停止し、傍らにはスマホが落ちている。
あちこちの道路で、車だけは何台か動いていたが、都市の異常さにどの車も一時停車し、状況を把握しようとスマホを見た。
世界中の至るところで、同じ現象が連続的に起きた。
喧騒が途絶え、静寂に包まれていく。
日を追って、学者、医師、技術者、研究者達がこぞって原因究明に当たるが、解答には誰も辿り着けなかった。
件のQRコードは、半分だけなら機能しないが、後からもう半分を見てしまうと脳内で統合され機能してしまう。
しかし、半分だけでは解読できない。
僅か数日で、知的生命体として動く者は、電子機器とは縁のない昔ながらの生活を送る人々だけとなった。
道端のスマホが不意に光り、表示されていたQRコードが消える。
新たな画面には、ただ一言だけが表示されていた。
HELLO!
NEIGHBORING GALAXY
了
【解説】
アンドロメダ銀河から、拙い挨拶文を受信したお話。
しかし、最初のテスト送信が文字化けしてしまい、スマホを経由するとQRコード化する。
このQRコードが、人間の脳にはアポトーシスとして作用し、人類は生命活動を停止する。
二度目の本送信は正確に届いたが、既に見る者はいなかった。
「こんにちは! 隣の銀河」
コード:Aには、Andromeda、Apoptosis、Apocrypha等の含みあり。
この設定を思い付いたのは、宇宙ドキュメンタリー番組を見ていて、宇宙の彼方に向けてメッセージを送信しているシーンから。
我々地球人にとっては、身近にあるデジタルデータかもしれないが、外宇宙の生物にとっては猛毒になるのでは……と思ったのが切っ掛け。
ご精読ありがとうございました。




