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僕が私になるまで  作者: 海丸ひとつ


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新天地

あれから何を喋ったのか、はっきり覚えていない。

確かなのは、彼女から返事を聞けることはなかったということだ。

そして、決死の覚悟で“嫌いじゃない”と誤解を解いても、以前のような仲には戻れなかったということ。

僕らの間には深い溝が生まれ、それはもう、一生取り壊すことのできないものだと感じた。


無機質な心のまま日々は過ぎ、受験当日を迎えた。


感情の浮き沈みもなく、ひどく緊張することもなく、淡々と問題を解き、粛々と全科目を終了した。


1次、2次と試験を終え、僕は幸いにも志望校への通行切符を手にすることが出来た。

風の噂に、咲も見事志望校に合格したと聞いた。


“あの出来事”以降、僕は彼女とまともに話せなくなっていた。

受験戦争の後もそれは続き、クラスで咲とすれ違うときは挨拶こそすれ、話をすることはもはや叶わなかった。


二人の間にまとわりついた微妙な空気は拭われることなく、とうとう僕らは卒業した――


桜が咲き誇る季節。

きらびやかな街道を歩く。

真新しい服と靴で、華やかな並木を抜けた先には、心から行きたいと望んだ大学の門がある。


心機一転。


これからこの新天地で、新しい友とこの道を歩くんだと、自分に言い聞かせた。

僕は前を向こうとしたけど、気を抜けば回顧と懺悔の沼に足を取られそうになった。


大学生活は自由だった。

初めて親元を離れての一人暮らし。

制服からの解放。

大学で受ける講座だって、自分で選べる。

しかしそれは自己責任の上に成り立つもの。その不安定さに、初めは足元がぐらつくような気がした。


入学前の手続きに向かう途中、僕の目に飛び込んできたのは、

同じように少し緊張した顔の入学生たちと――

一人の、ボーイッシュな奴の姿だった。


僕は無意識に、声をかけていた。

「こんにちは。入学生ですか?」

どちらかというと人見知りの僕。こんなことは初めてだった。

「はい。あなたも?」

その子は容姿に似合わぬ高い声で答えた。

お互いに自己紹介をし、友達になった。妙に親近感の湧く奴だった。


入学すると、予想に反してたくさん友達ができた。

同期生はみな積極的で、大学生活を充実させたい意欲に溢れていた。

大学の講座は一般教養と専門分野に分かれており、どれも好きだった。

どの講座を履修するかや、一週間の時間割をどうするかは自分で決められる。


「和葉は講座取りすぎだよ。」

そう言ってきたのはボーイッシュな奴――木村菜月だ。

「菜月と違って頑張り屋なのよ、和葉は。」

庇ってくれたのは同期の麻里奈。

この子は社交的で、僕に奇跡的に友達が増えたのも、麻里奈と友達になったおかげだった。


こうして新たな環境と友に恵まれ、いつしか僕は、苦い過去に引き戻されることもなくなっていった。

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