告白
正月、世間は晴れやかだった。テレビの中では徹夜のタレントが餅をつき、歌姫が昨年のヒットソングを熱唱していた。
しかし僕の気持ちは、年が明けても沈んだままだった。
両親は元気のない僕の様子を心配してくれた。
きっと、受験のストレスで落ち込んでいると思っていたんだろう。
勉強すると言って部屋に閉じこもる僕に、
「正月くらい、休んだらどうだ?体を壊すぞ。」
と、珍しく父まで気遣って声を掛けてくれた。
あれから僕は、咲に謝るどころか、話しかけることもできずにいた。
勉強も手につかず、冬の寒さも増して世界が灰色に見えていた。
長かった冬休みが明け、学校に行った。
“あの出来事”から、咲が松本君と話す姿は見ていない。
「あけまして、おめでとーございます!」
木島が、やけに明るく律儀な挨拶をしてきた。僕は軽く年始の挨拶を返した。
「なんだよ、素っ気ないな。咲も最近元気ないしさ。何かあった?」
木島は相変わらず感がいい。
どうせ隠してもバレるだろう。
僕は年末の“あの出来事”のことを打ち明けた。
「あーそれは、和葉が悪いわ。騒いでた咲の方も悪いけどね。和葉から早く謝ったほうがいいよ?」
木島はもっともなことを言う。でもそれが出来たらこんなに悩まない。
「さっさと謝ってさ、また元通りに仲良しになりなよ!でも珍しいね、和葉がそんなに引きずるの。」
友のそんな言葉が、僕の背中を少し押してくれた。
学校からの帰り掛け、咲の姿を見かけた。
一人で帰路につく彼女の背中が、やけに小さく見えた。
自然に駆け足になって、彼女を追いかけた。
「咲!!」
息を切らして、呼び止めた。
振り返る彼女の顔を、久々に見た気がした。
「咲ごめん、あの、急いでたらまた今度で良いんだけど、ちょっと話を聞いて欲しくて――」
「うん、いいよ?」
彼女の声も久々だ。
「あのさ、年末のことなんだけど、もしかして咲の事、傷つけたかなって...」
「私は大丈夫だよ?でもカズはさ、私のこと嫌いなんでしょ?」
「嫌いだなんて...」
あの言葉は、咲にどのように届いてしまったのだろう。想像以上に彼女を傷付けてしまっていた。
「無理に私と一緒にいてくれなくていいよ。嫌いなら。」
こんな冷たい表情でしゃべる彼女を知らない。僕は焦った。
「違う!」
もう嫌われてもいい。せめて僕の気持ちだけでも誤解を解きたい――
「好きだよ。僕は、咲のことが好きだ。」
時が止まった気がした。
足が震えた。
夕暮れ時の街の音は、心臓の音でかき消された。




