視線
期末試験が近づくと、試験期間中ということで一週間、部活が休みになった。放課後の空いた時間は、同じ部活の4人――木島、咲、久美、そして僕で試験勉強をした。
僕はこの4人で過ごす時間が何より好きだった。
夏休みに入ると、今度は学校が休みになったが、部活は週6日あった。
部活が休みの日は、いつもの4人で遊んだり、勉強会をしたりしていた。
こうして僕らはほぼ毎日顔を合わせ、切磋琢磨して成長した。
木島は案の定、部活のエースとなり、代が変わるとキャプテンになった。
チームとしての成績はイマイチだったが、木島だけは国体選手に選抜されていた。
「悔しいなー。私ももっと上手になりたい!」
咲はよくこう言っていた。
けど、内心木島を尊敬し、慕っているのを僕はよく知っている。
僕は相変わらずスタメン落ちしていたが。
月日はあっという間に流れ、部活も引退し、受験生になった。
僕らの高校は進学校だったので、大学への進学を志望する人がほとんどだった。
バスケ部の4人も受験に向けて、それぞれ歩み始めた。
引退してからは、4人が集まることは減っていった。
進級するとクラスも変わり、木島と久美はバラバラのクラスだったが、僕と咲は3年間一緒だった。
3年生になっても、相変わらずクラスでのグループは咲と僕とは別々だった。けれど、放課後や休日は、よく一緒に勉強したりしていた。
咲は勉強も良くできた。
対して、僕は文系科目が全般的に苦手だった。
志望校は別々だったが、同じ目標に向けて共に頑張っていた。
放課後、いつものように二人、自習室で勉強していたある日、咲がぼんやりと窓の外を見ていることに気付いた。
視線の先にいたのは、隣のクラスの松本君だった。
彼は男子バスケ部の3年生で、今は引退して僕らと同じ受験生だ。
「咲、大丈夫?」
思わず、声を掛けた。
「う?うん、大丈夫だよ!」
すぐにノートに向かう咲を、僕はしばらく盗み見た。
「カズ、あのさぁ。」
ノートを見たまま、咲が話しかけてきた。
「な、なに?」
「カズは、人を好きになったこと...ある?」
一瞬、時が止まったような気がした。
どう答えようか迷っていると、咲が話を続けてきた。
「あるに決まってるよね。うちらもう高3だもんね。
華の女子高生なんだよ?恋の一つや二つ――」
「あるよ。」
咲の話をさえぎって、ぼくは答えた。
「叶えたくても叶わない恋...ばっかりなんだけどさ。」
咲が初めて、こっちを見た。
今度は僕のほうが目を伏せた。
「カズは、それでもいいの?」
(良いはずがない!けど...どうしようもないじゃないか。)
声にならない心の声が、喉の奥で石のように固まって、僕の眉間に積もっていく。
「叶うかも...しれないじゃない?
やってみなくちゃ、分かんないじゃん。」
咲の励ましは、自身に向けたものだったのかもしれない。
でも僕はこの言葉が、純粋に発せられたものだと感じた。
彼女が僕の気持ちに気づいた上で、励ましてくれたんじゃないかと――




